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”公約”とは何だろうか?ー弁護士の現場から(千代田区編)

1 大胆な挑戦ーパリ市長の公約


“緑でいっぱいの都市に” これはパリ市長の公約です(※1)。2024年10月、パリを訪ねました。パリ市庁舎前の広場は “都市の森”に生まれ変わるところでした。自動車の進入を禁止したセーヌ川河岸の歩行者道路では、お年寄りも若者も散歩し、それぞれの時間を過ごしています。駐車スペースを無くして植樹する政策も進んでいます(※2)。パリは東京以上に車社会ですが、公約の実現に向けて緑を増やし、車重視から人中心への転換という大胆な挑戦が行われています。

木を植えるパリ市~市庁舎前広場を“都市の森”へ(2024年10月撮影)
セーヌ川河岸の歩行者道路(2024年10月撮影)


2 木を切る千代田区と木を受けるパリ市


一方、千代田区ではイチョウの街路樹を切る道路整備が強行されようとしています。木を切る千代田区と木を植えるパリ市。トップの政治家が違えば、まちづくりの方向性が正反対になります。

木を切る千代田区~神田警察通りのイチョウ(2023年2月撮影)

樋口高顕区長は「区長報酬2割カット」の公約を掲げて2021年の区長選挙に当選しました。条例で2割カットを決めましたが、期限は当選の翌年2022年2月末日まで(※3)。それ以降は2割カットしていません(ただし、2024年8月分は官製談合事件の責任で減額 ※4)。

3 公約を破った樋口区長は1800万円の返還を

千代田区長の基本給与は23区で一番高く 月額128万6千円です(2022年6月1日時点 ※5)。期末手当(ボーナス)を含めた千代田区長の年収は約2200万円、4年間で約8800万円。区民は任期4年間を通して「区長報酬2割カット」すると思ったはずです。しかし、3年間分の約1320万円はカットされていません。さらに、樋口区長は約2400万円の退職金を受け取る予定です(※6)。現在の条例では退職金も2割カット(約480万円)されません(※7)。

区長がお金の面で自分に甘ければ、官製談合を起こした組織を律していく改革はできません。樋口区長は2割カット分の約1800万円を返納すべきです。

4 公約は有権者との約束


樋口区長の公約違反は「公約とは何だろうか?」との疑問を私たちに投げかけています。選挙の時に調子の良い公約を並べ、当選したら公約が破られるのであれば、私たちはどのように投票する政治家を選べばよいのでしょうか。

公約は一票を投じる有権者との約束です。だからこそ、公約はパリ市のように大胆な政策を進める大きな力になります。2025年2月2日は千代田区長選挙です。区長候補の公約に注目したいと思います。

〈本記事は「ちよだかわら版」第8号に寄稿したものに一部加筆修正したものです。〉  


※1 「パリは緑の都市に変貌?」(時事ドットコム『ふらんす』2020年3月号掲載)

※2「パリに緑を、気候対策で市が計画-駐車場撤去して植樹、オアシス設置」(ブルームバーグ 2024年11月19日)


※3  千代田区長の給与の特例に関する条例(令和3年3月26日条例第11号)

※4 千代田区長及び副区長の給与の特例に関する条例(令和6年7月11日条例第18号)

※5    文京区ホームページ「特別区(23区)特別職等年収一覧【区長】令和4年6月1日現在」 

※6    千代田区長及び副区長の給与及び旅費条例(最終改正:令和元年11月29日条例第20号)

※7 千代田区長等の退職手当に関する条例(最終改正:平成21年11月30日条例第25号)

以上


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