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星の王子さま~宮崎駿さんも魅せられた『かくしているから』~
サン・テグジュペリの「星の王子さま」の、みんなが知っているフレーズ
『たいせつなことはね、目に見えないんだよ』
サン・テグジュペリは、これを伝えたくて伝えたくて仕方がなかったんでしょう。
「星の王子さま」を読んでいると、くり返しくり返し、このメッセージに出会います。
大切なこの秘密を、王子さまに最初に教えてくれたのは、仲良しになった”キツネ”です。
「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」
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キツネは王子さまに、『仲良くなる』とはどういうことかを教えてくれます。
「もし、あんたが、おれと仲よくしてくれたら、おれは、お日さまにあたったような気もちになって、暮らしてゆけるんだ。足音だって、きょうまできいてきたのとは、ちがったのがきけるんだ。ほかの足音がすると、おれは、穴の中にすっこんでしまう。でも、あんたの足音がすると、おれは、音楽でもきいている気もちになって、穴の外へはいだすだろうね。それから、あれ、見なさい。あの向こうに見える麦ばたけはどうだね。おれは、パンなんて食やしない。麦なんて、なんにもなりゃしない。それどころか、おれはあれを見ると、気がふさぐんだ。だけど、あんたのその金色の髪は美しいなあ。あんたがおれと仲良くしてくれたら、おれにゃ、そいつが、すばらしいものに見えるだろう。金色の麦を見ると、あんたを思い出すだろうな。それに、麦を吹く風の音も、おれにゃうれしいだろうな…」
王子さまの小さな星に、どこからか種が風に飛ばされてきて芽吹いたバラの花がありました。
本当に美しいバラでしたが、とてもワガママで、王子さまに世話ばかりかけ、いじわるを言います。
それで王子さまは苦しくなって、故郷の星から逃げ出してしまったのです。
王子さまは、キツネとの出会いで、故郷に残してきたバラの花が、自分にとってかけがえのない存在であったことに気づきます。
「だれかが、なん百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花がすきだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけで、しあわせになれるんだ」
「星の王子さま」の主人公は”ぼく”。
”ぼく”はサン・テグジュペリ自身です。
”ぼく”はパイロットで、飛行機が故障してサハラ砂漠に不時着したところ、”王子さま”に出会います。この本の中心となっているのは、王子さまが”ぼく”に語って聞かせてくれた、自分のこれまでの物語です。
王子さまは”ぼく”に言います。
「星があんなに美しいのも、目に見えない花が一つあるからなんだよ…」
「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ…」
これ、どこかで聞いたことありませんか?
宮崎駿さんは、サン=テグジュペリの熱心な愛読者として知られています。
二人とも飛行機が大好きで、通じ合うものがあるんでしょうね。
「天空の城ラピュタ」の主題歌「君をのせて」が、この王子さまの言葉から生まれたのは間違いありません。
「あの地平線 輝くのは どこかに君をかくしているから
たくさんの灯が なつかしいのは あのどれか1つに君がいるから」
王子さまが地球にやってきて一年がたち、王子さまの故郷の星がふたたび頭上に輝きました。
そこで、王子さまは、バラのいる星へ帰ることを決心し、”ぼく”と別れます。
別れぎわ、王子さまは、また言います。
「夜になったら、星をながめておくれよ。ぼくんちは、とてもちっぽけだから、どこにぼくの星があるのか、きみに見せるわけにはいかないんだ。だけど、そのほうがいいよ。きみは、ぼくの星を、星のうちの、どれか一つだと思ってながめるからね。すると、きみは、どの星も、ながめるのがすきになるよ。星がみんな、きみの友だちになるわけさ」
「ぼくは、あの星のなかの一つに住むんだ。その一つの星のなかで笑うんだ。だから、きみが夜、空をながめたら、星がみんな笑っているように見えるだろう」
この世界にある誰かひとり、何か一つを愛するだけで、この世界は輝いてみえてくるんです。
この作品は、サン・テグジュペリが、地中海海戦で飛行機に乗ったまま消息を絶つ前年に、アメリカで出版されました。
母国フランスでは、消息を絶った翌年に。
彼のメッセージは、こんなにも長く、広く、私たちの心を、世界を、照らして続けてくれています。