全国水族館の旅【28】仙台うみの杜水族館
「でっかい水槽があって、きれいな魚がたくさんいて、可愛いペンギンがいて、学術性も高くて、イルカやアシカのショーをやってる大きな水族館はないのか?」という注文過多な質問を受けたことがあります(笑)。心配せずとも、水族館大国である日本には、上記条件を満たす施設がたくさんあります。
回答として、筆者は全国各地のいくつかの水族館を質問者に紹介しました。その中の1つに、学術性とエンターテインメント性を両立した東北地方の大型展示施設があります。
超人気! 東北屈指のグランド水族館!!
仙台うみの杜水族館の名を耳にされた方、そして来館された方もいらっしゃると思います。宮城県が誇る大型水族館であると同時に、仙台から容易にアクセスできる施設ということもあり、あらゆる地方の人々から強い人気を集めています。
最寄りの中野栄駅から徒歩で水族館へ向かうことも距離的に可能ですが、せっかくですので水族館のシャトルバスを利用しましょう。海の生き物がラッピングされたバスに乗ると、テンションがさらに高揚します。
シャトルバスの中でワクワクしているうちに、あっという間に水族館に到着。さすが人気の大型施設ということもあり、開館前から長い列ができています。
仙台うみの杜水族館の魅力は全国津々に伝わっており、リピーターはとても多いです。特別展示や様々なコンテンツとのコラボがたくさん催されているので、シーズンごとに新鮮な気分で楽しめます。今回もたくさん学んで、たくさん魅了されたいと思います。
学術性と夢に満ちあふれた「うみの杜」
魅力いっぱいの東北の海を学びに行こう
「東北の海=おいしい幸がいっぱい」と考える人は多いと思います。
大正解です! 宮城県の海の名物の1つがマボヤです。脊索動物と呼ばれる生き物の一種であり、東北の海にて盛んに養殖されています。本館のトップバッターは、マボヤの養殖場をイメージした展示水槽です。
次のエリアに進むと、広大な空間に出ます。豊かな三陸の海をイメージした大水槽の展示エリアです。
三陸には寒流と暖流がぶつかる「潮目」があるので、約800種類もの魚たちが集まってきます。人間にとって重要な漁場となっているだけでなく、たくさんの生命が出会う生存競争の舞台でもあるのです。
次は親潮に育まれた海洋生物たちの展示です。ちなみに、親潮とは日本列島の太平洋側を北から南に流れる海流です。豊富な栄養分を運んでくる寒流なので、「海の生き物を育てる親」という意味で親潮と名づけられました。海の流れは重要な生命の循環であると、本展示によって改めて理解することができます。
ところで皆様、東北のコンブを食べたご経験があるでしょうか。筆者は宮城県の港街にてコンブの酢の物を食べたことがあり、人生で食べたコンブの中で一番おいしかったです。
山からの栄養分が川の流れと共に注ぎ、宮城県の海はミネラルの豊かな環境となります。その豊穣の海域で育つ海藻によって、水の中に「森」が形成されます。海藻の森で暮らす生命たちを、次なる展示で覗いてみましょう。
不思議な生き物たちとの出会いは、さらに勢いを増していきます。三陸の海は世界3大漁場と呼ばれるほど豊かな海域です。つまり、世界に誇る多様性の高い海が東北にはあるのです。まだまだ続く海洋生物の大行進を楽しみ尽くしましょう。
東北地方には長い漁業の歴史がありますので、その歩みが海洋環境保全に対する意識の強さに現れていると思います。宮城県の人々の漁業や海との関係について深く知れば、東北の海洋環境への理解も強固になります。
ぜひとも、しっかり学びたいところです。
ここまでたくさんの海洋生物と出会ってきましたが、東北の幸で忘れてはならないのがマガキです。三陸の内湾では養殖業が盛んであり、代表的な水産物の1つがマガキです。自然災害によってマガキ養殖は何度も危機に立たされてきましたが、生産者の方々の努力で力強く立ち直ってきました。
次なる区画では、水族展示と詳細なキャプションによって、マガキの養殖場がどのようなものであるのかを構造的に知ることができます。我々の食卓に上がるマガキの生育過程、とても気になります。
生態学・水産学どちらの観点からも、東北の海洋環境はとても魅力的です。知れば知るほど関心が強まって、現地の海に行ってみたくなりますね。
命を守り育て、未来へと進む学術施設
本館には、魚の赤ちゃんの集まる「うみの杜幼稚園」があります。子イヌや子ネコが可愛いのは普遍の真理ですが、魚たちだって負けていません。ちっちゃくて愛嬌抜群のベビーフィッシュに萌えてください(笑)。
赤ちゃんたちが生まれ、育つ場所。その役割を自然界で果たすのは、海草アマモの群生地です。
生き物たちにとって産卵場所や隠れ家となり、そして餌場にもなるアマモ場。そこにどんな生命が暮らしているのか、生体展示で詳しく理解することができます。
次はアマモ場よりもさらに浅い水域ーー干潟へと向かってみましょう。干潟の展示水槽はオープンな構造となっており、上方から生き物たちを観察できます。目を凝らして、隠れている魚やカニを探してみてください。
次の展示エリアでは一気に、すさまじく水深が下がります。つまり深海です!
