2351
小学生の時、誕生日に買って貰ったマウンテンバイク。当時の僕はとても嬉しく、何よりなかなか立派なものだったので高校まで大事に乗り潰した。そのマウンテンバイクはダイヤル式のキーで、暗証番号が「2351」だった。
この4桁は僕にとって意味のある数字だ。しかしこれを読んでいるあなたにとってはただの数字列で当然何の意味もない。
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この現代社会、得ようと思えば1つの出来事でも埋もれるほどの情報を得られる。あなたにとって大切な人が何をしているかは電話1本ですぐに把握できるし、好きな歌手のニューシングルもネットで検索すればすぐ見つかるだろう。
そんな細分化した情報が得られる社会だから必要のない情報はすぐ切り捨てられる。
iPhoneに入っている曲数は?小学生の頃のクラスメイトの名前は?親の通っていた小学校は?
覚えている人はそう多くないだろうし、そもそも興味がなく最初から知らないかもしれない。
自分の身近なことでさえ無意味な数字列、文字列として処理されてしまう。
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そういった意味では"1日"も同じようなことが言える。
期待と不安を胸に地元を離れた日も、忘れられないほど辛かったあの日も。関わりのない人からすればただの1日なのだ。
あなたにとっての何でもない1日と僕にとっての何でもない1日。
どうかこの1日が僕らの秘密の共通言語になりますように。