体幹とは?
【アスリートのための身体の仕組み講座】
という事で、スポーツをしている方に知っておいてもらいたい事を全13回でお伝えしていきます。
身体の仕組みを整理し、活かせると
・ケアのクオリティがめちゃめちゃ上がる
・怪我のリスク激減
・違和感や怪我からの復帰がスムーズ
・痛みや怪我による不安感の減少
・潜在能力を引き出せる
・限られた“選手”という期間、全力を出し切れる
・最高のパフォーマンス発揮に繋がる
などなど、選手も“学ぶこと”がとても重要となります。
教科書的に学ぶというよりも、選手の皆様が『へ~』となるようにお伝えできればと思います。
第1回テーマは【体幹(コア)】
怪我予防やトレーニング、パフォーマンス向上を語るうえで欠かせない部分。
選手の皆さんもよく聞くワードですね。
しかし、聞いたことあって、ざっくり何となくはわかっていても、活かせるほどの理解までいっていないかと思います。
今回は、体幹について
『なぜ重要なのか?どう機能させていく必要があるのか?』
を整理していきます。
Ⅰ.体幹(コア)とは?
そもそも、体幹と言われるのはどの部分なのか確認しましょう。
体幹(コア)とは
【頭と四肢(手足)を除いた部分】
です。
そして、筋肉だけではなく
体幹部を構成する全ての骨格、それを支える全ての筋肉
さらに動きの中で変化し得る軸や重心の総称です。
エリアでみるとこんな感じ↓
思ったよりも広いんじゃないでしょうか?
この【頭と四肢(手足)を除いた部分】が体幹(コア)と言われる部分です。
この広いエリアで言う体幹(コア)を
⇒広義のコア
なんて言ったりします。
皆さんが想像するお腹周りの体幹(コア)は
⇒狭義のコア(インナーユニット)
なんて言います。
エリアでみるとこの辺り↓
そしてこのインナーユニットと言われる部分。
めちゃめちゃ大切なんです。
なぜかと言うと
インナーユニットが全ての身体動作の予備動作に関係しているから
そして
上肢(上半身)と下肢(下半身)をつなぐ役割があり、
身体を安定させてくれるから
このインナーユニットが機能低下を起こしてしまうと
肩こりや腰痛、股関節痛やひざの痛み、姿勢不良、動きの質の低下、疲れやすい・・
などなど、様々なトラブルを引き起こしていしまいます。
わかりやすく言うと
怪我予防、姿勢改善、パフォーマンス向上など、全ての根本になる部分です。
Ⅱ.インナーユニットとは?
全ての根本になるインナーユニット。
少し細かく確認していきましょう。
インナーユニットと言われるこのエリア↓
姿勢や動きをつくっていく上で
骨盤帯と腰椎の安定性
まずここが重要なんです。
もろにインナーユニットと言われるエリアですよね。
で、骨を見てほしいのですが・・
肋骨と骨盤の間は背骨だけ
ですよね。
という事は、筋肉たちで支えているんですが、その土台となる筋肉たちが“インナーユニット”です。
インナーユニットと言われている筋肉は4つ
・横隔膜
・骨盤底筋群
・腹横筋
・多裂筋
これらの筋肉が協力し合って機能することが重要となります。
(※それぞれの筋肉について詳しくは後半で)
様々なトレーニングがありますが
インナーユニットがきちんと機能している+様々なトレーニング
でなければいけません。
そうでないと、良かれと思ってやっているトレーニングが違和感や怪我を引き起こしてしまう可能性が高くなってしまいます。
いや、日常生活でもトラブルが出てくる可能性が高いです。
一般の方にとっても重要ですが、スポーツをしている方は特に正しく理解し、レベルアップの為に活かしていかなければいけません。
トップレベルで活躍されている選手も、ここの確認とトレーニングは絶対に行っていきます。
可能な限り怪我を予防しつつ、本気でレベルアップしていきたい方は絶対に抑えておくべき重要ポイント。
それが【インナーユニット】です。
Ⅲ.インナーユニットの機能と役割
『インナーユニットって大切なんだな~』
というのはご理解いただけたかと思います。
もう少し具体的に“インナーユニットの機能と役割”について整理していきましょう。
