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前世を記憶する子供たち ~物質と魂の科学~

 前回のコラムでは、フレッド・ホイルの著書を引用して、知性や意識の本質は、物質世界とは別の次元にあると思われることを述べた。それでは、知性や意識、魂と呼ばれるものは、肉体の死後も生存するのであろうか。
 今回は、バージニア大学の教授であったイアン・スティーブンソンの著書「Children Who Remember Previous Lives(邦題:前世を記憶する子どもたち 笠原敏雄=訳」に掲載されている超常的事例を引用し、魂や意識と呼ばれるものの死後生存について考えてみたい。

イアン・スティーブンソンの研究内容

 イアン・スティーブンソン教授は、世界中の超常現象といわれるような事例を2000件以上にわたって調査を行った。中でも注目したのは、前世の記憶を持つと思われる子供の事例であった。大人でも催眠状態やチャネリングで過去世の記憶を語る人がいるが、大人の場合、それまでに得た知識を元に脚色している可能性があるため、外部からの情報がほとんど無い子供の発言に着目して、前世のことを確認できる事例に絞って徹底的に調べた。そして、その結果、生まれ変わりとしか考えられないような事例があったという。

前世記憶を語ったアメリカの子供

 以下に、スティーブンソンの著書から一例を紹介する。アメリカのテキサス州で前世の記憶を語ったマイクル・ライトという子供の話である。マイクル・ライトの母親のキャサリン・ライト夫人は、前の恋人であったウォルター・ミラーが自動車事故で亡くなった後に、別の男性と結婚し、マイクル・ライトという息子を出産した。ライト夫人は亡くなったウォルターが生まれ変わるのがはっきり分かるような夢を見たという。その後、マイクル・ライトが三歳になった頃から、全く知らないはずの人達や出来事のことを話し始めたという。亡くなったウォルター・ミラーの妹の「キャロル・ミラー」という名前を口に出して、母親を驚かせた後、ウォルターが無くなった事故のことまで語り始めた。スティーブンソンの著書「前世を記憶する子どもたち」には、その時の様子が以下のように記載されている。

『マイクルは、ウォルター・ミラーが死亡した事故のことを詳しく語るようになったのである。母親によれば、マイクルは、最初はオートバイの話をしていたが、自分でその誤りを訂正し、「友だちと車に乗ってると、車は路肩を飛び出して、ゴロゴロと転がった。ドアが開いてぼくは外に放り出されて死んだ」と語ったという。』
『マイクルはそれ以外の点についても語っている。たとえば、車のガラスが壊れたことや、(事故の後)自分が橋を渡って運ばれたことなども話しているし、友人と一緒に(道路際に)車を停め、トイレに行ったあとで事故に遭ったことについても話したのである。また、事故の直前に出席したダンス・パーティーがどの町でされたのかについても語っている。タイト夫人には、こうした発言のほとんどがウォルターの事故と完全に待合することがわかった』

イアン・スティーブンソン「前世を記憶する子どもたち」

手術の跡を引き継いだ生まれ変わり

 もう一例、紹介するが、今度は手術の跡を引き継いで生まれ変わったという事例である。再度、スティーブンソンの著書から引用する。

『アラスカに住むトリンギットの老師ヴィクター・ヴィンセントが姪のコー リス・チョトキン・シニア夫人に向かって、自分が死んだらおまえの息子として生まれ変わるつもりだ、と語ったことが本例の発端になっている。ヴィクター・ヴィンセントは姪に小さな手術痕をふたつ見せた。ひとつは鼻柱の近くにあり、もうひとつは背中にあった。その痕を見せながら姪に、 このふたつの痕跡と同じ場所にあざがあるから(来世では)すぐ見分けがつくはずだ、と語ったのである。
ヴィクター・ヴィンセントは、1946年春に死亡した。その一年半ほど後(1947年12月15日に)、チョトキン夫人は男児を出産した。その子は、父親の名前を襲名し、コーリス・チョトキン・ジュニアと名づけられた。コーリス・チョトキン・ジュニアの体には母斑がふたつあった。母親のチョトキン夫人によれば、その母斑は、かつて叔父のヴィクター・ヴィジセントが見せてくれた手術痕と全く同じ部位にあったという。』
『特に背中の母斑は印象的であった。長さ三センチ、幅五ミリほどの大きさで、周囲の皮膚に比べて黒ずんでおり、わずかに盛り上がっていた。手術痕が癒えた時の状況とよく似ており、大きな母斑の両側の、手術で切開した皮膚を縫合する糸があるはずの位置に、小さな丸いあざが確かにいくつかついていたため、手術の痕に似ているという印象をますます深めたのである。
コーリスが一歳一ヵ月になったばかりの頃、母親が名前を復唱させようとしたところ、コーリスは腹立たしげに、「ぼくが誰か知ってるよね。カーコディだよ」と言った。これは、ヴィクター・ヴィンセントの部族名であった。』

催眠実験による遡行

 スティーブンソンは膨大な生まれ変わり事例を調査する中で、催眠実験も行った。そして、催眠によって前世らしき時代にまで遡る催眠実験の結果について、以下のように述べている。

『私が調査した二例では、催眠状態で年齢遡行した被術者が、通常の方法では習ったことのない外国語を話す能力をもっていることが明らかになっている。この能力は、真性異言と呼ばれる。このふたりは、それぞれ外国語で会話することができた。つまり、 同じ言葉を話す者と意味の通ずる会話ができたのである。』

 習ったことがない外国語を話す人間がいたという、驚くべき実験結果である。

意識の死後生存と科学

 以上のような生まれ変わりという現象を西洋科学では認めようとしないが、確かに存在する現象である。そして、前世の記憶を持って生まれ変わるということは、意識や心、魂と呼ばれるものが肉体の死後も生存しているということになる。しかしながら、数百年にわたって西洋科学の根底にあった思想は唯物論であり、心と呼ばれるものは脳の活動の1つの表れ以上のものではないと考えてきた。唯物論とは、物質が宇宙の根源となる実在であり、精神活動は物質に基礎をおくとする主張であり、物理的一元論とも呼ばれる。唯物論によれば、心の動きは、化学反応でしかないことになるが、果たして本当であろうか。
 答えは否であろう。まず、現在の西洋科学では意識を説明できない。スティーブンソンは著書で唯物論の問題点をいくつも指摘しているが、例えば、そのうちの一つは、現在の西洋科学の知識では、人間の心の中に抱くイメージを説明できないことである。私達は心の中に丸いものをイメージできるが、脳内のニューロンをどう組み合わせても丸い形にならないという。人間の五感による知覚内容と脳内のニューロンの空間的配列は同型ではないのである。
 脳は心の働きに何らかの作用をしているのは確かだろうが、脳の物質的機能だけで心を説明することは不可能であろう。上述したような生まれ変わり事例は、肉体の死後に意識と呼ばれるようなものが、生存していることを示している。そのため、心的事象は物質的空間とは別の空間で発生していると考えるのが論理的である。前世の記憶を語ったり、習ったことがない言語を話したりする人間が実際に存在していのであるから、唯物論という億説が間違っているのは確実なのである。
 以前のコラムなどで、説明したが、最新の量子力学から考えて、物質など実際には存在しないことが判明したと言ってよいだろう。その意味で数百年、続いてきた唯物論的な西洋科学の時空の概念は崩壊しているのである。一元論と対極にある二元論とは、心と脳は生存中、相互に作用するが、別のものだとする考えであるが、今後は、今までの西洋科学の偏屈で誤った営みが修正され、二元論が優位を取り戻していくのではないだろうか。
次回のコラムに続く

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