どうしてこんなに好きなんだろう
最近、非常に心を惹かれている動画広告がある。「弥生」という会計ソフトのCMだ。「弥生」を使えばインボイス対応も簡単!という内容の、クレイアニメーションの18秒広告である。
最初は、何か動画を見ていた時に純粋に広告として出てきた。なんとなく気になったのか、私はこの広告を飛ばさないで最後まで再生した。そのためか、同じ広告が何度も流れるようになった。何度も目にしているうちに「あれ、もしかして、好きかも……」と思うようになっていた。私はその思いをSNSでつぶやいた。すると、Instagramの広告にもこの「インボイスに迷ったら、弥生」が登場するようになった。Facebookでも見かけたと思う。
そうやって時々現れる広告を見るだけでは飽き足らず、私は「弥生 インボイス 広告」と検索窓に打ち込むまでになっていた。お目当ての広告は、YouTubeの「弥生【公式】」チャンネルにちゃんとあった。これでいつでもこの広告を見ることができる。インボイス制度には反対だが、もしもインボイスからどうにも逃げられなくなり、しかもその時の私にインボイス関係の業務量が見込まれるようだったら、私は真っ先に弥生に助けを求めるだろうとまで思っている。
この動画広告のどこが良いのか。まずは「声」だ。プロの声優によるナレーションは安心感を覚えさえ、聞きやすい。公式チャンネルの動画詳細によると、ナレーターは久川綾さんだそうである。
「声」といえば、ナレーションと共に重要なのが、登場するヒツジの鳴き声だ。「メエ……」「メエッ!?」「メエ~!」と「メエ」だけで感情を演じ分けている。このヒツジの声も久川さんが担当しているのかどうかは、私では判別がつかない。有識者による助言を求めたい。
また、声に近い要素として「音」にも気が配られている。BGMはヒツジといえばの「Mary Had A Little Lamb(メリーさんのヒツジ)」のアレンジである。効果音もちょうど良い感じに使われている。
動画広告として見てもらうには、映像よりも実は「音」で気を惹くことが効果的なのではないかと私は思う。広告の間は画面を見ない視聴者も多数いるだろう。そこで「何だ?」と思って画面を見てもらうには、音なのだ。
音で注意を引きつけられたなら、そこからは動画をより長く見てもらわなければならない。ここで映像が活きてくる。弥生の動画広告はクレイアニメーションと先に説明した。実際はクレイ(粘土)ではなく3DCGなのだろうと思っていたら、なんとしっかり、クレイで作ったキャラクターを少しずつ動かして撮影する、ストップモーションの手法で作られたアニメーションだったのである。
粘土で作ることによって暖かみのある質感が表現されている。ヒツジのキャラクターも嫌味がない。またそのヒツジ達の動きが細かいのだ。顔つきや表情もヒツジによってちゃんと違っている。コマ録りはとにかく手間がかかる撮影手法であると思う。だが、手間暇をかけて細部にまで気を使って制作された動画だからこそ、こんなに文字数を費やせるほどの魅力が生まれるのだ。
最近は適当な感じの、質が低い動画広告が多い。しかもその中には、倫理的に問題があるであろう表現も見受けられる。そのような粗悪な広告が溢れることで、広告が来たとなればしばし待って即スキップしてしまう人が多数だと思う。そんな状況下でも、きちんとした広告を作っている企業があることを、私は称えたいと思う。そしてやっぱり、きちんとした物を見せてくれる企業が好まれ、信用を得ていくのだと思う。