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「稚拙で猥雑な戦争劇場」2

場面2/中東・ルバム・フセインの部屋

    2年後・中東ルバム国。
    ベルマーレに連れられて恐る恐るやってくる織部と明神。

ベルマ 「ニラタマ、ゴマーブラ」
明神  「織部さん、織部さんってば・・・織部さん」
織部  「何だようるさいなあ」
ベルマ 「ニラタマ」
明神  「すいません・・・やっぱり帰りません?」
織部  「帰るはずないでしょう」
明神  「だってやっぱり危ないですよ。絶対俺たち殺されちゃいますよ。 
     いくら日本の景気が悪いからってこんなとこまで来ることあるん
     です?社長の嫌がらせですよこんなの・・・それを真に受けちゃ
     って織部さんは・・・」
織部  「じゃあ帰りなさいよ・・・一人で」
明神  「一人で帰れるはずないじゃないっすか。本当にここで車なんて売
     れるんですか?いや、絶対に売れませんよ。俺たち殺されちゃい
     ますよ・・・ちょっと織部さん!」
ベルマ 「マルチャガマ」
織部  「え?ここで待ってろって」
ベルマ 「アカチャガマ、マルチャガマ、キパジャマ(去っていく)」
明神  「やばいやばいやばいやばい・・・織部さん、今しかないっすよ」
織部  「だから逃げたいなら一人で逃げればいいでしょ」
明神  「あ、いいんですね。俺逃げますよ、マジで。いいんですね。逃げ
     ますからね」
織部  「明神くん!君がついて行きたいって言ったんでしょ。僕は一人で
     行くって言ってたのに君が勝手についてきたんでしょ。せめて邪
     魔だけはしないで下さい」
明神  「絶対クルマなんか売れませんから。知りませんからね」
織部  「売れないと思うから売れないんです。売れると信じてみなさい
     よ」
明神  「僕はね、織部さんとは違うんです」
織部  「何が違うっていうんです」
明神  「僕は、織部さんみたいに鈍くないんです。繊細なんです」
織部  「どういう意味ですか?」

    突然鳴り響くファンファーレ!
    ベルマーレの後ろからやって来るのはルバム国の独裁者・フセイン
    総統閣下。

フセイン「ケツ、ビューティフル!」
織部  「ははー。フセイン閣下!ケ、ケツ、ビューティフル!(ひれ伏
     す)」
明神  「お、かわいい!」
フセイン「非礼ですね。ベルマーレ、コンビナート!」

