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理不尽さという確かな価値

極上のフィンランドサウナ要するラクーアの隣の東京ドームで今年の1/4、ついに念願の東京ドーム大会を生観戦できた。鷹木vsオカダ、白デスペvs高橋ヒロムはじめ魅力的なカード満載であったが、最も印象に残ったのはNEVERでのHOUSE OF TORTUREの勝利。

ここまで徹底的に理不尽な勝ち方で、この広いドームの隅々にまで、理不尽さ、不愉快さをしっかりと行き渡らせての勝利。椅子や鉄柵、急所、そしてセコンドの介入などおよそルール無視のラフファイトを繰り広げながらも、新日本プロレスの公式記録として確かにこの日も勝利を収める。ルールを守るだけの良い子ちゃんな日本社会になにか一石を投じているような、ひょっとしたらこちらが正義なのではと考えさせれる試合で素晴らしかった。

そしてトップ写真は4/9のオンライン画像。IWGPジュニアのベルト戦、第91代チャンピオンのエル・デスペラード選手と、ヒール転向で絶好調のSHO。

新日本プロレスは各選手のルーティンとキャラ付け、そして軍団の定義を明確にしてブランディングを確立。もともとの真面目で繊細で軽やかなレスリングに加えてエンタメ要素がしっかり加わり、いまや英語でも配信されるワールドなプロレスブランドになった。

HOUSE OF TORTUREは直訳すると拷問の館。つまり最初からクリーンな試合などさらさらする気はなく、ラフな試合を宣言している軍団。椅子も急所も介入も、彼らにはデフォルトで備わった機能。そして理不尽さを見る人々に与えていく。

SHOはマーダーマシン。簡単に言うとトチ狂った奴というキャラだと思うが、彼の奇声の上げ方や、イッちゃってる目、大技食らった時の身体の捩りかたなど見事にこのキャラがハマっている。それでいて相手に入場を邪魔されるとレフリーに「オレの入場が邪魔されたんだ!」と妙に真面目なことをいって観客を笑いに包みながらも、椅子を振り回す正当な理由にしてしまうという猟奇ぶり。今一番面白い選手ではないだろうか。

そしてリングに上がると全選手必ずルーティンを徹底してサボらない。入場のテーマ曲と映像も各選手のキャラと見事にマッチ。オカダや棚橋はコーナーリングで客を魅了。内藤は例の腕を突き上げるポーズ。タイチは口パク。デスペはお辞儀。そしてSHOは弓を放つあの仕草。キャラの確立に見事に成功している。

その軍団カラーや選手のキャラクターが確立していることに加えて、タイトルマッチ前からタッグなどでその選手たちが毎回当たるようにしてストーリーを積み重ねるやり方も秀逸だ。だからこのタイトルマッチもファンでもなんとなくファイト内容が予想ができて、ファンとしては試合までが待ち遠しくてたまらなくなる。

このタイトルマッチならデスペは華麗なテクニックとどこか達観したような振る舞いで相手を凌駕する。SHOはひたすら反則を繰り返す。そこに新日本プロレスの煽りVTRも加わってストーリーはいよいよ完璧だ。

さー勝つのはどっちだ!となるように出来ている。これは会社も選手も素晴らしいと思う。やり切ってるなーって。

キャラクターが内外にハッキリ定義付けられているので選手もイキイキとのびのびと、楽しそうにやっている。とても魅力的なブランドだと思う。

この映像の試合もSHOはチャンピオンのデスペラードが入場途中をいきなり襲ってスタート。素晴らしいほどの理不尽スタートで、鉄柵やらコーナー支柱やら椅子などでタコ殴りにしていく。

ところがチャンピオンデスペラードも苦労しながらも反撃を重ねてSHOをねじ伏せようとする。反則にも屈しない、正々堂々たる強いチャンピオン像が、この対比の構造によって、ファンの心理に出来上がっていく。最後はどっちが勝ってもおかしくないカオスな展開ながら最後はデスペラードが勝利。それはそれは盛り上がるカードとなったのだ。

この日は軍団の介入が無かったのがSHOの敗因かなとか。そんな風にも思う。HOUSE OF TORTUREやSHOのファンならさらなる悪巧みを求めてより一層軍団にも選手個人にも明確なキャラクターが根付く。まさにファンの獲得だ。

そのチーム、その個人の価値を明確にして世に伝える。新日本プロレスのブランディングに天晴れ。素晴らしい仕事されていると思う。

理不尽という確かな価値。
学ばせてもらった。

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