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独立系メディアの原則(2006)

独立系メディアの原則
Saven Satow
Nov. 17, 2006

「低賃金労働と戦争をアウトソーシングしているのと同じように、私たちは政治闘争をアウトソーシングしている」。
ナージャ・トロコンニコワ

 独立系メディアは、1972年のローマクラブによる「成長の限界」から2002年の国際連合が開催した「持続可能な開発に関する世界首脳会議」に至る経験・討議・提言を踏まえ、広義の持続可能性に寄与する組織体である。鳩の素直さと蛇の賢さを持って、開かれた立場をとり、排他性・独善性を斥ける。以下の10の原則に同意するならば、この場を提供し、参加を歓迎すると共に、協力を惜しまない。

(1) 独立系メディアは、社会的存在として、公共性に貢献し、そのために、コミュニケーションを活用・創造・組織化する。

(2) 独立系メディアは自律=他律の相克を乗り越える共同作業体である。参加者は、理念の共有において、自由かつ平等であり、多様性・異質性・個人性を認められる。その組織体は中央集権的・上意下達的ではない。独立系メディアは目標とすべき社会のあり方を自らの組織の形態として体現する。

(3) 独立系メディアは人間の尊厳を尊重する。エスニシティ・ジェンダー・セクシャリティ・宗教・病気・障害・出自・年齢等による差別を一切許さない。

(4) 独立系メディアは、その独立性・オルタナティヴ性を堅持し、熟議の上で、判断を決定する。政治的・経済的・社会的・軍事的・宗教的・文化的等の特定の勢力を妄信的に支持しない。また、世論が衝動的・独断的・狂信的に傾斜した場合、そうした動向に迎合しない。その際には、賢明な不服従の姿勢を示し、警鐘を鳴らす。

(5) 独立系メディアは社会における矛盾や不正、腐敗、横暴、隠蔽、不備等の諸問題に断固として立ち向かうが、歴史的・同時代的な考察・実践を積極的に吟味・参照する。自分自身の歴史的・社会的な位置づけを怠らない。権威主義・直観主義・教条主義に陥ることなく、現実的諸前提を認知しつつ、分析・批判・提案・行動・反省する。加えて、自らの発言・行動に対し、責任を持って社会に説明する。

(6) 独立系メディアは緊急の事態には柔軟に即応すると共に、本質的・体系的理解に基づき、諸問題の根本的な解決に挑む。

(7) 独立系メディアは、法的・倫理的認識に則り、身体的・精神的のいずれの暴力主義にも与しない。国際社会が相互依存性・相互浸透性を深めている状況を考慮し、不寛容で狭量なジンゴイズム・排外主義・レイシズム・エスノセンタリズムと闘い、共生社会の達成を志向する。

(8) 独立系メディアは未来が必要としている現在の実現に参与する。科学技術の進展や交通・通信の発達は法の予想を超える事態を招くが、正義(社会的公正)・ケアリングに立脚し、未知への想像力を保持して対処する。持続可能性の具現には、カオス性・未来性・グローバル性の認識が不可欠である。

(9) 独立系メディアは諸問題を告発・糾弾するだけでなく、社会の変革に取り組む。現状に埋没することを避け、ユニバーサル社会の到来という展望に立ち、ユニバーサル・デモクラシーの確立を目指し、その意義の浸透の役割を果たす。

(10)  独立系メディアは自身の営みを他なるものによってさらに検討・発展させるのみならず、克服されていくことを望む。
〈了〉
参照文献
ナージャ・トロコンニコワ、『読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門』、野中モモ=清水知子説、ソウ・スウィート・パブリッシング、2024年

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