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柿酢をつくろう①【発酵・醸造の基礎を知り家庭で安全につくる簡単酢】

保存食をつくろう!

柿がたくさんとれる

私が住む田舎には柿の木がたくさん植えてあります。

それも色んな種類の柿が植えてあります。

渋柿(しぶがき)はそのまま食べると渋くて食べられないのですが、ゼリー状になるまで超完熟させてじゅるじゅると食べるのも美味しいですし、皮を剥いて紐に括って吊るし柿(干し柿)にされることも多いですね。

柿の実が熟れる時期になると、一気に柿がとれて、食べきれないとご近所さんから沢山頂くこともあります。

昨秋に2~3kgくらいの熟して柔らかくなった渋柿を頂いたので、柿酢を作ってみました。

田舎にはこんな、食べきれない柿を無駄にしないため、保存したり加工したりする素晴らしい知恵が色々あるんだなと感じます。

ということで、柿酢をつくる過程をご紹介したいと思います。

まずは今回の記事で、発酵・醸造についてご紹介をして、次回の記事で作り方をご紹介したいと思います!

醸造は家庭でできる!?

お酢は家で安全に作れるのか?

でも、生の柿を何か月も放置して発酵・熟成させるなんて、素人がちゃんとできる???

一歩間違えたら、身体によくないカビが生えちゃったり、ただ腐敗しちゃうだけになったりしない???

そんな心配や不安もありますよね。ということで、身体をはって実験した結果をお伝えしたいと思います。

発酵とは?

カビが食品に起こす変化

私は発酵食品がとても好きで、主には糀を取り入れた料理を日常的に取り入れています。

この酵素がたんぱく質を分解してアミノ酸という旨味をつくりだしたり、でんぷんを分解してブドウ糖という甘みをつくりだします。

私たちは、毎日のようにカビを食べているってことです。

有用なカビを利用する

カビの中には毒を発生させたりするものもありますが、人間にとって有用なものもたくさんあるのです。

そういう有用なカビを食品に生やして、微生物に委ねてその食品をおいしくしてもらう。

それを私たちは発酵と呼んでいます。

これは私の理屈ですが、悪いカビが増殖する暇も与えずいいカビを増やしてしまえばいい。

家庭でつくれないということはないんですよね。

醸造について

カビが生きやすい日本

家庭で発酵食品をつくることはできます。

でも、菌にはそれぞれが生きやすい(繁殖しやすい)環境があります。

人間がやるのは最低限、その環境を整えるということだけ。

日本の風土は湿度が多く、カビにとっては比較的生きやすい環境といえます。

こんな好適環境に恵まれているなんて、発酵と仲良くなるしかないですね。

醸造とは?

発酵を利用する食品生産活動の主なものとして、「醸造」という言葉について書いておきたいと思います。

醸造は、微生物によって食物を分解して別の食品に変化するというのを、人工的に環境を整えて起こすということです。

イメージ的には、日本酒などのお酒づくり、醤油・味噌づくりなどに使われることが多いですね。

お酢をつくる工程も「醸造」と呼ばれています。

お酢ができる過程で起こっていること

酵母がアルコールをつくり、酢酸菌がお酢をつくる

では、一般的にお酢はどうやってできているのでしょうか。

もともとお酢ができた起源というのは、お酒を放置していたら自然にできていたのが最初だといわれているんです。

例えば・・・

穀物・果実 → 放置しているあいだに発酵が起こってアルコールが発生する → 酢酸菌がアルコールを分解して酸を発生させる

有名で具体例でいうと…

ぶどう → 放置している間に発酵が起こってワインができる → さらに放置して酢酸菌がアルコールを分解してワインビネガーができる

という反応が起こっているということです。

つまり、お酢というのはお酒の二次的な副産物なんです。

そして、お酒ができるときに活躍する酵母は自然界に普通にいる菌ですし、お酢ができるときに活躍する酢酸菌も空気中にいたり果実に普通についている菌なんです。

果実を収穫した時点で発酵する準備はもう整っているなんて、有難いことです。

https://www.hakko-blend.com/study/b_04.html

↑詳しい発酵のおはなしはこんなサイトもありますので参考にしてみてください。

発酵の世界はとっても複雑で奥が深いです。

ナタデココは酢酸菌がつくりだす!?

