派遣・SES契約者を受け入れる部門・プロジェクト責任者に特に意識してほしいこと

システム・ソフトウェア開発や保守プロジェクトで派遣やSES契約のエンジニアを受け入れるにあたり、現場管理者・リーダーが請負・委任・派遣の関連法規について十分に理解していないことは少なからずあるように思う。
法令順守が盛んにニュースで取り上げられ、社内法務・購買部門からうるさく言われているにも関わらずである。

法令順守以前に連綿と続くやり方・慣例があり、その内容に違反があったとしても気が付かない、受注側は余計な指摘をして関係が壊れることを恐れる、忖度して多少の無理を飲み込んでしまう。
現場の管理者・リーダーが、知らない・知ろうとしなくても、今、上手くいっている。チームを構成するパートナー企業も受け入れメンバも表立って不平不満を言わない。やり方は発注側では成功例として残る。たとえ、受注側を苦しめるやり方であってもである。

自社の技術職社員に加え、一括請負のパートナーのサブプロジェクトチーム、派遣やSES契約の技術者と複数の契約形態が混在するチームを構成する。
本当にお恥ずかしい話なのだが、プロジェクトリーダーになったばかりの頃、請負・委任・派遣と何が違うのかもあまり気にしたことが無かった。
「みんなで頑張ってよいものを」「契約形態に関わらず平等に接する」と良さげなことを事ある毎に語っていた。
しかし、それによって、パートナーや受け入れたエンジニア個人が得て・失うものを気にしていない。

ちゃんと契約書がある。
契約形態別にベースとなるものが存在し、甲乙にあたる情報(法人・個人名)を更新し、別紙に曖昧・適当極まりない作業内容や条件を書き込む。
法務・購買部門により過去の契約トラブル実績を踏まえたものだ。
発注側にかなり有利な内容になっていて、現場管理者・リーダーの足枷にならないようになっている。
発注側との力の差は明確なので、契約内容に異を唱える受注側企業は皆無である。
少々不利な内容でも、人材提供による営業・経営数値の方が重要である。また発注先と良い関係を作り将来的にさらに人材を採用してほしい。
そんな思惑も隠し切れず、透けて見える。商材が人間であり心があることを忘れているのかもしれない。

当然、現場責任者である自分は、契約書を読んでいるはずだが、まったく頭に入っていない。なぜならば、一つ一つの条項がどんな法規や商習慣をベースにしているのかを学んでいないからだ。

チームを構成する一人の技術者として、仕様書をまとめ、設計し、コードを書き、試験をして品質を高める。
タスクをこなすことで評価を得て、徐々に預かる範囲を拡げ、新しいものを発見・作りだすタスクを託される。
徐々に自分を中心とするタスクに関係する人数も増えていき、プロジェクト全体を任されるようになる。

組織やプロジェクトマネジメントに必要な知見や能力は、技術者として養ってきた技術的な知見や実務能力とは根本的に違うものだ。
社員以外の契約メンバを含めたプロジェクト体制を前提する場合、リーダーとなるまでに学ばなければならない事の一つが、請負・委任・派遣関連法規の理解なのだが、自分は、派遣やSES契約の技術者を受け入れたチームで業務をしたことが無かった。
仮にあったとしても、大手企業内で純粋培養された技術者ほど、社内の慣例によるプロジェクト運営しか見聞きしないし学ばない場合が多いのである。
自分もその一人であった。そんなリーダーは特別ではなくごく普通に存在していた。そして、今も同じ状態ではないだろうか。

元々意思疎通が容易なプロジェクトメンバ構成で純粋培養され学びが足りない自分である。様々な契約形態の技術者で構成されたプロジェクトチームはうまく運営できない。
もう二度とこのような情けない結果は出せない、プロジェクト管理を一から学び直し、請負・委任・派遣の関連法規の基礎理解に至ったのである。
それまで、無知だった自分が情けなくなり、参画してもらっていたメンバに申し訳ないと反省しきりであった。

今、自分は派遣技術者として大手企業のプロジェクトに参画している。
プロジェクトのリーダー、部門長は、ちょこちょこと関連法規・契約内容を超えた指示命令をすることがあるようだ。
契約を結んだ自社の管理職も彼らに異を唱えることはない。学んでいないのか、忖度して知らないふりをしているのかは分からない。
人間的、技術的に負の感情はない。日頃からお世話になっていると感謝しているのだが、少し残念な気持ちになる。

プロジェクトマネジメントを任せられる人物は、その役割を果たすだけの知見を持ち、実践しているだろうか。
たとえ、うまくいったとしても、関係する人たち、特により立場の弱い人たちにどんなメリット・デメリットがあるか理解しているだろうか。
業界ピラミッドの上部にいる強者ほど、強く意識してほしいのである。
業界の技術者達のステータスを底上げできるよう、より支配的な立場にあるピラミッド上位にいる人たちほど、理解や思慮を深めてほしい。
その立場につくための必須条件としてほしいと思うのである。

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