これからの国語科の授業とは?⑤(2018年10月14日)
先々月の4日(土)と5日(日)は、日本国語教育学会主催の「国語教育全国大会」でした。
残念ながら初日は仕事の都合で午前中のみの参加でしたが、充実した二日間となりました。
今年で第81回の全国大会ですが、学会の長年の取り組みである「国語単元学習」を軸としながらも、新指導要領を受けて「豊かな言語生活を拓く国語教育の創造―「主体的・対話的で深い学び」を実現する単元学習―」というテーマで実施されました。
1日目は文教シビックホールにおける一斉形式での授業公開ですが、2日目は小中一貫校・品川学園を会場にしての授業実践研究発表です。「校種別分科会 研究発表と協議」「テーマ別分科会(模擬授業型分科会/ワークショップ/大学部会シンポジウム)」「単元学習実践研究発表」の3プログラムで一日が展開しますので、どの会場に行こうか迷ってしまいます。
ブログでも何回かにわたって今回の大会の報告をしてきました。前回の記事(「これからの国語科の授業とは?④」)では〝今回で最後〟としましたが、あと数回記したいと思います。「テーマ別分科会」のうちワークショップから「語彙を豊かにする物語・小説の読みの単元づくり」(信州大学/藤森裕治先生)の紹介の第2回目です。
ワークショップに入るにあたり、その方法についての講義がありました。
【導入】基幹語彙と物語・小説の読み
〇「基幹語彙」とは?
言語生活者である学び手の個性及び社会性を発達させ、心身の健康を維持させる上で重要な役割と機能を持ち、生涯にわたって使用されることになる語句、及びその体系的知識
そこで【モデル提示】として、ヘルマンヘッセの『少年の日の思い出』(中学一年教材)とレオ・レオニの『スイミー』(小学二年教材)が採り上げられました。
参加者には時間が与えられ、基幹語彙として授業で取り扱いたいものを選んでみることになりました。何人かの参加者がそれぞれ選んだものを発表しましたが、藤森先生はどれも否定せずに選ばれた語の意義をコメントしてくれました(私たちが普段の授業でも生徒たちに示したい在り方ですね!)。その上で、先生が示されたのは次の語でした。
・『少年の日の思い出』
エーミールの「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな。」の「そんなやつ」
→「そんなやつ」という指示語のはたらきの重要性。〝そんなやつ〟が「どんなやつ」なのかを「僕」が自己再現しなければならない苦しみがある。
・『スイミー』
スイミーは 考えた。
いろいろ 考えた。
うんと 考えた。
→スイミーの原作副題は「世界で一番かしこい魚」であり、この部分は原文ではゴシック体で3回「THOUGHT」とある。ここに至るまでにスイミーは兄弟を失った恐怖と孤独、悲しみがある。その後、海の中でたくさんの素晴らしいものに出会って元気を取り戻し、それが最終的には生きるために考えることのヒントとなった。
【基幹語彙を選ぶ基準】
①子供たちの言語生活の中で、生涯にわたって使われるに違いないことばであること。
②その作品を読む際、読者に対して重要な意味やメッセージを担っていることばであること。
③そのことばの使い方や由来などを知ることによって、ことばの学びが豊かで確かなものになること。
では、この「基幹語彙」を実際の授業ではどのように生徒の学び、具体的な活動につなげていくのか。授業者の腕の見せ所です。
次回で上記について触れたあと、藤森先生が参加者に示したいくつかの定番教材でのワークショップについて紹介したいと思います。
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