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歪んだデイ・ドリーム

夏の終わりの憂鬱に浸る
深夜、もしくは明方
見馴れた部屋が闇色に染まり
不眠の男が夢遊する
目を開けて寝言を言い
涎を垂らしながら冷蔵庫を物色する
青白く照らされる顔からは
まるで正気が感じられない
歪な遺物がそのままの部屋
裏返しの遺影と蜘蛛の巣の神棚
二階物置に捨てられた仏壇
畳の上に積もる灰と鴨居に縄の跡
夏の夢咲く夜の森に火を放つ人
男か女かもわからない影に問う
「ここは夢ですか?」
応答はない

歩き疲れたことさえ忘れて歩き続ける
ウォーキング・デッド!
誰か撃ち殺してくれ
ガソリンの匂い、繁華街は火の海
光る星屑を睨んでも何座かわからない
貴様の眼球には今の俺がどう見える?
捨てられた犬とか桜耳の猫
親を殺された仔熊や
アリンコ風情にでも映れば良いが
懐かしのサイレント・マジョリティー
神々は口々に沈黙の奴隷
足に枷、口に轡、首に輪っか、肌に傷
万物流転のドドドド真ん中
マントルの奥の核心に触れてみたい
錆びついた物干竿とか便器の黒ずみ
シンクの水垢や排水溝に絡みついた
べとべとの髪の毛とかじゃなく
美しい世界の片鱗を集めて鼻から吸ってみたい
洗いざらい吐いて残るペラペラの身一つ
すっからかんの脳みそ一つ引き連れて
焼野原交差点、死屍累々の戦地跡地
鉄骨剥き出しのカタコムを進む
流浪の白痴が妊む赤裸の白昼夢
その途中にある白紙のページに書く啓示
集めては並べ替え→変換→翻訳→倒語→アナグラム→連想ゲーム→繰り返すこじつけて合わせる辻褄と帳尻
間違い探し旧約聖書古事記広辞苑開いて閉じて目を通す何度も口に出して顔にかけて罠に嵌めて舐めて嫌なこと全部忘れるためにだけ気持ちよくなって

見上げる月の鋭さを図るために傾ける分度器
その透明性を図るために溺れる透明度板
その面積を図るために使う公式に躓いて
また浮き足立つ躁がこけ脅しの鬱を泣かせて
あやしている間に過ぎる時間にできたことを悔いても白白しく夜は更け逝き
朝を迎え夢から覚めれば、よく冷えた部屋の中心
渇いた喉を潤すために開けた冷蔵庫から放たれる光が眩しくて目を閉じてまた夜送り
最近はずっとこの調子、その繰り返し

#詩 #自由詩 #現代詩 #ポエム #note文芸部 #100日詩チャレンジ #45日目

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