若者のスベーテ
学生の頃、卒展会場の下見に行った。そこは市内のアートギャラリーで、駅からは徒歩10分くらいの場所だった。
下見の時には他の展示が開かれており、壺やら勲章のバッヂやら、写真や絵や掛け軸などがずらりと並んでいた。客は誰一人いなかったが、すこし興味をそそる空間だったので、入ってみることにした。
恐る恐る展示室に入り、正直ガラクタに見える骨董品たちをフーンと眺めているとコレクションの主であろうお爺さんが話しかけてきた。よくある流れである。よしきた、これも一期一会、と思い話を聞く。
お爺さんは昔テレビマンだったらしい。そこで有名人や業界人からもらったり自分で収集したり描いたりした品々を展示しているとのことだった。
テレビマンが一体テレビの何の仕事なのかは分からないが、有名俳優と仕事をしたことや、政治家と会食をしたこと、仕事で大変だったことを自慢を交えて話してくれた。
さまざまなことを経験してきたお爺さんの話。20やそこらの若者による相槌。その空間はそれだけで(こちらの同意なく)、さながら小宇宙のように完璧だった。
そして、お爺さんの話はいよいよ佳境、「若者へのエール」のパートにさしかかる。
「お前はこれから嫌な仕事もするだろう。介護とかな、福祉に携わる人には切っても切れない問題だからな。でも、辛い仕事の時こそ、こう思え。『自分は役者で、今この役をやっているだけだ』と。俺は昔役者でもあったんだ。そうしたらなんでもできるもんだ。介護もな。頑張りなさい。」
自分は介護をする仕事に就くとは言っていないし彼が役者だった話も聞いていなかったが、良い話だったように思う。いつかこの話を大変な時に思い出すかなと思い、ははあ、大変参考になりました、どうもありがとうございましたと仰々しめの挨拶をしてその場を後にした。
「俺は来月もおんなじのをやるからまた来なよ」
毎月同じのやってるんかい
ーーー日記ーーー
毎日4時に寝て12時に起きる生活だったため、今日のように朝9時からシフトが入っているとあからさまにしんどい。午前中はいつもよりダンマリしてしまった。このままだとまた陰気なキャラ認定されてしまう。まあいいけど
長丁場なバイトだしたまにはいいだろう、と昼食をはなまるうどんで食べると途端に元気が出てきた。自分は思ったより簡単な設計でできているのかもしれない。
バイト先にいる人の手首に傷があって、アッと思ってしまった。ラーメン屋でバイトしてた頃にも似た境遇の人がいたな。元気ならいい。