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餓 王 Ⅱ 鋳金蟲篇

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紀元前十五世紀の古代インド。   このドラビィダ人が農耕と牧畜で生活している大地に、アーリア人が武力を持って侵入している時代。後のインダス川と名前を変えた七大河に戦乱が満ちている…
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#一度は行きたいあの場所

餓 王 鋳金蟲篇 2-4

 空気が薄くなった。  灌木は既に見ない。  昨日までは平原を覆う草原があったが、今や岩陰…

百舌
9か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 2-3

 相貌に見覚えがある。  脳裏の記憶と相結ぶものがある、その少女にだ。  カリシュマと呼ば…

百舌
10か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 2-1

 闇夜の地平線には、プシュヤ星宿が浮かんでいた。  イ・ソフタでの逗留は数日に抑えた。  …

百舌
10か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 幕間

 適齢期というものがある。  恥ずかしながらの年齢を刻み、後悔の多い半生を振り返って、初…

百舌
10か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 1-5

 イ・ソフタは天空の要害都市である。  ヒンディークシ山脈のレーへ峠を越えた圏谷に位置す…

百舌
10か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 1-4

 曙の雲が七色にたなびいている。  光彩が時の経過で移ろう時間だ。  男は膝をついて嘆息し…

百舌
11か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 1-2

 これは興味深い。  私は待つことにした。  一応、錫杖棍は手元に置くことにした。  この杖は仕込みがある。動輪を捻じ回すと穂先にヒテ人の鍛えた、槍の穂先が現れる。鍛造で鍛えられたそれは、戦さ場でどれほどの命を呑み込んだだろうか。  雨が近いのか、風に緩いものが混じっている。  返り血を浴びたように、肌が湿っている。  足音が実体を持って姿を表した。  太い唇が朱を含んで笑みを浮かべている。敵意はなかった。  腰に皮袋を下げている。銀髪の頭を掻いて、ふいに笑みを溢れされた。隆

餓 王 鋳金蟲篇 1−1

 中天に半月がかかっていた。  雨が近いのか、朧に霞を纏っている。  そのために星空が疎ら…

百舌
11か月前
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