インナーユニットの機能と役割は
・動作を起こす前の腹部内圧の調整
・腰背筋膜の緊張
・仙腸関節の圧迫
・脊柱の全方向的な安定性
などなど・・
わかりにくい・・。
簡単に言うと
インナーユニットは
・どの筋肉よりも少し早く働いて、お腹周りを引き締めて(安定させて)くれる
(上肢⇒0.03秒/下肢⇒0.11秒早く働く)
・骨盤と背骨を正しい位置関係に保ってくれる
って事です。
身体のベースとなる部分を良い状態で安定させてくれるんです。
良い状態で安定しているからこそ、問題なくスムーズに動けるんですね。
このインナーユニット
身体を安定させるため、常に働いています
でも、常にMAXで働いている訳ではありません。
普段は20~40%くらいで、走ったりジャンプしたり、コンタクトプレーなど、必要に応じて出力があがります。
考えなくても無意識に、ちょうどいい出力で身体を安定させてくれるようになっています。
・・・
本来は。
しかし、様々な事が原因で、このインナーユニットがちゃんと働かなくなっている選手ってとても多いんです。
そして【不調やトラブル、思うように向上していかない】等のお悩みに繋がっていくんですね。
多くの選手のお悩み。
根本的な原因を探していくと
インナーユニットの機能低下が原因
というのが本当に多いです。
となると
『じゃあ機能改善・強化ってどうやってするん?』
『自分のインナーユニットがちゃんと機能しとるかチェックできるん?』
って気になりますよね。
それは次回。
第2回の記事で確認していきます。
今回は、スムーズにそこに繋げるため
・インナーユニットと言われる筋肉たちについて
・インナーユニットが働かなる理由について
あと少しだけ深ぼっていきます。
Ⅳ.インナーユニットを構成する筋肉たち
インナーユニットは4つの筋肉で構成されています。
・横隔膜
・骨盤底筋群
・腹横筋
・多裂筋
この4つ。
まずは
“横隔膜”
胸(胸腔)とお腹(腹腔)を分けるドーム状の筋肉です。
横隔膜の機能は
吸気(息を吸う)こと
実は、吸気専門の筋肉って横隔膜だけなんです。
この横隔膜の機能
肋骨など、胸エリアの動きが悪くなると連動して働きが悪くなります。
・肋骨など、胸エリアの動きが悪い方
・呼吸の浅い方
呼吸の質は心肺機能や姿勢・動きの質に大きく関わります。
肋骨や背骨の動きを引き出すことが解決の大きなポイントとなります。
・呼吸と一緒に肋骨が動いているか
・背骨がしなやかに動くかどうか
肋骨の動きは確認しやすいと思うので、手を肋骨に当て深めの呼吸をして肋骨が動いているかチェックしてみてくださいね。
次は
骨盤底筋群
文字通り、骨盤の中にある筋肉たちです。
ハンモックみたいな感じで、骨盤内臓器を支えてくれます。
骨盤底筋群の主な機能は
・姿勢の安定化
・排尿排便
・生殖・出産
男性と女性で骨盤の形状は異なります。
骨盤底筋群の機能不全はアスリートでも意外と多く、『実は頻尿で・・』と打ち明けてくれる選手もちょこちょこいます。
骨盤底筋群の機能異常は3つ
・腹部、骨盤底筋群の緊張の低下
・筋収縮のパターンの変化
・機能不全
サボり癖がついて働かなくなったり、女性であれば出産等で組織自体にダメージをうけたりします。
骨盤を整え、トレーニングしていく必要があります。
骨盤底筋群が機能不全・機能低下を起こしてしまうと
・骨盤のバランスが崩れる
・ポッコリお腹になりやすい
・尿漏れ・頻尿など起こしやすくなる
・疲れやすい
・パフォーマンスの低下
などのトラブルを引き起こしてしまいます。
この骨盤底筋群はミルフィーユみたいな“層”になっていて、他のインナーユニットとしっかり連動、機能すると生命エネルギーが上がるとも言われています。
意識やトレーニングがしにくい部分ですが、実はそれほど難しくありません。
正しく理解し、機能させていきたいですね。
次は
腹横筋
これは聞いたことがある方も多いんじゃないでしょうか。
お腹の筋肉も“層”になっているんですが、一番深い所にあるコルセットみたいな筋肉です。
腹横筋は、他のインナーユニットの筋肉たちと一緒に
