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『ヘタな人生論より徒然草』荻野文子 を読んで


サブタイトルが『賢者の知恵が身につく〝大人の古典〟』

予備校の古典講師の方が書かれたということで、受講生に飽きさせないような工夫が随所に見受けられます。

ご自身が学生の頃には、『徒然草』に良い印象を持っていなかったということで、〝大人になってからの認識変化〟のくだりも面白かったです。



解説者の経験や考えによっていろんな解釈があるのだなぁと感心した。

但し、強ひて智を求め、賢を願ふ人のために言はば、智恵出でては偽りあり。才能は煩悩の増長せるなり。伝へて聞き、学びて知るは、まことの智にあらず。
(徒然草 第38段一部)

この部分を、

私たちが知っていることなど、すべて「人からの伝聞」であり「先人をまねた学識」にすぎない。自らの知恵で考えだしたことなどひとつもないのである。
(『人生は一日として思いどおりにならない』より)

この解釈には唸った……

たしかに、インプットしただけでは知恵を使ったことにならない。
なんらかの〝自らの知恵〟を加えて、アウトプットしなければ『真の知恵』とはいえないんだな。

……と、執筆活動に燃えるのであった。



あと、ご自身の経験談として紹介されているのが、徒然草第189段の紹介で、書籍出版にいたった〝不確実〟というお話は、私が好きな

   人間万事塞翁が馬

に通ずるところがあって良かった。


ただ、体制側に対してかなり言いたいことがありそうな例示もあるんですが、兼好法師に言わせれば「政府に期待しすぎ」なんじゃない? と感じました。

自分の利益のために企業と癒着して賄賂を受け取る族議員、天下り先から法外な給与や退職金を取って特殊法人を財源不足に追いやった元高級官僚たち、派閥争いに夢中で国政の大道を見失った政党政治。日本の政治家は、揃いも揃って「勝手気ままなド素人」の集団である。
(『政治家の意識と目線で私たちの暮らしは決まる』より)

と手厳しい。

17年前に書かれた内容だけど、今でもそのまま……(以下自粛)


総じて、個性的な解説でご自身の体験談なども楽しいエピソードが多く、『徒然草の解説本』としても、『人生論』としても、『読み物』としても面白かったです。


(内容とは全然関係ないけど、この方〝ページ数稼ぎ〟を一切していない。
 章の終わりも最終行まで書いてて、しかもマス目一杯!
 『空白のマス目率』ってのがあったら、凄い記録だしそう)


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