『お餅の薬膳的働き』と食べる時の注意点とは?【漢方的食養生】
今回はお正月の風物詩『お餅』について。
年末に『お餅つき』をする家庭も多いと思いますが、12月29日は9が付くので
『苦(9)持ちになる』
と言って餅つきを避ける風習もあります。
逆に29日が『2(ふ)9(く)』と捉えて『福』で縁起が良いとこの日に餅つきをするところもあるそうです。
31日に餅つきをするとお餅がしっかり固まらずに2段のお供え餅が沈むため縁起が悪いなんて言われておりますが、どれも語呂合わせみたいもの、縁起担ぎなので楽しく餅つきができればいいですよね。
僕は焼いた切り餅に醤油をつけて焼海苔でまいた『磯辺餅』が非常に大好きなんですが(最近はこれにギーを塗って食べるという『禁断の磯辺餅』に手を出し始めてかなり危険な状況です)
実はこの磯辺餅、おにぎりと同じでなかなか食養生的にも理にかなっています。(その理由は後ほど)
今回はお正月の代表的食べ物
お餅を食養生的に解説したいと思います。
『お餅の薬膳的働き』と食べる時の注意点とは?
というテーマでお届け致します。
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【お正月の食べ物の中でも最も注意が必要な『お餅』】
『お餅』
日本のお正月の象徴的な食べ物であり、不思議な魅力を持っている食べ物です。
そんなお餅ですが、実は食べすぎてしまうと思わぬ不調になることも多いので実は注意が必要な食べ物の1つなのです。
お餅と健康にまつわる逸話、おばあちゃんの知恵袋的な話が皆さんも幾つか聞いたことがあるかもしれません。
例えば
『母乳が出にくい人女性はお餅を積極的に食べると良い』
と言われていたり
『おできのある人は餅は食べちゃダメ』
なんてことも言われたりしますが、その真偽のほどはどうなのでしょうか?
ここからは薬膳的にもち米がどんな働きを持っているか見てみましょう。
【もち米の薬膳的な働き・おすすめの体質&避けたい体質】
まずは薬膳的にもち米の働きを見てみましょう。
◆薬膳的なもち米の働き
『補中益気』・・・胃腸の消化吸収力を高めてカラダに必要な栄養を獲得する
『温中止痢(うんちゅうしり)』・・・胃腸を温めて下痢を止める働き
このような働きがあると言われています。
もち米は温性の食材で胃腸の機能を高める働きがあり、胃腸が弱い気血両虚(元気と血液が両方不足しているようなタイプ)やカラダを温める力が不足しているような陽虚タイプの方にはおすすめです。
昔から『ハレの日』に食べるものとして栄養価が高いもち米をつかったお餅がたべられていたのはこのような薬膳的な働きもあり、昔は非常に貴重な栄養源だったのでしょう。
◆もち米を食べる時の注意点
どんな食材にも言えることですが、万人に良いという食材も漢方薬もありません。当然食べすぎに注意が必要な体質や体調の方もいます。
基本的に先程お伝えしたようにカラダが弱っている虚証の人が食べて良いとされているものなので、栄養過多の人が多い現代人にとっては取りすぎに気をつけたい食材とも言えます。
また、もち米は不調があるとその患部が熱を持ち悪化してしまうことがあると薬膳では言われています。
これは中医学的な見方ですがカラダを温める温性が強いもち米は患部が熱を持っているとその熱を高めて炎症を悪化させると考えます。
乳腺炎やおできのときに食べてはダメ、と昔から言われているのはこのあたりが所以になっていると思います。
また、もち米を食べすぎると血をドロドロ(モチモチ)にさせてしまう働きもあると薬膳的には言われています。
基本的に栄養価も高く弱った人におすすめなのですが、もち米は消化があまりよくないので胃腸が弱くカラダの弱った方には柔らかく炊いたり、煮たりして食べたり、良く噛んで食べることをしっかり伝えることが大切です。お年寄りも注意が必要です。
【お正月明けに副鼻腔炎などのアレルギー疾患が増える理由は?】
また、もち米にはもう一つ食べるのに注意してほしい体質の方がいます。
