『できる』から『やればできる』へ 〜子どもの学習意欲を支える2つの自信〜
「できた!」という喜びは、子どもの学習意欲を高める大きな原動力です。しかし、単に「できた」という経験を積み重ねるだけでは、持続的な学習意欲は育ちにくいことが、研究でわかってきました。
実は、子どもの学習意欲を支える自信には、2つの種類があるのです。
1. 2つの自信の違いを知る
「できる」という自信(有能感)
これは、自己決定理論で言う基本的心理欲求の1つです。
「私は算数ができる」
「漢字を覚えるのが得意」
「理科の実験が上手」
このような、現在の自分の能力に対する確信を「有能感」と呼びます。
「やればできる」という自信(自己効力感)
心理学者バンデューラが提唱したこの概念は、より具体的な課題に対する自信を指します。
「この問題は、時間をかければ解ける」
「工夫すれば、もっと良い方法が見つかるはず」
「頑張れば、必ず上手くなる」
2. なぜ2つの自信が大切なのか
有能感は、子どもの全般的な心理的健康と幸福感に影響を与えます。一方、自己効力感は、具体的な課題への取り組み方に直接影響します。
両方が高まることで:
新しい課題にも積極的に挑戦できる
困難に出会っても粘り強く取り組める
失敗を学びの機会として捉えられる
と言うことにつながっていきます。
3. 2つの自信を育む関わり方
①まずは「できる」体験から
×「これくらいできて当たり前」
○「ここまでできるようになったね!」
②具体的な成長を示す
×「よくがんばったね」
○「前回は3問だったけど、今回は5問解けたね」
③方法の有効性を確認
×「やればできるでしょう」
○「この勉強方法、効果があったみたいだね」
4. 明日から始める3つのポイント
はい、箇条書きを文章に変更して、より読みやすく具体的に書き直してみましょう。
4. 明日から始める3つのポイント
1. 適切な難易度の課題を選ぶ
子どもが「やればできる」と感じられる課題選びが重要です。今の実力よりもほんの少し難しい、背伸びをすれば手が届く程度の課題が理想的です。たとえば、計算ドリルなら「いつもより1問難しい問題に挑戦」、読書なら「普段より10ページ多く読んでみる」といった具合です。一度にたくさんの課題を与えるのではなく、小さな目標を一つずつクリアしていく方法が、子どもの自信につながります。
2. 成功の要因を具体化する
「よくできたね」で終わらせるのではなく、なぜ成功できたのかを子どもと一緒に振り返ってみましょう。「毎日10分の復習が効果的だったね」「問題文を声に出して読む工夫が良かったね」など、具体的な方法に注目します。時間の使い方や工夫した点を言葉にすることで、子どもは「自分のどんな努力が実を結んだのか」を理解できます。この理解が次の学習への自信となります。
3. 次の課題への見通しを立てる
成功体験は、次の学習への大切な道しるべとなります。「漢字の書き取りで効果があった方法だから、英単語の勉強でも使ってみよう」「数学の文章題で図を描く方法が役立ったから、理科の問題でも試してみよう」というように、学んだ方法を他の場面でも活用できることを伝えます。そして、次はいつ、どんな順序で取り組むのか、具体的な計画を子どもと一緒に立ててみましょう。
【まとめ】
子どもの学習意欲を育むには、「できる」という有能感と、「やればできる」という自己効力感の両方を育てることが大切です。今回の内容のように、適切な課題選び、成功要因の理解、そして次への展望を持つことで、子どもは自信を持って学習に取り組めるようになります。大切なのは、これらのプロセスを子どもと一緒に考え、進めていくことです。一時的な達成感で終わらせるのではなく、その経験を次の学びにつなげていく。そんな関わり方を意識することで、子どもの持続的な学習意欲は育っていきます。