【骨盤帯と腰椎の安定性】をもたらしてくれます。
この“層”になっている腹筋群
働く順番がめちゃめちゃ重要なんです。
深い筋肉から順に
①腹横筋
②内腹斜筋
③外腹斜筋
④腹直筋
という順番で働かないといけません。
順番が変わってしまうのはアウトです。
他にも、姿勢を保ったり、動いたり、負荷がかかった時に【抜ける】とアウトです。
腹横筋は脳からの伝達が正しくいっているかがポイント。
・きちんと機能していない
・入る順番が違う
・すぐに抜けちゃう
という方は、改善のトレーニングが必要となります。
腹横筋の機能異常は5つ
・活動遅延
⇒一番最初に働かないといけないのに、働くのが遅い
・方向限定性収縮
⇒全ての方向で働いてほしいのに、特定の方向でしか働かなくなる
・相同性収縮
⇒常に働くべきなのに、動作によって「オン-オフ」してしまう
・独立制御の欠如
⇒無意識に働かないといけないのに、意識をしないと働かない
・通常運動スピードでの反応不全
⇒日常動作、ゆっくりとした動きの時に機能しなくなる
これらは【脳からの伝達がうまくいっていない状態】
勝手に改善しないので、チェックし、きちんと改善する必要があります。
改善しないままに様々なトレーニングをしたり、負荷をかけたトレーニングをしても効果的ではありません。
しかし、そもそも
『ちゃんと機能しとるんかどうか分からん』
という方がほとんどだと思います。
自分の身体がどうなのか知りたい方、問題があるなら改善させたいという方。
ぜひご相談ください。
最後は
多裂筋
多裂筋は脊柱(背骨)にふぁさーっとある筋肉。
多裂筋は背骨を
・支持(支える)
・伸展(そらせる)
・回旋(ねじる)
・側屈(たおす)
という機能があります。
積み木みたいになっている背骨を1つ1つ・・ではなく、
骨を2~4個またいで小さな筋肉がたくさんひっついています。
詳しくわけると
・腰多裂筋
・胸多裂筋
・頸多裂筋
の3つに分類されますが、文字通りエリア(腰・胸・首)によって名前が違います。
その中でも、下の方は特に重要なんです。
とても強く働きますし、下の方がきちんと機能すると、上の方もきちんと機能してきます。
ですので、多裂筋の機能改善、強化は下の方の筋肉たちにしていきます。
多裂筋は
背骨がズレないように支えてくれて、骨盤も良い感じの位置で安定させてくれます。
また、固有受容器というセンサーみたいなものが多くあるので
姿勢の保持・制御に強く関わり、身体の軸、正中感覚にも大きな影響を与えます。
腰痛の方や、動きにキレのない方などは
『多裂筋がサボってる』
『多裂筋の左右差がある』
という方がほとんどです。
多裂筋の機能異常は3つ
・筋活動の低下
⇒シンプルに筋力低下
・疲労性
⇒持久力・耐久力が弱くなってしまい、うまく働けない状態
・組織
⇒萎縮(筋肉がちっちゃくなる)したり、細くなったり、かたくなったり、多裂筋自体に問題が起こっている状態
きちんと反応しているか、左右差はないか等きちんとチェックできるかがポイントとなります。
多裂筋は筋肉トラブルですので、シンプルに的確に刺激を入れていけると正しく働いてくれるようになります。
1つ1つ確認していきましたが、インナーユニット
・横隔膜
・骨盤底筋群
・腹横筋
・多裂筋
この4つの筋肉は、一緒に連動して機能することが大切です。
Ⅴ.機能異常を引き起こす3つの要素
体幹について少し細かい部分まで突っ込んできました。
最後に
『そもそも何で機能異常を起こしてしまうのか?』
ここを確認して終わりましょう。
インナーユニットの機能異常のパターンは3つ
・脳の制御がうまくいっていない
・筋肉そのものに問題が起こる
・機能不全
と、こんな感じ。
そこから考えると
インナーユニットの機能異常を引き起こす要素は3つ
①免荷(体重負荷の減少)
②損傷
③疼痛(痛み)
になります。
①免荷(体重負荷の減少)
免荷(めんか)というのは、体重をかけないようにしている状態。
これは
・体重負荷の低下⇒筋肉への影響
・負荷に対する感覚情報の低下⇒神経系(脳)への影響
