演奏難易度「鬼」クラス! 凄腕ギタリストに聞いてみた。 ギターのコピーを諦めた曲は?

どんなに高速な速弾きも、難易度の高いフレーズも、涼しい顔でスラスラと弾いてしまう上手いギタリストを観た時、よくこんな疑問が頭に浮かびます。

逆に、弾けない曲なんて存在するの?

同じ疑問を持つ人はきっと他にもいるはず。

そこで今回、凄腕ギタリストに、この疑問をぶつけてみました。

質問に答えて頂くのは、ギタリストのHisa。実際に生で演奏を観て、その腕前に全幅の信頼を寄せているハードロッカーです。

<インタビュー>

コピーできないほどの難しい曲はありますか?

A.あるよ。

それは何という曲ですか?

A.Joe Passっていう人の曲。彼の曲は基本的にコピーするの無理やね。ジャンルはジャズ。

時間をかけて練習しても?

A.うん、無理やと思う。イングヴェイ・マルムスティーンとか、ポール・ギルバートとかのギターは、もちろんハイレベルなテクニックが要求されるし、難易度高いけど、それでもひと月の練習時間があって真剣に取り組めば、ある程度コピーできる。でも、Joe Passは無理やと思う。

Joe Passは、何がどう違うのでしょうか?

A.まず使うスケールが違うね。Joe Passはロックではあんまり使われないスケールを使ってる。例えば、クロマチック(半音階)はロックではそんなに出てこない。基本的にロックやと、メジャースケールか、マイナースケール、他はペンタトニックスケールくらい。こういうのは、ギターのフレットで言えば、 5・7・8とか5・7・9の音なんよ。隣り合わせか1個空きくらいの指使いをする。

それに対してクロマチックは?

A.1・2・3・4とか5・6・7・8と全音使うね。楽器として使える音を全部使うっていうこと。その分、運動量も増えるし、普段ロックとかポップスを中心に弾いてる人にとっては不慣れな指使いになるし、音の扱いも難しくなる。ちなみに演奏だけじゃなくて、作曲面でも難しくなるからね。

では、ロックでは使われないスケールをあえて使う意味は何でしょうか?

A.ロックで使われるスケールは主にメロディアスな音階。それに比べて、クロマチックやと、難しくなる代わりに、ひと味違う特殊な雰囲気を出せる。このへんは実際に聴いてもらうのが一番かな。

使うスケールの難しさが、Joe Passの難しさの理由ということですね?

A.あと、さっきの例は単音の話やけど、コードワークになっても、難しいところがあって、テンションコードっていうのが多用されてる。テンションコードっていうのは、複雑なコードなんよ。しかも、Joe Passはコードのバッキングもリードも、一人で両方、1本のギターで弾くから。コードワークに行ったり、リードに行ったりを繰り返すのは大変やし、そんな中でもリズムキープもしないといけない。これが難しい。タイム感が狂ってくる。

リズム隊(ドラムとベース)がいても、リズムの問題があるのでしょうか?

A.Joe Passの代表的な『Virtuoso』っていうシリーズを聴いてみて。リズム隊いないから。アルバム通して、完全にギター1本だけなんよ。 ギター1本だけやから、生々しいし、緊張感凄いよ。

聴いてみます。ちなみに、 Joe Passは初めどういうきっかけで知ったんでしょうか?

A.二十歳過ぎの頃、アメリカに行ってた時期に、一緒に住んでたルームメイトのサトウさんに教えてもらったのが最初。でもその時はロックイケイケやったし、サトウさんのこともそんなに好きじゃなかったから、抵抗があって(笑)聴かなかったよね。で、日本に帰ってきてから、レコード屋でCD買って、こっそり聴いたら、めちゃくちゃ素晴らしいやんと。当時、とにかくギターを追及しようと思ってたから、本屋行って楽譜も買ってきて、でも、 Joe Passはコピーできんかったね。まあ、人生の課題やね。

Joe Passは今でも聴きますか?

A.聴くよ。寝る前にかけることが多いかな。心地良さもあるし、アルバム通してギター1本だから途中から退屈になる部分もあるからね(笑)寝る前のクールダウン用にかけてるね。

<編集後記>

Hisaについては、彼の過去について書かれた小説がありますので、お読みいただければ幸いです。

また、Hisaが作曲したロック曲のサンプル音源もありますので、ぜひお聴きください!

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