お気に入りの評論――村上陽一郎「科学と世界観」⑤(2014年3月15日)
先に私はメルマガを発行していたことをお知らせしましたが、廃刊にしたメルマガの中で、もう一度みなさんにも読んでほしいと思う情報をウェブリブログにて再録していました。
教科書に採用されていた評論の解説もそのひとつでした。しかしながら、それらの閲覧数が他の記事をはるかに上回っていることが大変気になり、いくつか思い当たることがありました。
noteにもそうした危険のある記事を収録するか、収録するにしても有料にしてしまうかで悩みましたが、結局そのまま掲載することに決めました。学校での宿題のためにこのページにたどりついた方は、どうか上で紹介した記事も合わせてお読みください。よろしくお願い申し上げます。
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発行人は古典が専攻ではありますが、評論についても古典と同じくらい(自分で読むのも、教えるのも)好きです。そこで、これまで扱ってきた評論の中で、気に入った作品を紹介し、考察してみたい――という考えがきっかけで始めたコーナーです。
現在は、村上陽一郎氏の「科学と世界観」を分析していますが、読解のためにとった実践なども紹介していきます。
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「科学と世界観」には、内容に沿って六つの小見出しが付けられています。
「壮大なプログラム」
「救済史観の変遷」
「世界観としての位置」
「南北の食い違い」
「自然の流れの中に」
「二つの力の緊張関係」
今回は、「南北の食い違い」です。
「一文要約」と称した作業プリントにおいて、この段落の問いは以下のようなものです。
第四段落の小見出しは「南北の食い違い」となっているがそれはどういうことか。第四段落中より、それが最もよくわかる一文を抜き出しなさい。
そろそろこの見出しを見て、「南北」の対比が記されている一文はどこかと探せるようになっているといいと思います。
第一には、今ここで北が、これまでの「進歩」は間違っていたと主張し、その主張を地球上に――かつて科学技術による「進歩」を地球上に普及拡大することを自明の善と信じたように――広めようとすることは、著しい利己主義になりかねないという点である。
この一文は実際には「北」の語しか出てきませんが、「進歩」が間違っていたという主張をどこに「広めよう」としているかといえば、それは「南」に対してであり、対比の構造が隠されているのがわかります。
その後しばらく、「南」は未だ、かつての「進歩」を求めているのだとわかる記述が続き、上記のような考えることの裏付けがされるものと考えます。
さて、一文要約と合わせ、次の問いによってこの段落ではまず「北」「南」の意味するところを確認しておきます。
問六 第四段落における「南」と「北」とは何か答えなさい。
実はこの問いの答えは本文中にはなく、脚注に存在します。
南北―ここで言う「北」は主として北半球に多い先進工業国を、「南」は主として南半球に多い発展途上国を指す。その様々な格差から生まれるのが、「南北問題」である。
せっかくある注釈を無視して本文を読み進める生徒は少なくありません。注釈は必要だから付いているわけで、ここではその重要度が非常に高いと思われた注にあえてこのような問いを立ててみました。
「先進工業国」と「発展途上国」という語に「北」と「南」が置き換えられることがわかれば、生徒によっては、国際的な環境会議等で両者の主張が食い違っているといった具体例を思い浮かべることができ、読解の助けとなるはずです。
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第四段落はまだ後半に手ごわい箇所が残っています。一文要約で引用した一文の冒頭が「第一に」だったのを皆さんはお気づきになりましたか。南北問題の「根本的な問題」はこれだけではないのです。そして、村上氏の難解な文章の読解がこれに加わります。
次号をお楽しみに!
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