が起こります。
身体は環境や状態に合わせて筋肉を適合させていきます。
身体を支えるべき筋肉たちが
『あんま働かんでも大丈夫じゃん』
ってなって、サボりまくり・・良くないですよね。
楽な姿勢や、重力をうけない状態・環境だと、身体はすぐに楽できる(サボる)方に適応してしまいます。
また、
筋委縮(筋肉がやせてしまう)
ということも起こってきます。
便利で楽できるアイテムにあふれている現代社会。
気を付けないといけませんね。
②損傷
医学的に言うと
“後天的に組織の生理的連絡が絶たれた状態”
・・。
わかりにくい・・。
捻挫や骨折、挫傷などですね。
スポーツでは“関節損傷”が多いですかね。
こういった損傷は身体に大きな影響を与えます。
損傷によって特に大きな影響を受けるのが
・インナーユニット
・抗重力筋・体重支持アウターユニット(単関節の抗重力筋)
⇒身体を支えてくれる筋肉たち
・動的アウターユニット(多関節筋)
⇒身体を動かす筋肉たち
※アウターユニットについては「第3回」で詳しく解説します。
で、この時ちょっと面白い反応が起こります。
・インナーユニット
・抗重力アウターユニット
⇒とても簡単に機能低下を起こす
・動的アウターユニット
⇒逆に活動が増加する事がよくある
わかりますか?
インナーユニットと身体を支える筋肉たち⇒機能低下
身体を動かす筋肉たち⇒活動が増加
面白いですよね。
損傷をして、機能低下を起こすものと、逆に活動が増加するものがあるんです。
これは、身体を支える筋肉たちが機能低下を起こして働かないぶん、身体を動かす筋肉たちが代わりに働くから。
これを【反射制御】と言うんですが、これが起こると
“筋委縮(筋肉がやせてしまう)”を引き起こします。
そして関節周囲の筋肉たちに大きな影響を与えてしまいます。
めちゃめちゃ急激に!
特に影響を受けるのが、
“抗重力伸筋群”と言われる筋肉。
これは
“免荷”の時に影響を受けやすい筋肉と同じなんです。
この筋肉たちは
“関節を保護する”という役割があります。
重要な役割ですよね。
ピンポイントで急激な影響を与えるとは、免荷も損傷も甘く見てはいけませんね。
厄介なのは、
【この影響は持続性を持っている】
という事。
また、機能的な部分は時間がたっても勝手に復活しません。
きちんとチェックし、機能を取り戻すためのアプローチから行っていく必要があります。
③疼痛(痛み)
痛みにも色々ありますね。
ざっくり
・慢性的な痛み
・急性的な痛み
の2種類にわけますが、その原因は身体の問題だったり、心理的な問題だったり様々です。
何らかの理由(事故や怪我、過負荷など)によって痛みが起きると、インナーユニットの働きが悪くなり、機能異常を引き起こしてしまします。
逆に
インナーユニットの働きが悪くなった結果、痛みが出る事もあります。
・インナーユニットの働きが悪くなる
⇒機能異常を引き起こす
・アウターユニットが過剰に働く
⇒過緊張などにより凝りや痛みの原因となる
こういった反応が身体では起こります。
最後に
今回は体幹について整理してきました。
大切なことは
『今、自分の身体はどんな状態で、どんな刺激が必要なのか?』
『どんなストーリーでアプローチしていくと【目指している所】に最短でいけるのか?』
ここを分析し、整理すること。
そうすると、やるべき事が明確で、迷いなく質にこだわって取り組んでいけます。
的確にアプローチすると、身体は絶対に応えてくれます!
ひとりでは難しい。
指導者やトレーナーにやらされるだけでもダメ。
信頼出来る方が近くにいれば相談を。
悶々としているなら何時でもご相談ください。
次回は
【ドローイン・ブレーシング・腹圧について】
アスリートは絶対に正しく知っておきたい部分です。
ここは専門家でもきちんと理解できていない、実践できない方がとても多いんです。
ここが出来ると、全てのトレーニング効果が爆上がりです。
お楽しみに。
長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。