ちょっと余談ですが…実は今回、柿酢を作る過程でナタデココ的なものができました。

実は、ナタデココというのは、お酢をつくりだす酢酸菌の一種であるナタ菌という菌がつくりだす副産物なんです。

(昔流行した紅茶キノコもこれに近いものですね)

(私は昔、ナタデココという植物があるものと信じて疑っていませんでした。だってパッケージにココナッツの写真が大きくプリントしてあるじゃないですか!!!真実を知った時の衝撃といったら…汗)

今回できたナタデココ的なものは、相当酸っぱいと思ったので、茹でたり水にさらしたりして酸を抜いて味見してみましたが、それでも酸っぱさが抜けきらず、食べられる段階にまでは処理できませんでした・・・。

ということでしたので、どうしても食べたいんだという情熱のある方は頑張って酸を抜いてみてください。

いつか私再チャレンジしてみようかなと考え中です。

雑菌をシャットアウトするナタデココ!

実はこの酢酸菌がつくりだすナタデココ的なセルロースゲル膜がとても重要な働きをしているということもお伝えしておきます。

ナタデココは、お酢の水面にぴったり蓋をするように幕をはります。

この膜ができていることが、酢酸菌がしっかり働いているときに目視で確認できる証拠のひとつでもあります。

このゲル膜は酢酸菌が活発に働いてお酢が生産されればされるほど、厚みが増していくんです。

最初はうっすらとした半透明な膜だったものが、お酢が完成に近づくと、まさにあのナタデココ的な厚みになっていくんです。

ですから、お酢づくりのインジケーターとしてもナタデココは機能してくれます。

そして(たぶん)最大の役割は、その膜で雑菌をシャットアウトするということ。

柿酢をつくるのはとても簡単なのですが、その過程で唯一(?)気をつかうこと……それが雑菌との攻防です。

普通に柿を放置していたらカビが生えて腐敗してしまって終わりですよね。

酵母菌以外のカビ菌などが勢力を増してしまうと、酵母菌がアルコールや炭酸ガスを発生させる前に、腐敗してしまいます。

こうなると困りますので、柿酢醸造家界隈では、あやしいカビは取り除いたりすることもあるようです。

ひとたびアルコールや炭酸ガスがしっかり発生してしまえば、過酷な環境下で元気に生きられるのは酢酸菌くらいだと思うので、雑菌が淘汰された結果うまくお酢ができるんだと思うのです。

確かにこのゲル膜ができてからは、驚くほど瓶の様子が静かでした。

強い酸性環境で繁殖できる雑菌がほとんどいないということが大きいと思うのですが、もうひとつ、ゲル膜が空気(酸素)を完全にシャットアウトしてしてしまうことも酢酸菌にとって都合の良い影響があるのかな…と、観察していてなんとなく思いました。

