見出し画像

1.【心の中のかけら】 苦しみを眺める

暖かさの中にも、時折一種の鋭さ(恐らく冬の気配のようなもの)を感じる朝のこと。わたしは窓際で、煌めく陽の光を見つめている。鳥のさえずりが重なり合い、わたしに記憶を辿らせる。果たして、最後に朝を感じたのはいつの日のことだったか。

無理なスケジュールに限界が訪れ、呼吸のしづらさや、感覚の鈍りを感じだした。ついには動けなくなり、ベッドに沈み込むようにふせて丸2日。この2日という日数、実はわたしにとって大いなる成長なのである。以前ならここから丸5日は寝込まないと回復しなかったし、その数日間は心がもっと深い奥底まで落ちてしまっていたから。

近頃、人間の感情を追いながら、自分への探究を深めているわたしは、この心が落ちて苦しんでいる自分を眺めているもう一人の自分がいることに気づいた。人間の感情を学ぶようになり、以前にも増して、わたしはわたしを実験台のように観察するようになったのだ。

−この苦しみはどこから来たんだろう?
−本当はなにが苦しくて今わたしは泣いているんだろう?
−どうすればこの苦しみは軽減されるだろうか?

苦しみに呑まれると、人は一気に見える景色が変わってしまうように感じている。(わたしの場合は、暗く狭い、無機質な世界に変わる。まるで鳥籠に閉じ込められているような感覚。)ただ自分から見えている景色が変わっているだけなのに、人はそれが世界の全てだと捉え、苦しみは深まっていく。

もしそうだとすれば、今自分が世界を眺めている場所を変えることが、この暗い景色から抜け出す近道なのかもしれない。わたしは、本当はどのようにして、どのような景色が見たいのか。ただただ自分に問い続ける。

“とにかく何もしたくない!”という答えにたどり着いたわたしは、スマホも放り出し、ひたすらぼーっと過ごしていた。(そして、その自分をまた観察している。)苦しくなったら瞑想を繰り返し、眠りに落ちる。ただそれだけの2日間。途中で少し不安になりながらも、自分の学びを信じてだらけ続けた。

そして今朝、数週間ぶりに早く目覚めたわたしは、美しい朝の気配を感じることができたのである。2日という最短記録で苦しみから抜け出せた経験は、きっとこれからのわたしをそっと後押ししてくれることだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?