東北の海にも深海域が存在しており、三陸沖の日本海溝は水深7300 mにも達します。未知の生物の無数に暮らす地球最大のフロンティアを覗いてみましょう。
多くの水族館で絶滅危惧種の保全活動が行われています。宮城県内では28種の魚、8種の両生類が絶滅の危機に瀕しており、仙台うみの杜水族館では様々な保全対策がとられています。
次なる区画「うみの杜ラボ」は、水棲生物の保全についての展示エリアです。職員さんのお仕事風景も見られますので、とても多くの学があると思います。
自然環境と生物保全の学習ができるので、本館は学術施設としても素晴らしい場所だと思います。このエリアで得られた学びは大切にしていきたいと思いました。
ここで屋内展示にワンクッション入れて、屋外展示へと移ります。宮城県には清らかな淡水環境があり、多くの生命を育み、海に栄養を伝えています。海の源である山河の生き物たちは、本当に清廉で美しいです。
水と空のエンターテイナーが華麗に舞い踊る!
皆様、お待たせしました。いよいよ動物ショータイムのスタートです!
本館のショーは王道のスターだけでなく、来館者の度肝を抜く演者も登場します。最後の最後までギャラリーを大興奮させる驚異のパフォーマンス、まさに究極のエンターテインメントです。
超スーパーハイクオリティなショーを楽しんだら、さらに展示を歩み進めましょう。この先の海獣エリアでは、海洋哺乳類やペンギンといった人気者たちとの出会いが待っています。
特に、フンボルトペンギンへの餌やり体験は大人気。なお、餌やりは定員制で先着順となっていますので、希望する場合は早めに並んで整理券をゲットしましょう。
海獣エリアでいっぱい癒された後は、世界各地の海洋生物に会いに行きましょう。ショーのスタジアムのすぐ側の通路から屋内に入ると、全世界の海洋をテーマにした「世界のうみ」展示の観覧スタートです。展示生物種はとても多く、本記事で紹介しきれなかった子たちには、ぜひ現地にて会っていただきたいと思います。
グローバルな海洋生物との対面を終えると、優しく静かな闇の世界へ入ります。クラゲたちが舞う幻想的な空間「クラゲのいやし」エリアです。
可愛く美しい姿をしていながら、怖い毒を持つクラゲたち。妖しげな雰囲気に取り巻かれながら、彼らの生態を学んでいきましょう。
締めを飾るのは、屋外展示「うみの杜」ビーチ。ケープペンギンたちと間近で出会えるオープン構造の飼育場です。ビーチ内には憩いの場である砂浜コーナー、泳ぐ姿を見られる海コーナー、巣作りや育児の様子を拝める営巣コーナーが設けられており、ペンギンの行動をあらゆる角度から観察できます。
多様な水族展示を堪能できて、自然科学や水産学をたくさん勉強させてもらえて、大興奮の動物ショーも楽しめる仙台うみの杜水族館。まさに至れり尽くせりで、スーパー学術エンターテインメント施設と言うべきかもしれません。
ガチで生物学習をされたい方はもちろん、家族や友人とレジャーを思いきり楽しみたい方にも全力でオススメできる水族館です。
仙台うみの杜水族館 総合レビュー
所在地:宮城県仙台市宮城野区中野4-6
強み:東北の海洋環境・海と人の関係について総合的に学べる水族展示、水棲生物の研究調査や生物保全活動を伝える高度な学術性、王道を押さえつつ発展的なパフォーマンスを実現する圧巻の動物ショー
アクセス面:自家用車・レンタカー・公共交通機関、どの選択でもスムーズにアクセスできると思います。ただし、かなり人気の水族館ですので、土日祝に車で来館する場合は駐車場が混むリスクも想定しなければなりません。公共交通機関で訪れるなら、まずJR仙台駅から仙石線で中野栄駅へ向かいましょう。駅前から水族館行きのシャトルバスが出ており、あっという間に直行してくれます。
水棲生物の濃密な生態学習ができて生物マニアは大歓喜、大迫力のショーと多彩な生体展示に子供たちは大喜び。まさに一点の死角もないグランド水族館です。
一にも二にも筆者が特筆したいのは、生態学・水産学・保全学に関するハイレベルな学術性です。種々の生息環境や展示魚種の生態についての解説が充実しており、なおかつ東北地方の水産業の特性も説いてくれます。一次産業の展示解説の濃密さでは、全国指折りのクオリティだと思います。
これほど充実した学術性と生体展示に加え、ギャラリーを一瞬で虜にする驚き満載の動物ショー。海獣や鳥類の演技は神憑っており、本館のエンターテインメント性の高さは揺るぎないものであると思われます。一度来館したら、きっと誰もが仙台うみの杜水族館を大好きになることでしょう。
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