牧師のオルガン

これは、前奏。そっと鍵盤にそえる指。牧師の手の甲は、いとも簡単な月のようだった。毛筆のような遠視の伯母が訪ねてくる。脳裏によるしなやかな手紙をたずさえて。家族のなかだけの言葉をつかい、リッタイテキな本棚を何個もつくるように言った。伯母がねむるとき、夏の頸動脈が深淵な川に到着する。その先で白紙に並べられた数式は、水脈のようにみえた。一斉に、蝶々結び、できるだろうか。図工が苦手な人たちとともに高山植物を愛したくなる。そして寝室を遠くの川面のようにして瞼を閉じると、方言が点描の花になってはじけるのがわかった。

前奏。かつて前奏があった時間に牧場の、脱臼に似た草原でひとり、何曜日であろうと靴紐のように探偵だった少年がいた。天気雨にピントが盗まれて、暗闇のように水を飲む牧草の中の少年は、ヘブライ語の目頭をして、鬱蒼とした重力のにおいの青い、牛蒡を抱えていた。そして、オルガンが哺乳類だった時、牧師は、6の倍数のような汽水域から変わらずカラス貝を拾ってきてくれた。とても不謹慎な前掛けをして。だから少年は外国にも石油ストーブのような方丈記があるのだろうと思った。猫の手を美しくみせる為の朗読にむいた。

前奏。工夫スル。工夫ヲ。工夫トイウジ。工スル。夫ニ。エスルニ。工夫ヲ。夫エ。夫人。二人ノ人工ノ。人ト人人。虹トイウジ。ハ虫。ト工。ノ中ヘ工シ。夫ト。中ニイル人。ト大人。ノ大工ハ。虫ヲ。工スル夫ノ。エスル虹ノ工夫。

前奏。そして教会を乾いた草で隠した。牧師の初恋の娘は日曜礼拝のあと、沢蟹を手にのせたい、と言った。蟹のとがった足が信仰のようだから、と。そうしてつきだされた左手の薬指は、颯爽と、水田だった。その指に触れたとき、彼女の膣のことを思った。水のように、思った。深い水だった。その後牧師は、固体と液体の間のことを考える膀胱になった。

              前奏。、あ買ってきてね食パン、


現在、小冊子作成中です。
これも冊子に載せようと思っている作品です。
なぜ、公開するか。ネットやPDFで読むのと、冊子で読むのとではうける感じが違うからです。どちらがいいというわけではないが、どちらでも楽しんでいただきたいと思います。


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