    明神いきなりベルマーレに殴られる。

明神  「いってー!なんだてめ。やるか」

    フセイン、明神の足下に発砲する。

明神  「うわっ。うわっ。うわっ」
織部  「やめなさいって、この方はこの国の総統、フセイン閣下だよ(ひ
     れ伏せ!)」
明神  「ええー?」

    慌ててひれ伏す明神。

フセイン「日本人か。頭をあげなさい」
織部  「初めてお目にかかりますフセイン総統閣下。私、こういう者でご
     ざいます」
フセイン「カーショップヤマダ・・・中古自動車の販売ですか・・・なるほ
     ど」
明神  「あの、日本語がお上手ですね」
フセイン「当たり前です。我々は子どもの頃から日本語を学んでいるんです 
     よ」
明神  「え、そうなんですか」
フセイン「日本語を話す人種は世界でも少数ですから都合がいいんです」
織部  「で、どうーでしょうか。中古車と言ってもピンキリでございまし
     て。今ルバムは好景気と聞きまして。これを機に自動車を大量に
     買っていただくなんてこと」
フセイン「どんなクルマを扱っているのですか」
織部  「そりゃあもう、ベンツ、トヨタ、ニッサン、アメ車まで、日本車
     から外車まで幅広く取り揃えております」
フセイン「この国でアメリカのクルマに乗ってたらどうなると思いますか、
     答えなさい」
織部  「どうなる?と申しますと?」
フセイン「この国の市民は?アメリカを?」
織部  「嫌い・・・ですよね?」
フセイン「ということは?」
織部  「あ!その場で市民たちに滅茶苦茶に壊されちゃう」
フセイン「ではこの国で日本のクルマに乗ってたら?」
明神  「俺ですか?えーと、問題ないんじゃないっすか?」
フセイン「外れです」
織部  「日本も嫌われてるっていうことですか?」
フセイン「当たり前です。集団的自衛権だか何だか知りませんが、日本はア
     メリカの犬だと公然に発表したではないですか」
織部  「ああ、それってこの国でも報道されちゃってるんですね」
フセイン「人間として、地球に住む者として最も卑劣な国、それが日本で
     す。大国に隠れてコソコソコソコソと」
織部  「いやいやいや。別に私たちはあれに賛同してませんから」
フセイン「あなたたちの意見はどうでもいいんです。日本の総理大臣がそう
     言ってるのは事実です」
織部  「例え日本が卑劣であっても僕たちはこのルバムの皆さんを幸せに
     するためにこうしてはるばるやってきたのです。卑劣なんかじゃ
     ありません」
フセイン「それはここが好景気だからでしょう。ここなら車を買ってくれる
     と思ったからでしょう?しかし私たちはあなた方からクルマを買
     おうとは思っていません」
明神  「ホラやっぱりダメだった」
織部  「じゃあ何でわざわざあなたみたいな方が私たちに会ってくれたの
     です?」
フセイン「・・・この国に入ってくるのは大変だったでしょう?」
明神  「そりゃもう大変でしたよ。スパイと間違えられたり、警察には捕
     まっちゃうし」
フセイン「私は会ってみたかったんです。卑劣な日本のゴキブリに」
織部  「ゴキブリって。そのなんですか、集団的なんちゃらってのは」
フセイン「集団的自衛権」
織部  「その集団的なんちゃらってのは総理大臣とかその周りの偉そうな
     人たちが勝手に決めたことなんですって」
フセイン「でも、選挙をしたでしょう」
織部  「いやいやいや・・・僕はどこにも投票してませんから」
明神  「僕は維新の党に」
織部  「え?何で?」
明神  「あの橋下弁護士って行列のできる法律なんとかで面白かったじゃ
     ないですか」
織部  「あれは紳介の受け方が上手いから面白かっただけだろ」
フセイン「・・・あなたがたは心底一般人のようですね」
織部  「あの、もしよろしければクルマを改造してミサイル発射台とかに
     しませんか。オプション料金かかると思いますけど・・・安くで
     きるようにします」
フセイン「本当にそんなものができるんですか?」
織部  「いや、作ったことはないですけど。社に戻って相談してみます。
     私これでも営業の主任なんです。名刺を見てください。大丈夫で
     す。やらせます」
明神  「何バカなこと言ってるんですか。できるわけないでしょ。さ、帰
     りましょう」
織部  「バカ!もう少しで買ってくれそうなんだよ」
明神  「買ってくれるわけないじゃないですか」
織部  「わかってないなお前、こういう人はハートで訴えるんだよ。ハー
     トで」
フセイン「ちなみに、ミサイル搭載できるランドクルーザーはおいくらです
     か」
織部  「はいはい。そうですねえ。一度持ち帰って御見積りを作らせてい
     ただきます」
フセイン「一度お帰りになりますか」
織部  「ええ、日本に戻ったらすぐに連絡しますんで」
フセイン「日本にお戻りになると」
明神  「ええ。それが何か?」
フセイン「残念です。あなたがたは不法入国者ですよね」
織部  「不法?なんですか?」
フセイン「不法入国者!ご自身でも仰ってましたよね。ベルマーレ、カベド
     ン」
ベルマ 「キリノマシューコ」

    三人の兵士が織部と明神を銃で囲む。

フセイン「スクエア、ベルファーレ」
明神  「ちょっと!ちょっと!」
織部  「クルマ買ってくれるんですよね?」
明神  「押さないで。髪型が崩れちゃう」
織部  「見積りどうしたらいいんですか?ねえ?ねえ?」
フセイン「しばらく牢屋で休んでいてください」
明神  「ちょっと勘弁してくださいよー」

