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僕はこの町を知ってた

(2019-4/30)

赤と青と黒。淡いコントラストが町の空を覆う。じっと、見とれていた。ただじっと見とれながら歩いていたこの町は、気づいたら蒼。蒼の世界。朝が襲来する。

いつも居るはずなのに、懐かしい、この風景。

この町は、ただいまを言う町。
駅からの帰路をただ毎日毎日繰り返す。
ただ、それだけの町。
午前4時、眠れない僕は、ふと何気なしに外へ出てみた。何ヶ月ぶりだろうか。あの道以外のこの町に触れるのは。
いつもと変わらない町。ただいまを言う町。午前4時。やけに賑やかな、午前4時。この町。
変わらない。変わらないけど、ちょっと違う。いつもより多い人波、いつもより賑やかな商店街。いいことだ。町が活発なのはいいことだ。午前4時、やけに騒がしく唸る、日、昇る時間。

風が吹く。優しい風、鋭い風。歩く僕の身体にまとわりつき、ひしひし体温を奪っていく。

目の前が明るい。朝だ。日の出を見る為に、僕は陸橋をゆっくりとのぼっていく。
赤と青と蒼の美しいコントラストがこの町の空を覆う。

頂上だ。この町を一望する。
彩り乏しい屋根の色が、この山の窪みを覆う。

赤。目の前に赤。赤が僕の視界に迫ってくる。午前4時45分、夜は光に汚染され消えていく。午前4時46分、朝が、襲来した。

嗚呼、また、始まる。大きな火の玉が、この町をあたかも明るい町のように仕立てあげてく。

この町は自ら光輝けない。だからこうして、光を纏わされ生きていく。段々と剥がれ落ちてく光を、毎朝毎朝取り替えて。

この町が本当に美しいのは、この色じゃない。僕は、この町を知ってる。

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