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オトワレストランで感動した。

宇都宮のフランス料理店のオトワレストランに行ってきました。今まで行ったレストランの中で最も良くて、感動してしまい、自分がずっと悩んで葛藤していたことに対する一つの回答を示されたようでした。
忘れないように以下に料理の感想と全体の記録をします。



メニューはこのような流れだった。メインの食材のみ記載されていて、想像が膨らんでワクワクする。

アミューズ ヤシオマスのムース

ヤシオマスのムース、北海道のいくら、タルト、シェフの家で摘んできた花とディル。

一口目からやられてしまった。ムースの味のクリアさの上にいくらがはじけて味が複雑になり、ディルがワンテンポ遅れて香る味わい。温度感込みでの口の中での調和が完全で、相当驚いた。めっちゃうまかった。
いくらも花も、見た目の華やかさだけでなく、味わいに大きな意味があって、このシェフは表面的なことをしないタイプだ!嬉しい!となった。

アミューズ 生落花生(おおまさり)のタルト


下からタルト、クリーム、落花生ペースト、糖衣を纏わせてかりっとさせた落花生、チーズ。

甘さと塩気のバランスが絶妙で、全体を落花生のきれいな油脂が包み込むような味わいだった。チーズは見た目のインパクトは強いが、そこまで味わいは主張せず、全体に塩分とうまみを補う役割に徹していた印象。
単体でもすごく美味しかったけれど、口の中の粘度が高まったところで飲むシャンパンとの相性がとりわけ良かった。
器もおそらく益子焼のもので、プレゼンテーションも素敵です。

ヤマドリタケ


構成は上にポルチーニ(ヤマドリタケ)のエスプーマ、下部にアワビタケをソテーしたもの、コンソメのジュレ、何らかのフラン(失念)

この一皿が最も愕然とした。味の重層性と完璧な調和によって、自分が食べているはずなのに飲み込まれるような心持になった。
まず一つ一つの構成要素が美味しく、精度がものすごく高い。そして組み合わせることでシナジーが生まれていて、くっ!フランス料理!すごい!と圧倒されてしまった。味わいの非連続性もあり、下部の歯触りのいいアワビタケと地鶏を小さく切ったもの、ジュレの硬さ、部分的に酸味がつけられており、ネパール山椒も数粒感じた。
特筆したいこととして、ポルチーニの香りが強すぎなかったことがある。ポルチーニの香りは食べなれていない人にとって「美味しくなさ」にもなる。オト

ワレストランは宇都宮随一のレストランであり、接待や会食の場にもなるため、あえて強くしすぎていないのかなと感じた。


栃木野菜のサラダ


各種別々に加熱された野菜、ベビーリーフ、那須高原今牧場のホエーを用いたドレッシング

深さのある益子焼の鉢が45度ほどに温められており、程よい温度感のサラダだった。こかぶ、和梨、南瓜、オクラ、トマト、ゴーヤなど、夏野菜と秋の野菜が入り混じった味わい。各野菜の切り方、火の入れ方が完璧であり、一口ごとに新鮮に美味しい。栃木の野菜のことを理解りすぎだろ…とびっくりした。ドレッシングも柔らかい味わいで野菜を引き立てている。

オマール海老


チコリのソテー、柔らかく加熱したかなり生に近いオマール、ニンジンの淡いグラッセ、マリネされたセロリを刻んだもの、ミカンのソース、殻からのうまみを取った茶色いソース、花びら

みかんのソースの酸味の強さがビシッと決まっていて、エビと合わせて食べるとすごく良かった。エビ自体はそのまま食べると極わずかな臭みを感じたのが、ソースや周りの野菜と合わせることで味わいが2段階くらい上に行っていて、かなり驚きがあった。
コースを通して、皿の中に酸味を忍ばせて軽やかさを作るのがすごく上手いと感じた。酸味もカンキツ、乳酸、バルサミコ、酢と的確に選択されていた。
同行者は、サラダから徐々にメインディッシュに移行する間の一皿として、すごくいいと言っていて、確かにと思った。

アワビパイ包み焼き

かっこいい~~~!!!!!!かっこいい~~~!!!!
かっこいいですね~~~~~!!!!!!!切り分ける前のパイを見せつけに来てもらえてうれしい。サービスの皆さんから、実践に裏打ちされたチームへの信頼、料理を出すときのゆるぎない自信を感じて、それも本当に良かった。何もドヤ顔をするわけではなく、挙措から滲んできてかっこいい。

蝦夷アワビ
アワビ、生ノリとホタテのムース、焼きのり、パイ、レモンを少し効かせたバターソース、アワビ肝のソース(外周部分)

見るからに美味しいものが見た目以上に美味しかった時の興奮!
まずアワビのボリュームがあり、食感が絶妙だった。口の中でソース、パイ、ムース、アワビが一体となって、最後はアワビが残って香りの余韻を残して消えていく。
王道のズドンとしたおいしさだが重くない。すごい。

