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展評

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心に残った展覧会について、感想をシェアします。美術館へGO!
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#アート

名画を体験する@大塚国際美術館

大塚国際美術館(徳島県鳴門市)へ行ってきました。 製薬で知られる大塚グループがタイル製造に進出、信楽の会社と合併した大塚オーミ陶業が優れた技術により歪みのない大型陶板を開発しました。これに絵画を実物大に転写し、世界の名画を実に1000点以上を展示する比類なき美術館を作り上げたのです。 ホントのところ、初めは「レプリカ、わざわざ見に行く?」みたいに思っていたのですが、大学で西洋絵画を勉強し、さまざまな画家を知るにつれ、画集の小さな図版で見るより、よっぽどいいじゃないか!という

どこまで近づけるのか…? 森村泰昌「ワタシの迷宮劇場」

年を追うごとに、ますます活躍が目覚ましいアーティスト森村泰昌。彼の生み出す作品には唯一無二のおもしろさ、素晴らしさがあるのだが、それに加えて展覧会のコンセプトがいつもながら興味深い。 地元大阪での初個展となった国立国際美術館での展覧会も、もう5年以上前。 そして、北加賀屋に個人ミュージアムをオープンさせたのが3年前。 今年に入って久しぶりに再訪しました。テーマがあまりに興味深くて! さて、今回の展覧会、これまで見てきた森村さんの展覧会で、一番ほんとうの彼に近づけたよう

ただ見たいと願う。「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」

2018年、Twitterから流れてくるニューヨーク・グッゲンハイム美術館の展覧会、その作品たちがなんだかとっても不思議で目を奪われた。 うわー、見てみたい!描いたのは初めて聞く名前、<Hilma af Klint> ヒルマ・アフ・クリント。およそ100年前を生きたスウェーデンの女性画家である。 彼女の作品を直接見る機会はなかなか訪れそうにないが、このたび彼女をめぐるドキュメンタリー映画が公開され、その生涯を辿るとともに、たくさんの彼女の作品を見ることができた。 映画で語ら

『挑む浮世絵 国芳から芳年へ』(京都文化博物館)

前回の記事で書いた江戸時代の本屋、もちろん浮世絵も主力商品でした。この展覧会は名古屋市博物館が所蔵する個人コレクターが収集した作品を中心に、歌川国芳と、月岡芳年を始めとする大勢の弟子たちの作品150点を展覧するものです。 歌川国芳(1798〜1861)は19世紀前半に活躍した絵師。スケール感のあるダイナミックな武者絵、ユニークな戯画で幕末の世に人気を博しました。 国芳の浮世絵は、デザインの斬新さもおもしろいが、一番の見どころは、絵にあらわされている「物語」、それも層を成すよ

『野口謙蔵 生誕120年展』 滋賀県立美術館

野口謙蔵をご存じですか? 明治末から昭和にかけて活躍した洋画家で、滋賀県蒲生の地で、終生近江の風景を描きました。 私がこの画家の作品に出会ったのは滋賀県立近代美術館(現:滋賀県立美術館)のコレクション展。時折り1〜2点展示されていたのですが、洋画というには、とても不思議な画風で、ハッと惹きつけられたものです。 その野口謙蔵さんの作品を、滋賀県立美術館の所蔵品を中心に、一堂に観ることのできる展覧会が、現在開催されています。待ち望んでいた展覧会です! 野口謙蔵さんは、滋賀県蒲