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隣のごくう その二 イタズラ好きの隣のばあさんに手をやいてます😮‍💨

登場人物をご紹介!

まず、我が家は三蔵家。
隣に住むのは、イタズラごくう。
ごくうの向こう隣は、はっかいさん。
そしてごくうの裏には、さごじょさんが住んでいる。
ごくうの家の前、狭い通りを挟んで、おつゆ(牡丹灯籠風)。
さごじょさんから一軒おいたところは、大岡越後さんのお宅だ(大岡越前風)。

ごくうがターゲットとしているイタズラやケンカ相手は、はっかいさん、さごじょさん、そして我が三蔵家の3軒である。

イタズラは引っ越ししてきてから暫くの間、コッソリ枯葉剤を撒くこと。そしてケンカは、面と向かって暴言を浴びせることを主流としていた。

暴言は家族にも及んでいて、日常的に台所で旦那と言い争っているのが聞こえたが、今ではその男を見ないので、逃げ出したのか、追い出されたのかはわからない。

ずっと前、同居していた息子の部屋から聞こえたのは「母さん、いい加減にしてくれよ!」だった。以来、息子の声もしない。

ひとりぼっちになったごくうは、家に居ても退屈なのであろう。
朝から夜まで、時間の許す限り、カーテンの脇をそっと開けて、ジーッと外を見ている。

いわゆる覗き見だが、プロではないので、人気(ひとけ)を消せずにいるのが、ごくうの特徴である。

数十年前、ごくうが洗濯を干すベランダとほぼ隣接している私の部屋の窓を、よく開けていた頃の話だ。

気がつくと、ごくうは洗濯物を持ったまま、黙ってベランダに立ち尽くし、私の部屋の中をくまなく見ていた。

私が睨んでも、気持ち悪いくらい部屋の中をジーっと見渡すので、嫌がらせに「こんにちは!」と言ったら、「あ、あぁ」と言って逃げていったことが何回かある。

本当に気持ち悪くなったので、その窓は雨戸を開けないようにしたが、その後、日時関係なく、外からドンドン、ドンドンと叩かれる音がするようになった。ごくうが持つ如意棒を使った仕業だと思われる。

雨戸には叩いた跡が残っていないので、やったやられたの話しは出来ない程度の、精神的にヒビを入れる嫌がらせをされるようになったのだ。

ある年、枯葉がたくさん道に落ちる季節になった。いつもは午後、掃き掃除をするが、この日は朝起きると、あまりにもひどかったので「きれいにしよう!」と思い、朝7時ごろ、家の前を掃き始め、サーッサーッと音をたてた。

途端、ジャー、ガラッ!とすごい音がして、ごくうの家のカーテンと窓が開いた。
仁王立ちしているごくうが現れた!低いガサガサした通らない声で、開口一番、
「うちの前も!」言いつけてきた。

いやいや、普通、朝は「おはようございます」から始めるでしょう!?と思ったが、ごくうに常識は通じないので、いったん無視した。

うちの枯葉がごくうの家の前にも落ちていたので、言われなくても掃除しようと思っていたけど、直ぐにごくうの家の前を掃かなかったから、聞こえてないと思ったのか、
「うちのまえも!!」大な声で叫ばれた。

命令されなければ、ごくうの家の前も丁寧に掃くつもりだったが、面倒になる前にザッザッと簡単に掃いて、そこから逃げた。
ごくうは私が掃除したのを確認して直ぐ、何も言わずにすごい音で窓とカーテンを閉めた。私はそれ以来、朝の外掃除はしないことにした。

ごくうは人や物に対する扱いが乱暴だ。人間関係もさることながら、家のあちこち、かなりガタがきていると思う。

ある日の日中、私が自宅の外回りを掃き掃除してサーッサーッと音をたてたら、ごくうの家の横窓が、ガッ!と開いた。顔は出てこなかったものの、誰が何をしているのか確認したらしい。

掃除の音に過敏に反応するのは、どう考えても変だ。何かに怯えているように思える。と言っても、財産があるようには見えないし、土地柄、金持ちが住むような場所ではないので、謎である。

ある年の正月、さごじょさんと道端で出会し、新年の挨拶の後、ごくうの話しになった。

「もしかしたら以前住んでいたところで、近所とバトルを繰り返していたんじゃないかな!?自分もイタズラして、他人からもやられて、泥沼に陥って引っ越ししてきた感じがするね!」
私が言うと、さごじょさんは、
「きっと相手は、聞いたこともない土地に行ってくれて良かった!と今頃、喜んでるよ」
と言って、2人でケラケラと初笑いした。

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