観劇感想vol.1 劇団お座敷コブラ「GEPPETTO」
最近、劇団お座敷コブラ所属俳優である伊藤裕一さんという方がわけあって気になり始め
その所属劇団の過去公演をオンライン観劇サービス「観劇三昧」にて視聴可能との情報を得、この度拝見した次第です。
併せて、もともとお芝居を見るのは好きではあったのですが、敢えて感想を何かに残したりはしてないなぁ……と思ったので
折角なのでこの機会に観劇感想をnoteにしたためてみることにしました。
いつまで続くかはわかりませんが続けられるまでは続けます。
拝見したのは直近の公演「GEPPETTO」。
個人の感想なので本来の演出意図と乖離した発言しているかもしれませんがご了承を。
因みに、1年前の公演を今更見といてこんな事言うのもなんですが
感想にはめちゃくちゃにネタバレを含みます、念の為………
ランプの明かりが徐々に広がり、そこに現れるゼペットの踊りのような作業マイムから始まって
なんとなく穏やかなファンタジーっぽい作品なのかなと思って見てたんですが、
2人が語るAI論/こころ論に引き込まれて、更に終盤で話の見え方を根底から覆す事実が発覚して
公演時間1時間とは思えない濃度の作品でした。
終盤のあの瞬間のピノキオの苦悩、哀しみを吐露する台詞は是非現地でその温度を感じながら観たかった………
これはピノキオがゼペットとの過去を顧みて、平たく言うとゼペットについて語る物語で、だから主人公及びタイトルもここでは「GEPPETTO」なんですかね。
「AIは心を持ち得るか」は創作では割と普遍的な題材ですが
人、及びそれこそプログラムの手に依って新たな、所謂「人格プログラム」を創れるという点を、人形師のゼペットがピノキオに託す思いと、それを受けて生まれたピノキオに繋げて物語を創られる発想がすばらしい………
作中にもAIを題材にした作品の引用が多数されていましたが
今際の際に自身の人生の意義を託すためにピノキオを創るゼペットも、亡き主の死の真意を探すために仮想ゼペットを創るピノキオも
何かを求め委ね縋る相手を自身の手で生み出す点に於いて、昔も今も、人の代わりとなるものを人が創る時に宿す思いや託す願いは同じなのかもしれない。
ゼペットないし人間と感覚を共有し合えることを喜ぶピノキオがなんだかかわいいなぁと思って見てたんですが、データ収集・解析でより人間の思考を理解することで人間に寄り添えるって話がずっと挙がってたのも、過去をいくら思い返せどゼペットの死の理由に辿り着けないピノキオという構図に繋がってたと思うと急にあの笑顔が悲しくなる……
またこの設定を知った上で見ると、キャスト2人が接触せずにゼペットが常にピノキオ視点の画角なのも成程納得です。
「接触のない2人芝居」という煽りが見終わったあとだとこんなに受け取り方が変わるとは。これは2人の話であり、1人の話であり、且つ3人の話でもある。
最後に仮想ゼペットに新たな名前をつけるところも
ピノキオがゼペットとの過去を顧みるために創った人格に、また新たな存在意義が宿されたラストという感じで
そのこと自体が、ピノキオがピノキオというひとつの人格として在る証拠って感じで
このストーリーのラストとして凄い納得感でした。
因みにこちら、ピノキオ役は総勢6名の役者さんが交代で演じられたそうです。
一般的な複数キャストの舞台は、同役を違う方が演じられる差分を楽しむ意図があると思いますが(他にも理由あるだろうけど、スケジュールとか)
結末を知った上で何度も見返すことで、前半部分に織り込まれた演技や脚本に於ける伏線を発見できるという
複数キャスト演劇ならではの本来の面白さに加えた要素を孕んだ、お得な楽しみ方で鑑賞できる作品となっておられます。
これもまた、見終わったあとで受け取り方が変わる演出………
この度拝見したのは脚本・演出をされた伊藤裕一さんご本人がピノキオを演じられた回だったのですが
今回を踏まえた上でこのあと順次ほかの役者さん出演回も見てみようと思います!
因みに、こちらのお座敷コブラ様
11/30〜12/4に、溝ノ口劇場にて新作の公演をご予定されている模様です。
こちらもチケット取ったので観劇予定です!たのしみ!!