見上げた空にあるもの
最近、怖い夢を見る。
幽霊が出るとか、誰かが殺されるとかそういうものではなく、ただ自分が誰にも必要とされていないと感じたり孤独で押しつぶされそうな夢を見る。
それはあまりにもリアルで、実際にそういう出来事があったかのようで自分の想像力には関心させられる。学生時代に似たような苦しさを味わったが、まさか夢でもう一度体験させられるとは思わなかった。
幽霊とかゾンビとかあまり現実的ではない夢はふっと忘れられるのだけれど、過去にあったトラウマとか苦しかった思い出とかの夢は妙に生々しくてリアルだから、起きた後も嫌な感じが残っていて、その時に感じた感情も本当は自分が感じたくない感情で。
苦しくて、苦しくて、やっと目が覚めても苦しさが続く。後味が悪い夢。良かったことは、あれが現実ではないことだけだった。
明け方の空がとても綺麗な事を知った。
太陽がまだ顔をだしていなくて、夜とは違った美しさをもつ時間。
ほんのり闇を含んだ空に、太陽の光が混ざる。それは緑色を少しだけ含んだ深い青色で、星などは一切見えない。深い青色だけが空一面に広がっていて、この世の終わりかと思うほど綺麗で、少し怖くもあった。
まだ鳥たちも眠っていて、街頭が眩しいくらいに光っている。
ベランダから見上げる空と吸い込む空気には、車の騒音や工事の音、人々の生活の音、自分の呼吸でさえ消えてしまうようだった。
少し冷えた空気を吸い込んで吐くと、体の中にあった毒のようなものが一気に抜けた気がした。肺の中までひんやりした空気が入って、眠れなかった私の体はさらに覚醒した。
世界で唯一、この空だけが自分の味方のような気がして、自分も空に向かってふんわり浮かんでいるような感覚になる。
言葉はいらない。ただ、そこにいてくれるだけでいい。
今、この空を見ている人はどれくらいいるだろうかと考え、どこまでも綺麗で吸い込まれそうな空を誰かと分かち合いたいと思った。
空の色はどこまでも深い青色で、不気味な色をしていた。でも、その色がたまらなく好きで、どんどん白んでいく空を名残惜しく見つめていた。