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佐和島ゆら
2019年2月28日 18:56
【すき焼き】 享年二十八歳。妻の葉月は持病の心臓病で亡くなった。そして二年後になっても、仙堂は生きている。 ある詩人は言った。愛するものが死んだ時には、自殺しなきゃあなりません。 今日の夕食はすき焼きだった。仙堂が作ったわけではない。ただなじみの居酒屋に寄ったとき、そこの奥さんが仙堂を見るなり驚いて。「ちょっと! あんた痩せすぎじゃない!」 そう言って、自分たち用のすき焼き
2018年4月13日 19:06
いきなり頭をさげられた。場所は普段近寄らない、ちょっとお高い喫茶店でだ。暗めの照明。香ばしいコーヒーの匂い、そして流れるクラシック……そこで俺は目の前の男に頭を下げられていた。 困惑というか、なんでそんなことをされるのか分からない。俺は慌てて、声を出した。「やめてくださいっ。何なんですか、いきなり」 すると男は心底まいったような顔をした。眉間にしわを寄せ、唇を噛む。それからまた深々と頭を下