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もう一度

あれから、どれくらいの時間が流れたのだろう。わたしはすっかりことばを放つことを辞めてしまった。辞めた、というよりも、ことばが見つからなかった、というほうが正しいかもしれない。

うつくしいことばを見つけること。心の中にあるものを形にして、誰かに伝えること。そのすべてができなくなった。ことばへの興味の薄れ、薄れることへの悲しみ、色々な理由があった。

なにより、わたしがわたしでいることがどうしても困難で、同時に怖くなった。そのわたしから出てくる言葉で、だれかを傷つけてしまうことが怖かった。

ながいながい暗闇だったように思う。泣きながら南フランスへ渡った4年前、もうなにがあっても自分のことを諦めないと心に決めたはずなのに、諦めた方が楽だと何度も繰り返し考えた。

そんな折でもふと思い出すのは、文を綴っている自分のこと。美しいものを眺めて、そこに揺らぐ形のないものに色をつけるかのようにことばを添えることができたときのこと。

こうしてまたことばを綴る気持ちを思い出せたきっかけは、紛れもなく過去の自分だった。

あれから、わたしはようやくスタートラインに立ち、一歩を踏み出している。どうなるかは全く見当もつかないけれど、きっとどうにかなる気がしている。

失敗の連続でどんなにカッコ悪くても、一人で南フランスに行った自分のことが、自分らしくて好きだから。失敗してもいいから、したいことは全部したい。行きたいところへは行きたいし、みたい景色は全部みたい。もう自分に嘘はつきたくない。

だからその証に、わたしはまたこうしてことばを綴っているのだ。

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