電力需給ひっ迫警報で、わかってしまったこと・・・の、その後。そして組織的惰性について
プロローグ
3月22日(火)の騒動を乗り切って(?)ひと段落した金曜日、同じく横浜駅でいくつかの思いがけない発見をしました。まず、なんと駅ビルと、東口の地下街を結ぶエスカレーターの一部が止まっていたのです。22日は確か午後4時過ぎにここを通ったはずですが、その時は止まっていませんでした。なので22日のうちに止めたのか、翌日以降に止めたのか、、、そのあたりは定かでありませんが、かかっている札にははっきりと「節電要請に伴い、、、、」と書かれています。
実は行われていた? 節電要請への対応
「電力需給ひっ迫警報で、わかってしまったこと・・・」の記事で、今回のようなケースでは誰がどのように節電要請しても大型商業施設や鉄道事業者に対しては「実効性は、全く、ない。ゼロ」と断じてしまいましたが、これは正しくなかったということをまず認めなくてはなりません。すべての施設が要請をスルーするわけではなく、対応に時間、もしくは日数を要しただけで、要請に応えるところは、あるのです。
私自身、この騒動のことはもうすっかり忘れてしまっていたので気づかずにスルーするところだったのですが、物理的にエスカレーターが止まっていたのでわかりました。そこで駅構内なども少し見て回りましたが、至るところでこのような節電対応が行われていたわけではありませんでした。・・・あるいは、もう3日もたっていたので、23日あたりには一旦一部消灯して、その後また通常状態に復帰していただけなのかもしれません。ただ、あるデパートでは、館内放送を聞くと、「節電要請に伴い館内の空調及び照明を、、、」とアナウンスしていましたので、先ほどのエスカレーターだけでなく、ほかの商業施設でもこの数日のうちに節電要請対応は行われているようだということがわかりました。
また横浜駅からみなとみらい側を望むと視界に入る、日本を代表するハイテク企業のビルは夕方になっても上部の企業ロゴのサインや特徴的な外壁のライトアップ照明を消灯していました。22日(火)の夕方から夜に見に行った時はどちらも煌々と輝いていたので、このビルもこの数日の間に対応がなされたようです。
これらの事象だけで結論づけてしまうのは控えるべきかもしれませんが、「現状、善良な企業は有事の際の『お上』からの要請には応じるが、要請の伝達~実施には日数がかかる」みたいなことは言えそうです。
この国では緊急時に「お上」からの要請に対し、みながシカトするわけではなく、割合がどの程度かはともかく、対応してくれます。ただ、緊急性が高く、比較的対応が容易な内容であっても即時対応は困難なのです。
このことにけしからん、情けない、と憤る代わりに、ここではちょっと、問題を整理してみた上でその要因やメカニズムを語ってみたいと思います。問いの一つは、なぜ伝達~実施に時間がかかるのか、であり、もう一つは、そもそもなぜお上からの要請を待たずに現場で実施できないのか、です。
組織的惰性
これらの問いに共通する要因として挙げられるのが組織的慣性です。「慣性」とは、物体がそれまでの運動状態を続けようとする性質のことで、動いていたものは同じ速さで動き続け、止まっていたものは止まり続けようとするという物理学上の法則です。同じようなことが「物体」ではなく「組織」にもあてはまるよね、ということになります。「組織的慣性」と書くと、なんだか知的な響きさえ感じてしまいますが、物理学上の「慣性」は「惰性」とも言い、特に人間の行動に当てはめて言うのであれば「組織的惰性」と表現した方が適しているかもしれません。組織は、惰性で行動するよ、ということです。
そもそも「惰性」という言葉は個人にもよく当てはまりますよね。わかっちゃいるけど、惰性で続けてしまっていて、自己嫌悪に陥るようなこと、、は私にはたくさんあります。自分にはそれはない、と言い切れる人はむしろ少ないのではないでしょうか。すなわち惰性というものはヒトにとってごく身近なものであるので、ヒトが集まって構成された組織も、知らず知らずのうちに惰性で動くようになってしまうものなのです。そして、組織の規模が大きいと、些細でわかりやすいこと、ごく簡単なことであってもその惰性を打ち破る行動は起こしにくいものなのだということが、今回の電力需給ひっ迫という事象を通して「見えちゃった」ように思います。
先進縮退国・二ホン
この記事を通して書き記しておきたいことは2つです。1つは、危機管理を考える上では、組織的惰性の存在を甘く見てはいけないということ。長くなりすぎるので詳しくは別の機会に書きたいと思いますが、組織的惰性が発生する要因を掘り下げて、対策を講じていく必要があります。2つ目は、この組織的惰性のまん延が、日本の(国家や企業の)衰退の要因になっているということです。私は日本を世界一の「先進縮退国」と表現していますが、「イノベーションが起こせなくなった」とわかっていながらその状況がずっと続くのは、この組織的惰性というものの性質の悪さを考えるとある種必然ではないでしょうか。こう書くと、そんなこととっくに分かってたよ、と言う人もたくさんいるでしょう。でもそれをあえて、より意識的に、制度的に、打破することが「先進縮退国・二ホンのミライ」を切り開いていくうえで必要だと思っています。
エピローグ
「有事」の際に社会や人々がどんな反応・対応をするのか、というのは危機管理の専門家などではない私のような者にとっても、興味深いものです。しかも今回は、地震、超大型台風、感染症、など外を出歩くこと自体が危険とされるケースとは異なり観察調査しやすいケースでした。そして、もっと本腰入れて連日、ひんぱんに観察すればよかった、と少し後悔しながら、気づくのです。これはチャンスだ、調べた方がいい。わかっているのに、やろうと思えばできたのに、ほかのあれこれで忙しいし、、、と実際の行動に移さなかったのはやっぱり自分が惰性で毎日を送っているからだ、と。
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