紫陽花の栞 プロローグ【小説】
梅雨時の天気は変わりやすいと誰かが言っていた。それが誰の言葉だったかも分からないが、それを気にすることも無く今で過ごしてきた。こうして外に自由に出るなんてこと今ではなかったから、雨が降ろうと雪が降ろうと気にしたことは無かった。
今までなら、傘も持たせて貰ってたしなとそこまで考えてから今の状況をどうにかしなければと思う。どこかで雨宿りさせてもらうにしても、この辺りは民家ばかりで店などない。コンクリートの塀はあれど、屋根のあるような場所もない。
これは困った手詰まりだと諦めかけた