    ベルマーレを先頭に三人の兵士に連れて行かれる明神と織部。
    大きな爆撃音【ドドーン】が聞こえる。

フセイン「またミサイルか・・・バラクオバマ」

    エロメイドが来て

エロ  「フセイン閣下。お母様がお越しになりました」
フセイン「通しなさい」
エロ  「はい(行く)」

    フーセン婦人と踊りながら来るエロメイド。

フセイン「ママ!」
フーセン「あらー。懐かしい香り」
エロ  「これって、おしょうゆの臭いですかねえ」
フーセン「そうそう。おしょうゆ」
エロ  「お寿司」
フーセン「アジフライ」
エロ  「おひたし」
フーセン「とんかつ」
エロ  「てんぷら」
フーセン「とんかつ」
エロ  「フジヤマ」
フーセン「とんかつ、とんかつ・・・とんかつが食べたいわ」
フセイン「ママ、とんかつを食べたんですか?」
フーセン「食べてません。さては!日本人がここにいたのですね」
フセイン「そうです」
エロ  「閣下、とんかつ食べたんですか?」
フセイン「食べてません」
フーセン「あらいやだ。閣下一人でとんかつを?」
フセイン「食べてません。用件はなんですか?」
フーセン「先程、爆撃がありました」
フセイン「知ってます」
フーセン「知ってますですって!私の寝室が爆撃されたのですよ」
フセイン「マジすか」
エロ  「私も命からがらここへ来たというわけです」
フセイン「しょうゆの話どころじゃないじゃない」
フーセン「もう、いい加減アメリカの爆撃はやめてもらえないものかしら。
     私のワードローブが全部おじゃんになってしまって。もうー」
フセイン「服は新しいものをまた買いましょう」
エロ  「それにフーセン様ご愛用の自動車も破壊されてしまいました」
フーセン「私のアントニオが!」
エロ  「ええ、アントニオは原型を留めておりません」
フセイン「車も新しいものを買いましょう」
フーセン「私、アントニオじゃなくちゃイヤ」
フセイン「そうだママ、日本の車はどうですか?さっき丁度車屋が」
フーセン「イヤ。アントニオでなくちゃ」
エロ  「そもそもここは私たちの土地なのに、どうしてこんな目に遭わな
     くちゃいけないんですか?」
フセイン「イギリスがエルサレムをユダヤに勝手に渡してしまったから。私
     たちとの約束を反故にしてまで」
エロ  「やはりイギリスに攻撃をしましょう」
フセイン「今更イギリスを攻撃しても仕方ないです。あんな落ちぶれた国を
     陥落させても我々は何もプラスになりません。国際連合だか何だ
     か知りませんが、ハイエナのように戦場に現れるアメリカを打ち
     のめすしかないのです」
エロ  「アメリカを打ちのめす・・・」
フーセン「そんなことできないことはが分かってるじゃないの」
フセイン「せめてイスラエルとの和解さえ出来れば、政治も良いほうに進む
     のに」
フーセン「イスラエルとの和解もいいけど、私、今日絶対にお風呂に入りま
     すからね」
フセイン「風呂も壊れたんですか?」
エロ  「風呂桶ごとなくなってしまいました」
フセイン「ママ、ベルマーレの家なら風呂があるかもしれません。ベルマー
     レを!」
フーセン「イヤよ、あんなボロ屋」
エロ  「ポーランド、ポーランド、ベルマーレ」

    エロメイド、ベルマーレを呼ぶ。
    そこに逃げ込んでくる百合子。
    ベルマーレ、兵士たちも百合子を追う。
    逃げる百合子。ついにフーセンに捕らえられる。

