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春夜
灯る火の燻る 花の香は淡く
妖艶な滲み 暗闇とともに
ぼんやりと光る 冷気
輪郭は柔らかに熱を帯び
熱る頬は桃色
少女の、白く細っそりとした手首
背中まで伸びたまっすぐな黒髪
一目見たときから患った大病
ほろ苦い記憶は初期症状として
弊害をもたらし支障を来す
ゆえに有り難く
なおも生きづらい
生活の保護は金だけでは足りない
日々、事欠かない優雅を夢む夜
月明かり差す窓辺にて
残像としての呪いの類
それはいつだって同じ
足のない少女の霊の透けた横顔
瞬き、それすらも愛おしく
胸を焦がし熱らせる首や腋
くちびるの形をなぞる指は空回り
まるでセピア、無声映画のそれ
水の中にいるような音で、声で
口を動かして、身振りを取り入れ
訴える今日、明日、明後日
振り解く呪縛は自業自得
自称自尊心自縄自縛
自戒故の自傷癖を自負
情けない肉塊一つ息づく部屋の隅
翳りを連れて