【往復書簡】在宅勤務のコツは何でしょう？

のんちゃんへ

前回のお手紙のテレビの構成作家の仕事の話、とても興味深く読みました。
1分のナレーション原稿を書くのに1時間かあ。以前にUstreamで生放送をやった時に、3つあるカメラで1カメをいつ何秒使うかとか、登場者が何を話すかとかを決める役目をしたんだけど、5秒同じ画面だと長いと感じて驚いたの。動画って、本当に秒単位なんだなあ。1時間の番組を数秒の積み重ねで作り上げるって…気が遠くなります。

ライターとして原稿を書く前に、私はイベントや対談、インタビューなどで録音した音声を聞き、文字に起こします。ナレーション原稿を書くのが言葉を詰めていく営みなら、文字起こしは言葉を解いていく感じかも。聞こえた言葉をただ書き起こすだけなのですが、10分の音が10分で書き起こせるわけはなくて、音質や内容や話し方にもよるけれど30分から50分はかかります。音声って情報量が多いんですよね。

音声を文字に起こしても、それをそのまま納品するわけではないから、文字起こししないライターもいます。でも、私はやりたいタイプ。そして、内容によっては言い淀みとか、言い直しとかも全部、文字に起こします。そうすると、言外にあるものがバーっと見えてくる時があるの。ある現代アーティストのひょうひょうとした語りを文字起こししていたら、急に崖の前に立たされたような気持ちがして、この立ち位置から世界を見ているのかあ…と怖くなったり、ある役者さんの快活でサービス精神たっぷりの話を起こしたら、その方のプロフェッショナリズムに気づいたり。

ところで。フランスでは17日（火）お昼12時から基本的にみんな外出禁止になってしまいました。犬の散歩に外出するにも、食品を買いに行くにも書類が必要です（といっても、警察や憲兵隊に出会わない限り、その書類の提出先がないのだけれど）。

食品店と薬局、タバコ屋、銀行以外は全部店舗は閉まり、友達と会うのも禁止されてしまいました。当然旅行もキャンセルです。私の外出の楽しみは犬の散歩中に近所で花を愛でる、くらいになりました。

だから今回ののんちゃんからの質問の「好きな花は何か」はタイミング的にバッチリな質問でした。だけど、うーん1つに決められない！　花を愛でるのって、コンテキストが大事な気がするから。今の時期に日本にいたら、答えは断然、桜です。でも春に桜をみんなが楽しむのは、寒い冬が過ぎて「ようやく春になったあ」ってうれしくなるからであって、それなしで例えば南国から桜のシーズンだけ来日したとしたら、そこまで楽しめるかどうか。花単独でもきれいだけど、味わいは違うと思う。だから好きな花は、季節と居場所によって変わります。まあ、花は何でも好きです。

こっちで春真っ先に咲くのはアーモンドとさくらんぼの花です。梅や桜に似ているし、春がきたなと感じられるので、咲くと心躍ります。今、近くのガリーグ（南仏特有の荒野）では、ミニチュアジャーマンアイリスが花盛りです。夕方になると、ぼおっと光るような幽玄な姿が見られるので、それも好きです。

あ、でも今一番好きなのは、この間「野草食べました」って報告した、ルリジサの花かも。だって、サラダにするとおいしいからー！！　あちこちに大量に咲いているのでしょっちゅう取りにいっています。仕事の合間にちょいと犬の散歩するときとかに。

今、たくさんの人が在宅勤務をしていますね。私たちはフリーランスだから「在宅勤務」とは言えないけれど、家で集中して仕事をするために、何かやっていることはありますか？　私はポモドーロテクニックを使っています。25分仕事して5分休み…を4セットずつ繰り返すってやつ。5分の休みがうっかり長引いちゃうことがあるのが玉に瑕です。家で仕事をするのって自律が必要ですね。

ではでは。年度末で忙しいと思うので、お互い無理せずにいきましょうねー！

清香

追伸：今日の画像は、かわいい郵便受け。撮った角度が悪くて歪んじゃってるから、弟に見せたらダメ出しされるかも。弟、たぶん元気です！　弟よりのんちゃんとのほうが頻繁にコミュニケーションしてる！笑