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空気が薄くなった。 灌木は既に見ない。 昨日までは平原を覆う草原があったが、今や岩陰…
その女性が纏う威光は、日輪の如きものだった。 これがタキシラ国を統べる女王かと思い、…
闇夜の地平線には、プシュヤ星宿が浮かんでいた。 イ・ソフタでの逗留は数日に抑えた。 …
イ・ソフタは天空の要害都市である。 ヒンディークシ山脈のレーへ峠を越えた圏谷に位置す…
曙の雲が七色にたなびいている。 光彩が時の経過で移ろう時間だ。 男は膝をついて嘆息し…
「小僧、何を企んでいる」 無言の重圧がひしめいている。迂闊であった。遠巻きに囲まれてい…
これは興味深い。 私は待つことにした。 一応、錫杖棍は手元に置くことにした。 この杖は仕込みがある。動輪を捻じ回すと穂先にヒテ人の鍛えた、槍の穂先が現れる。鍛造で鍛えられたそれは、戦さ場でどれほどの命を呑み込んだだろうか。 雨が近いのか、風に緩いものが混じっている。 返り血を浴びたように、肌が湿っている。 足音が実体を持って姿を表した。 太い唇が朱を含んで笑みを浮かべている。敵意はなかった。 腰に皮袋を下げている。銀髪の頭を掻いて、ふいに笑みを溢れされた。隆
中天に半月がかかっていた。 雨が近いのか、朧に霞を纏っている。 そのために星空が疎ら…