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スリランカの孤児院:インドから来た女の子

ーーある日、私はスリランカの孤児院の門を叩いた。

その日から、私は人生で最も心に刻まれる光景を
目の当たりにするのだった。

第一話:スリランカの孤児院:1日1ドル未満の日々

同い年くらいの女の子

ー数週間後、私はまた水色の門を叩いた。

トントン、トントン。

今回は前回とは、少し違った。

前は、シスターが私を迎え入れてくれたのに、今回、門から出てきたのは、二十歳の私と同じくらいの年の女の子であった。

彼女は、髪の毛が3cmくらいに刈り上げられ、ボーイッシュな風貌だった。

私は、とっさに・・・

マゲ ナマ サヤ!(私の名前はさやです)と言った。

すると、その子は何も喋らず、手招きだけして、私を子供たちがいる部屋に通してくれた。

その子の様子を見ていると、なんだか彼女には知的障害があるように見えた。でも、他の人と言葉でのやり取りはできているようだった。

私は現地のシンハラ語がほとんど話せなかったため、彼女と会話での正確なコミュニケーションが取れなかった。

それでも、私のつたないシンハラ語と、ジェスチャーは、私たちの会話を最低限、成立させてくれたのだった。

インドからスリランカの孤児院へ

嘘か誠か、それはもう誰にも分かりえないことなのだが、彼女はインド生まれだった。

なぜ、インド生まれの彼女がスリランカのマザーテレサの家で生活し、シスターのお手伝いをしているのか?

それは、気になったことなのだが、なんだか、彼女には聞いてはいけないような気もした。

それより何より、私には言語力の限界があった。

でも、最低限わかったことは、彼女は、インドで生まれたことと、かなり幼い頃からスリランカのマザーテレサの家で生活してきたことであった。

そんな話を聞きながら・・・
・彼女は親元を離れてから一度もインドに帰っていないのだろうか・・・?
・知的障害が故に、彼女は親元を離れなければならなかったのだろうか・・・?

こんな、私の想像だけが膨らんでいった。

髪が短い理由は・・・

女性としては、彼女の髪の毛は非常に短かった。

ボーイッシュなスタイルが好きであれば別の話なのだが、スリランカの女性は基本的にとても髪の毛が長い。

それなのに、あれだけ刈り上げられているのは、きっとシラミ対策のためだと思った。

そんなことを考えている私を横に、彼女は、私の肩まで伸びた髪を束ねているのを触っては、常に「ラッサナイ(きれいだね)」と言ってくれた。

そう、スリランカでは長い髪の毛は女性としてのシンボルであり、長ければ長いほど美しいと思われているものなのだ。

きっと、ボーイッシュな短い髪の毛は、本人としても、嫌だったのだろう。

私は彼女の髪の毛と自分の髪の毛を見比べては、心が痛んだ。

シンハラ語の勉強ノート

当時の私は、だいぶシンハラ語も上達し、文字が読めるようになっていた。日本語で考えると、あいうえおの五十音が読めるようになったというレベルだ。

そんな私に、彼女は小さなノートを見せてくれた。

それは、彼女が一人で勉強をしていたノートだった。

そこには、シンハラ語の「た」という文字がノートにぎっしりと書かれていた。

そして彼女は、それを、「あ、あー、い、いー、た、たー」とシンハラ語のあいうえお順に音読し始めたのだった。

しかし、彼女がノートに書いていた字は全てが「た」だった
それでも、彼女には、彼女自身が書いた文字全てが、違った文字として見えていたようだった。

そんな様子を見ながら、私は、こう思った。

彼女には自分の間違いを正してくれる先生もいなければ、一緒に勉強する仲間もいない。ただ一人、間違っていても、それに気づかず、黙々と取り組むことしかできない日々なんだな・・・と。

そんな彼女の隣に座りながら、私は、自分がもっとシンハラ語ができたら・・・と、悔やんだのだった。

ー TO BE CONTINUED ー

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