肩甲骨ブーム
空前の肩甲骨ブームが到来した。
肩甲骨が一躍注目をあつめ、世間はその話題で溢れかえった。
肩甲骨ソングが流れ、若者は肩甲骨ダンスを踊る。
有名ブランドの肩甲骨モノグラム柄が発表され話題になったり、3つ目の肩甲骨を持つ男が報道され、炎上騒ぎになったりもした。
グルメ番組では肩甲骨ラーメンが紹介され物議をかもしたのは一瞬のこと。肩甲骨料理はどこでも大人気になっていく。
肩甲骨を片手に微笑む人気タレントの姿がCMで流されると、食文化としての肩甲骨は、あっというまに大衆に浸透していった。肩甲骨の専門店がならび、通りには肩甲骨を食べ歩く人々で溢れていく。
書店では肩甲骨の関連の書籍がならび、肩甲骨グッズはどれも飛ぶように売れた。
肩甲骨をあがめる新興宗教も各地で起こり、ちょっとしたニュースになったりもした。
肩甲骨が主人公のアニメが大ヒットし、作中の「肩甲骨の呼吸」というセリフが流行となり社会現象にもなっていく。迫りくる骨たちの驚異に、筋肉痛をこらえて立ち向かう肩甲骨の姿は多くの人々の共感を集め、劇場版は映画の興行収入記録を更新し続ける。
ファッションショーのモデルは肩甲骨で選ばれ、オリンピックでの各種目では肩甲骨に点数がつけらるようになる。
紅白歌合戦では肩甲骨グループが何組も初出場し、格闘技では肩甲骨を使った技で、選手はベルトを勝ち取った。
政治はもはや肩甲骨抜きで語ることはできず、科学者はみな肩甲骨の研究に没頭した。各地の紛争やエネルギー問題の解決、多くの希望が肩甲骨に託された。
世界は肩甲骨を中心に回っているかのようだった。
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人気の現代美術家、肩甲骨アーティストのインタビューでのこと。
予定していた質問を終えてしまった記者は、その場で思いついたどうでもいい質問をした。
「この作品の肩甲骨の間に描かれているのはなんですか?」
「それは第二頸椎。ほかの頚椎(けいつい)とは形が違うところが面白いんだ」
アーティストはどうでもいいといった感じで答えたのだが、誌面が余ったため、この部分はそのままメディアに掲載された。
【引用リツイート】へえーこれ、第二頸椎っていうんだ!かっこいい!
【ツイート】今、第二頸椎でーす!おすすめ!
インフルエンサーたちのTwitter。
しばらくして、空前の第二頸椎ブームが到来した。