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【救急集中治療トピックス】くも膜下出血と神経集中治療〜 Neuro ICUでしっかり診よう!〜

■ はじめに
僕のnoteでは神経集中治療で扱う疾患の治療方法も紹介していこうと思います。

まずは神経集中治療が一番効果的と言われているくも膜下出血
からいってみましょう。

■くも膜下出血(aSAH: subarachnoid hemorrhage)と神経集中治療


医療関係者でもそれ以外の方も、
この疾患名は聞いたことがあると思います。

激しい頭痛とともに発症しますが、命にも関わる恐ろしい病気です。
(ここでは動脈瘤が破裂したタイプのSAHに限定しています。)

実はaSAHは神経集中治療の効果が最もある疾患であると言われています。
リハビリテーションとの組み合わせで長期的な転帰の回復も報告されています(死亡率の改善、自宅退院率の上昇など)!

参考PMID: 21847702, 21424884, 35962231

■神経集中治療室でどれくらいの期間治療する?


僕の神経集中治療室(Neuro ICU)では、
遅発性脳虚血(DCI : delayed cerebral ischemia)のリスクがある期間、
つまり、

発症から14日間は “重症度に関わらず” Neuro ICU内で管理

をしています。

理由は?

提供すべき医療がたくさんあるからです。

患者さんも頑張らないといけませんが、
神経集中治療チームのサポートが十分に必要です。

■最初の72時間

この期間はEBI 期(early brain injury)とも言われますが、
二次性脳損傷の回避のために積極的な神経集中治療が必要です。
バイタルサインの管理、血糖管理、発熱管理、術後管理などですね。
ここでどれだけ頑張れるかが、その後のDCIの発症にも関わってきます。
https://note.com/satoshi_egawa/n/ne4dfe8be97d0

■その後14日間


この期間はDCI の予防と早期発見のためにNeuro ICUでの観察が必要となります。

比較的長めの滞在の一番の目的は、”DCIの早期発見”のためです。

DCIは血管の攣縮をはじめとした、様々な原因によって惹起される脳の虚血のことをいいます。

脳梗塞の様なものですが、aSAH後に一定の確率で発症します。

発症するとそれまで元気だった患者さんが、急にしゃべることができなくなったり、麻痺を生じたりします。

スピーディーな治療が必要ですので、Neuro ICUでできるだけ早期に発見したいです。

これまでも何度も看護師さんやリハビリの先生に助けられました。
彼らからの迅速な報告こそ、神経集中治療チームの強みになります。

■最後に


重症度に関わらずNeuro ICUで患者さんを十分な期間診ることができる
環境は理想的です。

しかし、日本ではどこの病院でもそれが可能とは言えません。
この環境は、我々は今後も維持していきたいと思っています。

しかし、aSAHには比較的意識の良い患者さんもいますので、
多くの方が想像する一般的なICUとやや異なる環境が必要です。
Neuro ICU内の居住性なども今後検討してくべき課題です。
この点も、“Neuro” ICUである理由の一つになりそうです。

続く・・・


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