採用広報とは?|採用広報TOBEマガジン #1
HR-TOBE Consultingのさつきです。人事・人材業の複業フリーランスとして2019年から個人事業主をしています。
企業の採用支援をする中で「採用広報」や「採用マーケティング」という言葉を耳にする機会が増えました。採用広報は大事だと分かっているものの、具体的な取り組み方がわからない方や、これから採用広報を強化したい方に向けて、役立つコンテンツを発信していきます。
採用広報とは?
採用広報とは、企業が新卒学生や中途社員、アルバイト・パート、派遣社員などの採用活動において、求職者に対して行う広報活動を指します。
採用広報に法的な定義はなく、その言葉の解釈は人によって異なります。経団連の資料では、採用活動における広報活動を次のように説明しています。
広報とPRの意味
採用広報を深く理解するため、広報の言葉の意味もおさらいしてみます。
広報とはPublic Relations(パブリック・リレーションズ)の訳語です。パブリック・リレーションズはPRと略すものの、「広報=PR」とは言い切れません。
広報は企業から一方的に行う情報発信であることに対し、PRは企業とステークホルダーの間の双方向コミュニケーションである点で異なります。PRの中に広報の概念があると理解すると良いでしょう。
採用広報が重視され始めた背景
採用広報が注目され始めた背景を、独自の見解をもとに説明します。
①採用活動が多様化&複雑化したため
ご存知の通り、日本は少子高齢化が加速し続け、企業の人手不足が社会課題となっています。採用の売り手市場が続き、有効求人倍率はリーマンショック後から右肩上がりです。
採用激化の背景を受け、求人広告や人材紹介といった従来型の採用ツールに加え、ダイレクトスカウトサービスや採用動画サービス、SNSを活用した採用手法、ミートアップと呼ばれる採用に特化したリアルイベントなど採用手法が多様化。
昔のように、フリーペーパーに求人広告を載せれば応募が集まる時代はとうに過ぎ、複数の採用手法を組み合わせて取り組む必要が出てきました。
多様な採用ツールの登場で、採用活動は便利になった反面、候補者とのタッチポイントが増えて管理が煩雑化。候補者も複数のツールやエージェントサービスを使いこなす必要があり、採用および転職活動が複雑化してきました。
この背景から「ただ求人広告を出すだけ」という一変通りの採用活動ではなく、早期から候補者と多数の接点を持って関係構築を行う採用広報が重要視されるようになったのです。
②デジタル化により情報の透明性が求められるため
社会のデジタル化によって企業情報の透明性が重視されるようになったのも、採用広報が必要な背景の1つです。
スマートフォンの普及率が9割を超え、さまざまな情報をいつでもどこでも得られる時代。SNSや口コミサイトも増え、個人は企業活動や商品/サービスのリアルで質の高い情報を求めるようになります。
「働いている人のリアルな様子を知りたい」という求職者の要望に応えるには、求人広告や企業ホームページの情報では不十分です。そこで必要となるのが、働く現場の情報をテキスト・画像・動画などさまざまな形で発信しコミュニケーションをとる採用広報となります。
③企業と求職者の関係性が変化したため
終身雇用制の崩壊、働き方改革の促進や副業解禁とともに、企業と求職者の関係性が変化したことも、採用広報が重要視される理由の1つです。
終身雇用制かつ新卒一括採用が主流の時代は、新卒入社した企業に一生勤めることが一般的でした。終身雇用制のもとでは、個人が主体的にキャリア形成をするというより、企業の指示に従って全国転勤や社内異動を行うトップダウン型マネジメントが主流。そのため、働く人々は1社に一生を捧げるスタンスとなり、企業と求職者のあいだに自然と力関係が発生しました。
しかし、少子高齢化やグローバル化、デジタル経済の発展に従い、政府も雇用の流動化(すなわち中途採用/転職)が経済活性化のキーとなると公言します。次第に終身雇用制は崩れ、転職や副業ブームが到来。さらに働き方改革で長時間労働の抑制を進める流れとなり、副業が実質的に解禁されます。
激しい社会変動の中で、従来の「企業に個人の一生を捧げ、企業に忠誠心をもって就職する」価値観は次第に消え、「企業と個人が対等の立場となり、個人も仕事やキャリアを主体的に選ぶ」時代へと変化を遂げました。
この働き方の多様化と社会経済情勢の変化で、企業が個人を選ぶ時代から、個人が企業を選ぶ時代になった以上、採用活動そのものをアップデートしなければなりません。そこで、注目されたのが採用広報というわけです。
採用広報に取組むメリット
続いて、採用広報に取組むことで得られる利点について、整理していきます。
①母集団形成を強化できる
1つ目のメリットは、採用広報によって母集団形成を強化できる点です。特に、今までは求人情報誌やハローワーク、掲載型の求人広告しか活用してこなかった企業には大きな変化が期待できるでしょう。
後の記事で説明しますが、採用広報では採用オウンドメディアや自社の採用サイト、SNSを活用することが多いです。採用広報を進めれば、自社独自の応募流入経路を増やすことが可能になるため、求職者とのタッチポイントが増加して母集団形成に寄与します。
②企業と求職者のミスマッチを減らせる
採用広報に取組む2つ目のメリットは、企業と求職者のミスマッチを減らせることです。
採用広報では、次のような幅広いテーマの情報を発信し続けます。そのため、求職者が応募する前/入社する前に得られる情報量が増え、自分と合っているかどうかを確かめやすくなるのです。
③採用コストを下げられる場合がある
採用広報にまったく取り組んでおらず、例えば人材紹介経由で何ポジションも採用したり、RPOや求人広告に多額のコストを使っていた企業であれば、採用コストを下げられる可能性は高いです。
実際に、エージェント頼りで独自の広報戦略をもっておらず、毎年数百万円の採用コストを費やしていて経営が苦しいと相談を受けたことが何度もあります。
採用広報も一定の制作コストがかさみますが、採用オウンドメディアであればコンテンツが積み上げ式で増えていくため、制作した情報コンテンツは企業の資産になるのは魅力です。
一定期間、愚直に採用広報に取り組んだ結果、indeedやエンゲージのような無料ツールと採用ブログだけで、応募数が10倍になった企業様もいらっしゃいます。
まとめ
採用広報とは、一時のブームやバズワードではなく、社会情勢の激しい変化の中で求められるようになった概念です。企業の採用活動において今後ますます採用広報が重要となる見立てですが、採用広報に特化したサービスや支援事業者がまだまだ少ないのが現状です。
日本の企業成長をHR分野から支援するために、今後も採用広報の基礎知識と現場で得たノウハウを発信していきます。採用広報を1から学びたい方や、自社の採用広報を強化したい皆さまはぜひ、本マガジン連載をご活用いただければ幸いです。
次回は、採用広報の具体的な取組み手法を紹介する予定です。更新をお待ちいただけたら嬉しいです。
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