3年の暑い夏の夜と赤いストラトキャスターとの関係性について
大学3年の夏休みが始まろうとしていたある日、バイト上がりの僕は、理学部で同級だった後藤君の下宿でゴロゴロしていた。テレビでは Live Aid の映像が流れていた。
エアコンのない暑い部屋でビールを飲みながら見ていると、エルビス・コステロがメイプルネックの赤いストラトを持ってひとりでステージに上がってきた。そして、ギターをアンプにつなぐと、
「イングランド民謡を歌うよ」
と、ギターを弾き始めた。
All you need is love だった。
コステロが「All you need is love」と歌うと、ウェンブリーの7万人はそれに続けて「パッパラララ」とあの有名なホーンセクションのフレーズを一斉に口ずさんだ。
「Love, love, love... 」
なぜか涙が出た。後藤君も泣いていた。
コステロは歌い終えるとアッサリと引き上げて行き、僕と後藤君は暑い夏の部屋に放り出されて茫然としていた。
ウェンブリーの大歓声が静まると、外からセミの声が聴こえてきた。扇風機は窓から入ってくる湿気を帯びた暑い空気をただかき混ぜていた。
僕等の大学3年の夏休みは、そんな風に始まろうとしていた。
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僕が赤のストラトにいまだに惹かれるのも、この原体験があるからだと思う。
この時はまさかその後、赤のストラトを3本も買うことになるとは夢にも思ってなかったけどね(笑)。
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(写真は本文と関係ない場所で撮った写真です。銀塩モノクロフィルムならではの写真。自家現像。なぜかデジカメではこうならない。なんでだろうな。)