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【22】別れの予感と皆既月食

彼との関係は終わりだと思った。

ひとり海を眺める時間が多くなり、この日も夕陽をみようと西海岸、読谷方面へ車を走らせた。10分ほど走ったところで、東の海に向かいたくなり、車をUターンさせて、うるま市にある懐中道路を目指した。

海中道路の平安座島よりに車を止め、海に降りる階段に腰を下ろすと、海と夕陽が見えた。この場所からは海に沈む夕陽は見れないけど、階段と塀にもたれてボンヤリと心を眺めるにはちょうどよかった。

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2021.5.26皆既月食の日の夕日(うるま市・海中道路より)


「また、ダメだった…」

男性と関係が続かない自分へのガッカリ感で悲しくなった。
あぁあーー…情けないなぁ…

いろんな思いが交差して、あっという間に時間がすぎてゆく、太陽が沈んだあとの移りゆく空の色を眺め、ふと振り向くと私の心とは裏腹に雲がピンクに染まり綺麗だった。

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数ヶ月前から彼の仕事が忙しくなり、彼との時間が少なくなり、私の男性不信のクセが顔をだし始めた。
そんな負の感情につかまらないために、やってみたかった「自宅サロン」計画をたて準備している最中に彼からの提案で一気に色あせてしまった。

彼の提案の方がまっとうで、私は何も言えなかった。

まぁ、この程度で色褪せ、やる気を無くすのは、本気じゃない証拠だと分かっている。そんな自分へのしょうもなさも含めて凹んだ。

気持ちをリセットするために、ひとり海に出かけることが多くなり、私のその凹みが彼の心に影を落とし、悪循環のスパイラルにはまる2人の間にギクシャクした空気がながれた。

今までにない不穏な空気感に「もうダメだなぁ」と悟った。

太陽は沈み、星が見え始めた。
そろそろ帰ろうと車を走らせると変な形の月が見えた。

「うん?! なにあれ??」

今日がスーパームーンの皆既月食だと知らなかった。
東の海に来たくなったのは、これだったんだ。


いつも行く西海岸だと、月が見える時間まで浜にはいないし、もし月食に気づいても月を海から眺めることはできなかった。

平安座島から浜比嘉島へ続く橋を渡り左折する、アマミチューの墓を過ぎたところにある駐車場に車を止めると、皆既月食を見る人が集まっていた。
そこから少し歩き月が見える浜に着いた瞬間、スッポリと月が隠れて、月の光がさえぎられた空は真っ暗になり、星の光が一斉に浮かびあがった。

満点の星空があらわれた。

「うわぁーーきれいーーー!!」

砂浜に座りこみ星空を眺めていたら、凹んでた気持ちは消えていた。

あの時、自分の直感を信じて東の海に来てよかった。空に光り輝く星に感動しながら、徐々に月の輪郭が見え始め、月の光は瞬く星たちにベールをかけていった。

満月に戻るまで月と海と空を眺めた。

リセットされた私の心は「今答えを出すのはやめよう」そう言った。

彼は忙しさと会社のアクシデントの中にいる、そして、私も彼も良い状態とは言えない時に答えをだすのはやめよう。

すべてが落ち着いた後でも、この感じが変わらなければ、その時は終わりにしよう。

やっと手にした恋を失いたくなかった。
だからもう少しだけ…せめて忙しさが落ち着くまで待ちたかった。

家路についたのは夜の10時半近く。

「早く帰っておいで」と彼からラインがきた。

平常心で普通に振る舞おうとする私と、今までとは違う彼の態度に違和感を覚えながら、「今は答えを出さない」と決め、彼の違和感を無視した。

それから、数日後に私たちは関西に戻った。
あきらか今までとは違う彼の態度をやり過ごし、関空から彼の家に直接向かい彼の帰りを待った。

家に戻ってきた彼が開口一番に放った言葉が「元の関係に戻そう」だった。


#忘れられない恋物語

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