【救急集中治療関係者必見】神経集中治療に役立つ知識〜DCIよりも先におとずれるEBI〜
■ はじめに
くも膜下出血(aSAH: subarachnoid hemorrhage)の患者さんを
神経集中治療チームはどの様に診ているのかをこれまで解説してきました。
遅発性脳虚血(DCI : delayed cerebral ischemia)に注意するため、
神経集中治療室(Neuro ICU)に14日程度いてもらうことの重要性を強調してきました。
もちろん、それは間違いありません。
ただし、DCIは全員に発生するわけではありません。
あまりにも、DCIに注目するがあまり、忘れがちですが、
一番大事なのは超急性期の管理(発症72時間以内)です。
early brain injury (EBI):早期脳損傷
という言葉が近年注目されていますが、
今回はこれについて簡単に触れていきたいと思います。
■ early brain injury (EBI):早期脳損傷
早期の脳損傷ということで、early brain injury (EBI)と呼ばれます。
脳損傷初期・早期の脳へのダメージは大きく、予後に大きく影響します。
そもそもEBIの期間に脳で何が起こっているのか?
脳動脈瘤の破裂に伴って、脳がダメージをうけますが、
脳虚血
微小循環障害
血液液脳関門の破壊
神経炎症
脳浮腫
酸化的カスケード
神経細胞死
などが起こり、さらに脳障害を進行させます。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.122.040072
にとてもわかりやすい図が乗っているので、
よかったら参考にしてください。
これらの要因はなかなか目に見えないので、ピンとこないと思います。
脳がblack boxになってしまっている時は、気にもならないかもしれません。
ではどうすればいいのでしょうか?
■ EBIの対応
もちろん、EBIの治療としては
神経集中治療の基本である二次性脳損傷の予防
を一生懸命することで、達成できます。
神経集中治療チームの活動内容には大きな違いはありません。
具体的に言うと、aSAHですので、
脳動脈瘤の再破裂の予防は最優先事項です。
その他にも、
適切な脳灌流を維持するためのバイタルサインの管理
脳圧の管理
体温管理
電解質の管理(特にNa)
発作の予防・治療 (非けいれん性てんかん重積状態含む)
など様々な介入を行う必要があります。
意識障害が強い場合は
EBIでもMultimodality Monitoring(MMM)を駆使して、
全身管理を適切に行い、
徹底的に二次性脳損傷を予防するということが大事です。
僕のNeuro ICUでは同じく以下が登場します。
Multimodality Monitoring(MMM)
脳波(EEG)
経頭蓋エコー(TCCFI:Transcranial-Color Flow Imaging)
頭蓋内圧モニター(ICP : Intracranial pressure)
自動瞳孔計(NPi® : Neurological Pupil index)
近赤外分光分析法(NIRS:Near Infrared Spectroscopy)
■ まとめ
この記事の目的は
EBIをしっかり認識することの重要性を強調することです。
そのための、神経集中治療をまず行って欲しいです。
その上で、DCIに目を向けましょう!
■ 最後に
aSAHの患者さんと神経集中治療チームの戦いは、
EBIが発生する初日からDCI期を含め14日間続きます。
神経集中治療医が一人だけいても、救えません。
皆で協力し、それぞれの得意分野を生かし、患者さんが最良の転帰に至って欲しいとt思います。
神経集中治療がもっと広まりますように!
Q : EBIの程度を知る方法はないの??
次回はこれも解説したいと思います。