語彙を増やし、語彙力を高める、そしてその重要性③(2020年5月18日)
前回の記事の続きになります。
ベネッセコーポレーションによる「現代人の語彙に関する調査」の結果分析によると、高校生の「探求的な学習活動」への取り組みは「語彙力」の高さが影響していました。これについて、学校教育が主体的な学びへと移行することによって格差が広がらないようにという点での私見を述べています。
上記の調査ではさらに、生徒が社会の変化に向き合おうとしている意識と「語彙力」にはどのような関係があるのかについても分析しています。今回はこの内容について紹介し、自分の考えを述べたいと思います。
「社会で必要とされるスキルや能力は時代と共に変わっていくと思う」と考えている高校生の「語彙力」(51.5)は、そう考えていない高校生の「語彙力」(37.6)より13.9ポイント高いという結果が示されています。
また、「生涯にわたり新しいことを学び続けたい」と考えている高校生の「語彙力」(55.2)は、そう考えていない高校生の「語彙力」(42.9)より12.3ポイント高かったとあります。
その傾向は、20~60代の社会人でも同様で、
①社会の変化に対応していこう
②継続的に学び続けていこう
という意欲や意識が、新しい時代を生きる生徒に求められる問題解決能力と主体的な学びの姿勢を身につけさせる「総合的な探究の時間」の目標の達成、「語彙力」を高める結果にも結びついていると言えそうだとしています。
ただ気になるのが、この調査において、「社会で必要とされるスキルや能力は時代と共に変わっていくと思う」の項目について「あてはまる」とした高校生が857人、「あてはまらない」とした高校生は143人であるのに対して、「生涯にわたり新しいことを学び続けたい」の項目については「あてはまる」とした高校生が539人であるのに対して、「あてはまらない」とした高校生は461人もいます。
これが大学生であると、「あてはまる」が728人、「あてはまらない」が272人(語彙力の差9.5ポイント)です。20・30代の社会人は「あてはまる」307人、「あてはまらない」193人(語彙力の差15.6ポイント)、40~60代の社会人でも「あてはまる」304人、「あてはまらない」196人(語彙力の差7.1ポイント)です。
大学に進学する・できるかどうかは、②継続的に学び続けていこうという姿勢におおいに関係する要素であることが伺えます。また、20・30代の社会人と40~60代の社会人では継続的な学びが必要だという人とそうでないとする人の差は、高校生よりも少なくなっています。理由はこの数字だけでは何とも言えませんが、実社会に出てその必要性を知ったということは考えられやしないでしょうか。
継続的な学びの必要性に気づきながら、20・30代では語彙力の差がどの世代よりも高くなっているのも気になります。現在の社会システムは、一度、教育的な格差がついてしまうとその解消が難しいという意見も見られます。
高校生までの段階で、①の社会の変化に対応していこうという姿勢に、②の継続的に学び続けていこうという姿勢が結び付くような働きかけが、家庭、地域、学校教育においてますます重要になるのではないかと考えています。
継続的な学びを続けている大人が身近な存在となることは、これまでの私の経験では、ひとつ有効な方法であったと考えます。社会のそれぞれの場所で活躍されている卒業生に講演やグループワークに参加してもらい、継続的な学びの具体的なイメージや重要性を自分のものとしてとられえられる子どもが増えてほしいと願っています。
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なお、他者への共感や、自己の置かれた状況を理解し、受け入れ、歩を前に進めるための「ことば」の役割については、本ブログの4月5日の記事で自らの考えを述べました。
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