柿酢の自家醸造の手順

前置きの基礎知識が長くなりましたが、ここから手順をサクッと説明していきます。

ちなみに、今回の柿酢の醸造は昨年行ったものですのでご注意ください。

正直、本当に簡単なので手順を書くのも申し訳ないくらいです。

準備と仕込み

おススメの容器

まずは、柿が全部入るくらいの大きい瓶を用意します。

プラスチックなどは、長期間、強い酸に晒すことになるのであまりよくないかなと思います。

あとは、ガラスだと匂いがしみついたりということがまずないので、瓶を別の用途で使いたいときなどは安心です。

今回私が用意したのは、セラーメイトさんの取っ手付き4L瓶です。

中身をパンパンに詰めるとかなりの重量になって、取っ手のない瓶だと掴んで場所を移動させるのも大変です。

このサイズの瓶だと、容器だけで1.7Kgくらいあります。

大きめの容量の瓶を選ばれる方は取っ手付きをおススメします。

4Lの容量の瓶いっぱいに詰めても、できる柿酢の量は1~1,5Lくらいになるかと思います。

用意する柿の量と、作りたい柿酢の量にあわせて、瓶を用意していただくとよいかと思います。

個人的には、秋~春にかけては柿酢を作り、夏には梅干しや梅酒をつくる。そんな瓶の使い方が効率的かなと思っています。

容器の消毒

瓶は洗って、焼酎などで内側を拭いておくと安心だと思います。

柿をカットする

次は柿をカットします。

柿は熟していて、手で持って崩れるくらいの柔らかさのものだと最高に適しています。

柿酢をつくるとき、よろしくないカビが大量に増殖しやすく気を付けなければならないのが初期の段階です。

固形の柿の発酵が始まり液状になってくるまでの初期段階をどれだけ短くするか、というのが成功のカギになります。

ですので、なるべく熟してとろけそうなものを使用するか、あるいは細かくカットして変化を早めるか、どちらかの方法をとるのがおススメです。

あとポイントとして、柿は洗わずに使用します。

柿の表面に付着した菌を発酵に利用するためです。

汚れが気になる場合は軽くふき取る程度にするか、水でこすらずさっと流す程度にしておいてください。

柿を瓶に詰める

カットした柿を瓶に詰めていきます。

今回使用した渋柿はまだあまり熟していなかったのでもう少し小さくしてもよかったかもしれません。

これで仕込み完了です。驚くほど簡単です。

水分も添加せず、完成まで見守るのみです。

この瓶はパッキンのある蓋付きなのですが、発酵過程で発生するガスにより破裂しないように必ず蓋は開けた状態で発酵させます。

ただ、発酵が進んでくるとアルコール臭がしたりして、コバエが寄ってきたりしますので、キッチンペーパーや布などをかぶせてゴムなどでとめておくようにしてください。

発酵過程

8日後

仕込んでから、8日後の様子です。

この段階では、発酵が進んでいる様子が見てとれるかというとかなり疑問。

ただ、水分はかなり出てきているので発酵環境は整ってきています。

8日後のものを上から見た写真が二枚目。

ちょっと衝撃的。

こうなった時点で「もうだめじゃない?」と思うかもしれませんが、諦めてはいけません。

2か月後

仕込んでから、ちょうど2か月ほどたったところでこんな様子になりました。

こうしてみると、最初に瓶の8分目くらいまで柿を詰めて仕込んだのに、かさは瓶の半分くらいに落ち着いてきています。

蓋で密封せずに、キッチンペーパーと輪ゴムで瓶の上部をカバーしていたので、水分が蒸発したことも多少影響があるかと思います。

この段階に至ると、瓶の中にカビのようなものが全く発生する様子はありません。

そして、変化がある部分といえば、上部のナタデココ的なゲル膜がどんどん肥厚していくことくらい。

どんどん分厚く成長していくゲル膜を見ていて、これはキリがない…と思ったのでここで完成させることにしました。

仕上がり

ゲル膜を取り除く

ゲル膜に金属製のお玉を刺してみようとしたのですが歯が立ちません。

ナタデココ的ゲル膜は放置していればどこまでも分厚くなるようです。

ただ、そのまま放置していると段々とお酢の味が落ちていく…という噂も耳にしたことがあります。

このあたりは長期間保存して味見をしながら実験をしていこうかと思うのですが…

毎年つくるとして冷蔵保存で1年弱だったら賞味できないほどの変化が起きることもないだろう!と勝手に予想しています。

というのも、瓶に移し替えて冷蔵保存を始めてからは、新たなゲル膜はあまり成長しなくなったのです。

冷蔵環境下では酢酸菌の活動が抑えられているのではないかと思います。
(あるいは餌となるアルコールがすべて消費されてなくなったのか…)

実際のところはよくわからないのですが、とにかく今の状態で激しい変化は起こっていないようです。

多少の膜ができてもそこをよけて使用すればいいかと考え、私は加熱処理をして発酵を止める等の工程は行っていません。

柿の実を取り出す

さて、副産物のゲル膜を取り除いたら、次は柿の果実部分をザルでこしていきます。

お酢の酸が強いので、下に受けたボウルは腐食を起こさないようにガラス製です。

果実の様子はこんな感じです。

私は今回は果実は潰して絞ったりはしませんでしたが、ゴムベラなどで潰しながらこす方もいらっしゃるようです。

自然に水分がこされていくのを、丸1日ほど放置して待ってみて、出てきた柿酢の様子がこんな感じ。

柿の実を潰して絞ったりはしていないのですが、それでも結構、白濁しています。

沈殿とろ過

出てきた柿酢をコーヒーフィルターでこしてみると少し透明度が上がってきました。

これで完成になります。

柿酢の味

出来上がったお酢で、酢豚チキン南蛮の甘酢だれを作ってみましたが、めちゃくちゃ美味しかったです。

(まだ加熱料理にしか使ったことがないのですが。)

今まで食べたお酢の中では断トツで酸味がマイルドで角がなく、とてもフルーティーコクが深い

ツンツンしたお酢感を出したいときには、市販の穀物酢をブレンドしたりするとバランスがいいかと思います。

また、柿酢を使った簡単なお料理もいつかレポートしていきたいと思います!

すぐ使い切ってしまいそうなので、次のシーズンはさらに沢山の柿を仕込みたいなと思っています。

柿がたくさん余っている方がいらっしゃったらぜひ仕込んでみてくださいね!!

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