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優しい人とは

あなたの痛みは 僕には分かりません
でも 分かりたいと思っています
おかえりモネ/菅波光太朗
人は 他人の痛みは分からない
医者と患者に限らず
夫婦、親子、友人 どんな間柄でもそれは同じだ
しかし 痛みは教えてくれる
自分の側に その痛みを分かち合いたいと
思ってくれる人がいることを
その存在に 気づかせてくれる
コード・ブルー 3rd Season/藍沢耕作

 「おかえりモネ」も「コード・ブルー」の3rd Seasonも、脚本を担当したのは安達奈緒子さんだ。他人の痛みは、簡単に分かるものではないけれど、その痛みを分かろうとすること、分かち合うことはできる―彼女はこういったメッセージを、ドラマのセリフを紡ぐことで、発信しているように思う。

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 夏休みに姪っ子との対面を果たして以来、赤ちゃんを抱きかかえながら買い物をしている人や、ベビーカーを押して電車に乗る人を見る目が変わった。もし困っていたら、助けてあげなければ、と以前よりも思うようになったのは、そのような親の姿が〈他人事ではなくなった〉からだ。

 地元の大分県で災害が起きると、もちろん心配になる。でも、大分県に縁もゆかりもない人であれば、そこまで心配しないかもしれない。大分で地震があるたび、大分に台風が近づくたび、両親に心配のLINEを送るのは、その災害が〈他人事ではない〉からだ。 

 先日とある番組で、サッカー元日本代表の内田篤人さんと、J1・横浜Fマリノスに所属している宮市亮選手の対談が行われていた。宮市選手は、今年の夏に膝の大怪我を負い、現在リハビリに励んでいる。対談の中で印象的だったのは、普段クールに振る舞う内田さんが、宮市選手の話を聞いて涙を流す場面だ。

 「気持ちはすごい分かる」「怪我をした人にしか分からないからね」と、声を震わせながら話す内田さん。彼自身も現役時代、膝の怪我に苦しんだからこそ、宮市選手のことが〈他人事ではなかった〉のだろう。

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 誰かが痛みを抱えている時に〈他人事ではない〉と感じることができる。それが「痛みを分かろうとする」「痛みを分かち合う」ということなんだと思う。そして〈他人事ではない〉と感じられる対象がたくさんある人を、「優しい人」と呼ぶんだと思う。

 大学で、あまり興味のない分野の授業も取ってみること。日本や海外の、様々な場所に足を運んでみること。小説やドラマを通して、誰かの人生を追体験すること。いろいろな人から話を聞いて、その人の経験をおすそ分けしてもらうこと。これらは全て〈他人事ではない〉と思える対象を増やすための営みだ。そういう行動を積み重ねて、「優しい人」になれたらいいなあ。

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