フーセン「捕らえました」
フセイン「あなたは何者ですか?」
百合子 「・・・」
フセイン「何者かと聞いています」
百合子 「ボンジュール、ムッシュー」
フセイン「フランス人ではないみたいね」
フーセン「うーん・・・この匂い。とんかつ食べたくなる」
エロ  「お寿司が食べたい」
フセイン「あなた日本人ですね。わが母フーセンはしょうゆの匂いに敏感な
     んです。観念をしなさい」
フーセン「韓国人はキムチの匂い、アメリカ人はワキガの匂い。国が違えば
     匂いが違う」
フセイン「あなた、何しに来たんです?さっきの男たちの仲間ですか」
百合子 「私は国際協力隊として来ました。兵士ではありません。釈放を要
     求します」
フセイン「日本の国際協力隊には女性もいるんですか」
百合子 「兵隊ではないので男女問わず募集していました」
フセイン「兵士でもないのに何故こんな国家の中枢に入って来たんです?」
百合子 「分かりません。本来なら20人で行動をすることになっていたの
     ですが、爆撃から逃げるときに迷ってしまって・・・気がついた
     ら私一人だけになってしまったんです。助けてください。お願い
     します」
フセイン「あなた自分がどこに来たのかも分かってないみたいですね」
エロ  「調べておきましょう(と、百合子の顔写真を携帯で撮る)」
フーセン「あんた。どうやってここに来たの?」
百合子 「あっ!ママ!(フーセンに抱きつき)」
フーセン「ママ?」
百合子 「でもどうしてママがここに?私、死んじゃったの?それじゃ、こ
     こは三途の川?ママ、どうして死んじゃったの?ママ、ママ、あ
     んなにお酒ばっかり飲んでるから・・・」
フーセン「大丈夫よ。あなたも私も死んじゃいないわ。もう泣かないで」
フセイン「とりあえず落ち着くまで待ちましょう」
百合子 「すいません・・・」
フセイン「国際協力隊とは何をする部隊ですか、答えなさい」
百合子 「有事の際に派兵できるよう作られた部隊です」
フセイン「派兵?」
百合子 「いえ、憲法第9条は絶対不滅であるため、敵国に進軍することは
     許されていません」
フセイン「日本の憲法第9条は本当に美しいですね。第9条が遂行されてい
     る限り、日本の平和は約束されていたのに・・・集団的自衛権の
     決議は日本国土を危うくした、そうは思いませんか?」
百合子 「集団的自衛権は国連でも評価されています。これはアメリカの属
     国化した日本が国を取り戻すために必要な決議だと思います」
フセイン「日本が属国化していることを国民はちゃんと認めているようです
     ね」
フーセン「あら、総理大臣みたいなことを言うのねえ」
エロ  「(携帯を見ながら)ちょっと待ってください。あなたもしかして
     神田川百合子?」
百合子 「・・・」
フセイン「神田川?日本の総理大臣の娘の?」
エロ  「ピースフル百合子ってブログ書いてる」
百合子 「見ないで。そのブログは!」
エロ  「・・・どうして都知事っていうのはいっつも悪人顔なんだろ
     う?・・・そんなことより私のプリンス・進次郎さんと目が合っ
     たみたい、キャッ・・・ってなんじゃこのブログは」
百合子 「読み上げないで下さい」
フセイン「日本大使館経由で総理官邸に電話を繋いでください」
百合子 「やめて、パパには内緒なんだから」
フーセン「おお百合子ちゃん!パパには内緒なの?じゃあ閣下、電話しちゃ
     ダメよ」
フセイン「ママ、日本の総理大臣の娘よ?連絡しないわけにはいかないでし
     ょう」
フーセン「百合子ちゃん、ママがちゃんとパパに言ってあげるからね」
百合子 「ママ!」
フーセン「ママからパパに電話をします。繋いでちょうだい」
エロ  「はい」
フセイン「マスコミには決して漏らさないように」
エロ  「了解しております」

    フーセン、携帯電話を出して。
    エロの捌けた側から神田川、不二子、官僚たち登場。
    神田川総理が官僚に指示を出している。横に峰不二子。

神田川 「だから君たちはダメなんだ!ちゃんと人の気持ちに沿ったプラン
     を練らないと机上の空論になると言ってるんだ。これだから官僚
     は給料泥棒って言われるんだ。私から次官に連絡をしておく。戻
     りたまえ」
官僚  「失礼いたします(と去る)」
不二子 「ご苦労様です」
神田川 「不二子ちゃーん。この後のスケジュールはあ?」
不二子 「高崎市商工会との会談、その後ぐんまちゃんとの写真撮影、その
     後は」
神田川 「えー。不二子ちゃんタイムは?」
不二子 「今日の最後に入ってます」
神田川 「まーてーなーいー」
不二子 「しかし、すっかり元気になられましたね」
神田川 「不二子ちゃんのおかげだよー」
不二子 「奥様、本当にステキな方でした」
神田川 「うん。でも不二子ちゃんの方がステキだよー」
不二子 「もう!そんなこと言っちゃだめでしょ」
神田川 「不二子ちゃん」
不二子 「そうり」
神田川 「やだやだ。ためちゃんって呼んで」
不二子 「もう、ためちゃん」
神田川 「不二子ちゃん(肩を抱き寄せる)」
不二子 「だめよ。ためちゃん(逃げる)」
神田川 「不二子ちゃーん。いいじゃないのー」
不二子 「ダメ、ダメよ。ためちゃんたらー」
神田川 「不二子ちゃん、表に聞こえちゃうよ」

