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妊婦の夏を救ったドリンク。


妊娠してから、お酒が飲めなくなった。当たり前だけど、我慢しなければならない。それまで、わたしの日常に溶け込んでいたアルコールが世界から消えた。

特に辛かったは、妊娠後期の夏だ。夫は、当然のように晩酌をする。わたしの隣りで、CMタレントと同じくらい、それはそれは美味しそうにビールを飲む。わたしは、ノンカフェインの麦茶やほうじ茶を飲むのだけど、刺激が足りない気がした。暑い夏、どうしてもスカッとしたくなる。

ある日、なにげなくスーパー内を歩いていると、炭酸水を見つけた。炭酸水はアルコールが入っていないから飲める。レモンもいっしょに買い足す。産院で、炭酸水を飲んでもいいか確認してみると、無糖の炭酸水は問題ないとのことだった。

なぜか、妊娠中は、酸っぱいものを欲した。炭酸の刺激と酸っぱいレモンは最高だった。ノンアルコールのレモンサワーの完成だ。それを汗だくになった夏に、ぐびぐび飲む。刺激強めの炭酸が、喉を通るときに、カッと熱くなる。口の中がレモンで爽やかになる。「やっと、見つけた」そう思った。ビールに代わるものをやっと見つけたと。


つわりがひどく、あまりご飯が食べられないわたしに、夫が買ってきたフライドポテトとレモン炭酸水が、わたしの命綱だった。

フライドポテトを口に入れ、搾りたてのレモン炭酸水で流し込む。それが、妊娠中の夏の記憶。

その夏を乗り越え、夏に終わりを告げたころ、無事に娘を出産した。

出産後も、母乳を飲ませることになるから、アルコールは飲めない。そんなときは、やはり炭酸水だ。娘が生まれると、レモンを絞る余裕がなくなり、ビンに入った濃縮レモンでオリジナル炭酸水をつくった。

14年経っても、その習慣は続いている。現在は、リンゴ酢、カボス、コーラの原液も仲間に加わった。

娘といっしょに。

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神崎 さやか
チップで新しい手帳を買うことができました。支援してくださった皆さま、ありがとうございます。