甘鯛とキュウリ


甘鯛松笠焼き、きゅうりのソテー、キュウリを粗く摺って白バルサミコの効いたソース、貝のうまみを取った液体

このタイミングで甘鯛をどういう仕立てで来る!?と予想しながら待っていたら非常に和のテイストだった。ペアリングもこの皿のみ而今だった。
パイ包みによって口の中がバターのリッチな気配になった後にシャープな酸味のあるソースとサクサクの甘鯛が嬉しかった。松笠焼きもめちゃくちゃレベルが高い。また、キュウリは高温で焼き色を付けられており、キュウリの瓜臭さがなくなっていた。


ランド産鳩、薄いニンジンにビーツのパウダー、燻製したレンズマメとウナギ、栗のペースト、イチジクのペースト、赤ワインソース

目の前で小鍋から赤ワインソースを注いでもらった瞬間の香りの広がりにまずうっとりする。
肉は血が滴るレアではなく、ある程度火が入って弾力が出ている。かみしめるほどにうまい。滑らかな栗のペーストと合わせたときのグルーヴが尋常でなく、動揺した。レンズマメはしっかりと薫香があり、アクセントになる。
ストレートなおいしさの中に栗とイチジクで季節感もあって、良かったな~。そして美しい。華美さと質実さのどちらにも偏っていない美的感覚を思い知る気持ちだった。

チーズ


チーズにあまり明るくないためすべての説明はできないが、右から二番目の那須高原今牧場産シェーブルチーズがとりわけ美味しかった。
草をそのまま食べるよりも濃厚な草の香りとヤギの風味が豊かで、熟成もピタリで、迫力があった。

チーズに合わせた貴腐ワイン。素朴な花が飾られているのも嬉しい。


ミニャルディーズ


右から玄米茶のマカロン、ポルボローネ、フランボワーズのショコラ、和栗の琥珀羹。
どれも美味しかった。ポルボローネが口の中で一瞬で崩れるほど淡い食感で心に残った。全体にテンション上げ上げのミニャルディーズというよりかは、しっとりと食事を締めくくる印象だった。

良いアッサム。うまい。

ペアリング


今回はアルコールペアリングを注文した。単体で個性の強いワインはあまりなく、料理に寄り添うようなかたちでの合わせ方が多かった。あくまで軸足は料理にある印象を受けた。赤ワインは鳩の皿に合わせたもの1つのみだった。非常に気前よく注いでいただいた。パイ包みの白のシャルドネは「足りないんじゃ…」と言って追加でサービスいただき、嬉しかった。

パン


コースのなかで、黒ゴマのブリオッシュ、全粒粉のパン、カンパーニュの3種いただいた。全体に高加水な印象だった。

お会計


2万円のコースと1万円のペアリングにサービス料、チーズなど込みで36000円だった。一回の食事でこれだけの金額が口座からなくなることに震える。しかし、すごく納得しているし、絶対にまた行きたい。
とはいえ大金なので、こうしてnoteに書いて反芻して追体験し、疑似的に2回食べている。

スタッフの人数と空間のゆとり
たまたま客数に余裕がある日だったそうで、個室に案内していただいて集中して味わうことができた。個室でフレンチというとなんだかアダルトな気配がするが、光が入り込む広々した空間で、すごく気持ちが良かった。
料理のクオリティだけでなく、器、空間、サービスすべてに対して満足した時、ここまで自分は嬉しくさせられるのかと驚いた。食事をすることを「体験」と呼ぶことに対して否定的だったのだが、確かにこれは体験だと思った。
キッチンとサービスの皆さん合わせても常時11人~いるそうだ。11人が同じ方向を向いて頑張るとこういうことができるということを見せつけられる思いだった。
チームだからできる手間の掛け方があって、人数を増やしても意思が薄まっていないレストランは稀有ですごい。意思が薄まっている箇所が入店からお見送りまでの一連の流れで見つけられなくて、すごかった。
イメージとしては、バスケの強豪校が試合前のアップで一人もレイアップを外さない、みたいな感じだ。(この例え伝わるだろうか)

まとめ


オトワレストランはオープンから43年間経つそうだ。人生を料理にかけて、栃木で素材と土地を理解しようと努め続けたら、こういう味が出来るんだなと思った。コースの半分以上はオトワレストランの定番のメニューであり、微細な修正をしながら作りこみ続けている料理の芯の強さ、説得力を感じた。こういうことが自分もしたい。

上野に9時に待ち合わせ、宇都宮まで電車で2時間弱。コースを食べ終わり、店内をいろいろと見させていただいて、電車に乗って東京に帰ったころには日が暮れていた。最高の休日だった。
美味しいものは大好きで、いろいろな味覚を追い求めているけれど、グルメと言われることに抵抗がある。金持ちのスノッブな娯楽のネタとしての美食は本当に嫌だ。
オトワレストランは隅々までまっとうさがあった。最高だったので皆さんもぜひ行ってください。ではまた。


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