それがアレルギー体質の人です。
お餅を食べ過ぎた、という方が正月明けにアレルギー症状がひどくなるという事例が実は非常に多くみられます。
特に日頃から副鼻腔炎など、慢性的なアレルギー症状がある方は要注意です。
理由を簡単にご説明すると、もち米はヒスタミンと言ってアレルギーを悪化させる物(実は色々な食品に含まれています)が多く入っており、それをついて固めて一度に大量に食べることが出来るため、お餅を食べすぎるとアレルギー症状が悪化する恐れがあるのです。
また、アレルギー以外でも『炎』症がある方はもち米は要注意です。
先程も一度ご紹介しましたが、温める力が非常に強い食材なので、鼻炎や皮膚炎などのアレルギー症状はもちろん、関節炎など含めて炎症が強く起きている症状がある時の食べ過ぎは炎症を悪化させる恐れがあるので注意しましょう。
(これは薬膳的な考え方です)
【美味しいお餅もこんな人は控えめに】
まとめるとお餅の食べすぎに注意したい方はこんな症状や体調の方です。
・アレルギー体質の方(副鼻腔炎・ちくのう アトピー 慢性鼻炎 などの方)
・にきび、おでき、乳腺炎のある方
・関節痛のある方(炎症がひどくなる)
・便秘の方
などです。これ以外でも温性が強いのでカラダに熱がこもって怒りっぽい肝陽上亢タイプの方や、潤い不足で熱っぽくなりやすい陰虚の方も注意しましょう。
現代人は基本的に『栄養過多』の方が多いのでお正月とはいえどもあまり食べすぎないように注意しましょう。
【お餅と一緒に食べるのにおすすめのものは?】
どんな食べ物にも言えることですが何事も過ぎたるは及ばざるが如し
です。
カラダに良いものも食べ過ぎれは毒になるし、上手に使うと薬となります。
食養生の面白いところは食材がもっている弱点や利点を他の食材を合わせることでバランスをとったり、補ったり出来ることです。
せっかくのお正月。美味しく楽しくお餅を楽しむためにおすすめの食べ合わせを最後にご紹介します。
まずはお餅と最高の食べ合わせ、ベストマッチは何と言っても
『大根』
です。
よく考えるとお正月は非常に大根を食べる時期ですよね。
大晦日などに食べる煮物、紅白なます、お雑煮の具の大根など、1年間でこれだけ大根が活躍する時期はないと思います。
そしてお餅を食べる時におすすめなのが
『大根おろし』
です。
つきたてのお餅を大根おろしで食べるのは最高ですよね。
僕もつきたてのお餅の食べ方ではダントツで大好きです。
大根おろしでお餅を食べるのは美味しいだけでなくちゃんと意味があります。
大根は消化を促進する働きがあるので、消化が悪く胃腸に負担がかかってしまうお餅と一緒に食べるには最高の組み合わせなのです。
ぜひお餅を食べる時は『大根』も忘れずに食べましょう。
もう一つおすすめが僕が冒頭で大好きだとお伝えした『焼海苔』です。
磯辺餅も非常に理にかなっており、お餅は糖質の塊です。素晴らしいエネルギー源になるのですが、繊維質が不足しています。
海藻である焼海苔をたっぷり巻いて食べることで水溶性食物繊維をしっかり補うことができ、腸の働きや急激な血糖値の上昇などを和らげてくれることが期待できます。
これに先程の大根を食べれば不溶性食物繊維も取れるので更に腸の働きをサポートできます。
焼海苔はミネラル補給もできるので、お餅を食べる時は大根と焼海苔をぜひ活用してみてください。
最後にお餅を食べる時の注意点ですが、毎年高齢の方を中心にお餅を喉につまらせてしまう事故があとを絶ちません。
お餅を食べる時は
・ゆっくり
・良く噛んで
食べるように注意しましょう。高齢者と小さなお子様は特にご注意ください。
できるだけ、高齢者の方や小さなお子様は柔らかく煮込んだ状態で、一口サイズぐらいにして、ゆっくり噛んで食べれるようにしてあげましょう。
せっかくのお正月の楽しみなので、美味しく、楽しく、安全にお餅を楽しみましょうね。
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