見出し画像

国語でパーソナライズ

さやか星小学校 教務主任・第1学年担任 島岡次郎


漢字1文字チャレンジ

島岡 「さあ、今日も漢字1文字チャレンジ、いきまっしょい!!」

子どもたち 「いえ〜〜〜い!!」

島岡 「A子さん、今日の1文字チャレンジの漢字は何かな?」

A子さん 「今日の漢字は、『草』です。」

島岡 「オッケイ!!では皆さん、今日の漢字のヒントをちょっとだけお伝えしましょう。この漢字は草冠ですが、二画目と三画目が、それぞれ内向きになるように気をつけて書いてください。真っ直ぐにならないようにね。」

子どもたち 「はい!」・・・早く書きたくてウズウズしている。
島岡 「それから、草冠の下の『日』は・・・」

子どもたち 「わーわーわー!!先生!もうヒントは良いです!!早く始めてください!!」

島岡 「あ、そうなの?人が親切でヒント出してあげているのに、要らないの?じゃあ始めましょう!」
 

さやか星小学校の1年生では、新しい漢字を毎日1文字ずつ学習します。そして、「漢字チャレンジ」と題して、既に学習した漢字を毎日1文字テストし、定着を確認しています。上のやり取りは、漢字1文字チャレンジの時のお決まりのやりとりです。油断するとヒントを沢山出そうとする私に対して、ヒントを出すのを辞めさせようと必死の子どもたち。でも、よくよく考えると凄いことですよね。だって、ヒントが多ければ多いほど正解できる可能性は高まるわけなので、むしろヒントを欲しがるのが普通です。でも、さやか星小学校の1年生はヒントを拒否します。何故でしょう。
 理由は、漢字1文字チャレンジというシステムにあると考えています。これは、「1日1文字だけ書けるかどうかをチェックする」というスモールステップのテスト方法です。この活動の目的は、学習した漢字が定着しているかを確認することです。決して、A、B、Cの評価をつけるためではありません。だから、子どもたちには「テスト」という言葉も使っていません。1日1文字なので、漢字が苦手なお子さんでもほぼ確実に正解できます。

宿題のパーソナライズを目指す

 さらに、希望制の宿題が機能していると考えています。毎日国語の授業で「明日の漢字チャレンジの練習をしてきたい人はいますか?」と聞いて、希望者は漢字練習の宿題に取り組めるようにしています。ちなみに、チャレンジで間違えた漢字は、宿題で練習することになっています。つまり、先に練習をして正解するか、不正解になってから練習するかを選べるということです。当然ですが、問題に正解することはほぼ間違いなく好子であり、不正解になることは嫌子です。最初はチャレンジに失敗することがあったお子さんも、前日に3文字練習すれば正解できることを学習してからは必ず宿題を希望し、自信満々でテストに臨んで正解しています。好子消失阻止の随伴性と、嫌子出現阻止の随伴性がダブルで効いているので、宿題に取り組む行動は強化されると考えられます。絶対に正解できる。だから、ヒントは要らないのです。

 蛇足ですが、さやか星小学校では、一律にみんな同じ宿題はなるべく出さないようにしています。課題や学習進度が違うお子さんに対して、同じ質と量の課題を機械的に出すことが、本当に学力を向上させるとは思えないからです。学習習慣を形成するという目的を達成しつつ、それぞれのお子さんに必要な量と質の課題を出せるように工夫をしています。逆に言えば、既に獲得している行動は宿題にする必要はありません。例えば、既に百発百中で書ける漢字を機械的に一行書くような宿題は出しません。逆に、一行書いても覚えられない漢字は、もっと練習量を増やすか、別のアプローチをする必要があります。そのようにパーソナライズした宿題を、毎日全員分、担任が一人で作るのは大変です。だから、子どもが自分で家庭学習の課題を考え、実践していけるような仕組みを模索しています。また、それに必要な下位行動を子どもたちが獲得できるようにする学習プログラムも。

国語授業でパーソナライズ

 さて、毎日1文字漢字チャレンジに取り組み、新しい漢字を1文字学習すると、20分から25分程度時間が残ります。さやか星小学校の1年生は、この時間でパーソナライズ学習を行っています。

書く「しりとり」

 「文字を書く」という行動を、楽しく、大量に、しかも偏りなく行うにはどうすれば良いか。考えに考えてたどり着いたのが、書く「しりとり」です。「しりとり」そのものの面白さと、正しい文字を書けるとゲームが進んでいくという随伴性で、書字が苦手なお子さんも夢中で取り組みます。しかも、語彙も増えていくというおまけ付き。ひらがな、かたかな、漢字と、学習している文字の種類が変わっても関係なく行える汎用性も魅力です。


 


読書感想文

 「たぬきの糸車」で学習したワークシートを使い、他のお話でも読書感想文を書く学習に取り組んでいます。かなり難しい学習なのですが、担任からのサポートを一度も受けずに感想文を書き上げた強者もいます。この積み重ねが、文章を読む力を確実に付けていくと確信しています。ちなみに、既に2冊目の読書感想文に取り組んでいるお子さんもいます。流暢生も爆上がり。

見てください。この、真剣に考える表情。瞬きを忘れるほど集中しています。

漢字練習

 新しい漢字を学習するのが楽しくて楽しくて仕方ないお子さんは、この時間でどんどん漢字の学習を進めていきます。なんと、既に3年生の漢字に取り組んでいるお子さんもいます。しかも、学んだ漢字は日記の中でバッチリ使えているので、ただの手首の運動になっていないことが分かります。B子さんは、「1年生のうちに6年生の漢字まで終わらせるぞ!」と意気込んでいます。

彼女が取り組んでいるのは、なんと3年生の漢字です。

オリジナル絵本作り

 オリジナル絵本の作成に取り組むお子さんもいます。文章を考えるのも好き。絵を描くのも好き。そんなお子さんには、とても楽しい活動です。いつか、「さやか星小学校絵本集」とか出せたら素敵だなと夢想しています。

既に画用紙6枚に及ぶ超大作。

 お子さんそれぞれが自分の課題に向かって取り組むこの時間が、実は一番子どもたちの力になっている気がしています。