    電話が鳴る。

神田川 「ワーオ!(電話を促す)」
不二子 「ん、もう・・・(電話に出て)イエス、イエス、フロムルバー
     ム?オッケーホールドオン・・・総理、ルバム国から電話です」
神田川 「ルバム?中東の?ケツ・ビューティフル!」
フーセン「ケツ・ビューティフル、ミスター神田川。今何をしていました
     か?」
神田川 「何もしてませんよ。どちらさまでしょうか?」
フーセン「私はフーセンと申します。神田川総理ですか?」
神田川 「そうですが、ルバム国の方が何の用ですか」
フーセン「あなた、娘さんの悩み事を聞いてあげてますか?」
神田川 「何で娘の話が出てくるんです?」
フーセン「子育てを奥様に任せっきりだったんじゃないですか」
神田川 「だから何でルバム国の・・・何さん?」
フーセン「フーセンです」
神田川 「フーセンさんに娘の心配されなくちゃならないんです。その前に
     私は日本の総理大臣をしている神田川ですよ。いたずら電話なら
     切らせてもらう」
フーセン「ダメ!百合子ちゃんが悲しむよ」
神田川 「百合子のことは心配しないでくれ」
百合子 「パパ!」
神田川 「は?」
百合子 「私はパパと旅行に行ったこともない。一緒に笑ったこともない」
神田川 「百合子か?」
百合子 「大体私が今どこにいるかだって分かってないじゃない」
神田川 「どこって、お前、フランスに留学中だろう」
百合子 「私、パパに手紙を書いたのよ。読んでくれた?」
神田川 「お前からの手紙は全部秘書が読んでいる。私はそれをちゃんと全
     部伝えてもらっている」
百合子 「読んでないから知らないのよ」
神田川 「読む必要はない」
百合子 「国際協力隊に入隊したの」
神田川 「なんだと!」
百合子 「パパ、私やっぱり日本だけが平和なんてイヤ。世界が平和になっ
     て欲しいの」
神田川 「それとお前が国際協力隊に入隊するのと何の関係があるんだ?」
百合子 「パパご自慢の国際協力隊でしょ。世界のために日本が作った平和
     部隊でしょ」
神田川 「それはそうだが」
百合子 「フランス留学なんかよりよっぽど勉強になるわ」
神田川 「百合子・・・」
フセイン「子どもに苦労するのは万国共通のようですね」
神田川 「あなたは?」
フセイン「ルバム国の総統閣下、チンチンフセインです。ケツ・ビューティ
     フル」
神田川 「チンチンフセイン閣下・・・ケツ・ビューティフル」
フセイン「そんなわけで神田川総理、あなたの娘はわが国で軟禁させていた
     だくことにします」
神田川 「それは困る。すぐに解放していただきたい。百合子は一般市民
     だ」
フセイン「では、マスコミに拡散しましょうか?日本の総理大臣の娘、神田
     川百合子はルバム国にいると」
神田川 「それは・・・」
フセイン「困りますよね。こんなこと国際連合に知られたらアメリカに泥を
     塗ることに」
神田川 「一般市民は無条件に解放するのが国際ルールだ。フセイン閣下は
     そのルールを破るおつもりか」
フセイン「安心してください。秘密裏にことは進めましょう。その代わり日
     本の総理大臣のあなただ。できることはありますよね」
神田川 「アメリカを押さえることはできない。それはあなた方でやればい
     い」
フセイン「そんなことは求めていません。日本のマスコミでは2001年に
     アメリカで起こった『同時多発テロ』を大々的に報道したようで
     すが」
神田川 「事実を報道したまでだろう」
フセイン「では1999年にリビア、ルバムの一般市民たちを一ヶ月に渡り
     無差別に爆撃した『ルバム無差別爆撃』は日本のマスコミには一
     切報道がされていないと聞きます。日本だけじゃない。欧米諸国
     では一切なかったことになっていると聞きました」
神田川 「そんな事件は私は知らない」
フセイン「いや、あなたは知っています。この事件は国際連合を牛耳ったア
     メリカがもみ消したんです。そのことを日本政府が知らないとは
     言わせません」
神田川 「そんな事件は私は引き継いでいないが、それが事実だとしたらな
     んだ」
フセイン「『ルバム無差別爆撃』があったこと、そのときに何の落ち度もな
     い一般市民が2万人死んだことを日本のマスコミで大々的に報道
     してもらいましょう。『同時多発テロ』はその報復に過ぎなかっ
     たと」
神田川 「・・・確認させてくれ。それと娘の安全、それだけは約束してく
     れ」
フセイン「約束しましょう。但し、米国のミサイル攻撃があった時は約束で
     きませんが」
神田川 「分かった。オバマ大統領には頼んでおく」
フセイン「よかろう。では、ケツ・アリゲーター(電話を切る)」
神田川 「閣下、百合子の安全だけは・・・(切れている)」

    不二子、全てを分かっていて

不二子 「ルバムに行かれますか?」
神田川 「スケジュールはどうなっている?」
不二子 「ここ二週間は全て埋まっています。特に群馬の会合をもしキャン
     セルなさるなら覚悟が必要になるかと」
神田川 「そうか・・・とりあえずオバマ大統領と話をさせてくれ」
不二子 「かしこまりました」

    神田川と不二子アウト。
    暗転。

3へ続く


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