ワークショップのファシリテーションは難しい?【論文備忘録】
こんばんは、"もっちゃん”です。
先日ファシリテーションの本のキロクを上げましたが、今回はそれに伴いファシリテーション関連の論文です。
最近、あらゆるところで話題の安斎勇樹氏筆頭著者の論文になります。
なお、【論文備忘録】では、ある程度ネット上でも閲覧できる、pdfでダウンロードもできる、公開された論文を取り上げていきます。
⓪今回取り上げる論文:安斎勇樹・青木翔子(2018). ワークショップ実践者のファシリテーションにおける困難さの認識. 日本教育工学会論文誌 42(3). pp.231-242
ワークショップやファシリテーションにおいて長年研究をなさってきている方かと思います。株式会社ミミクリデザインというものを立ち上げ、研究も含めて多方面から多方面にアプローチしているようです。
①要旨
今回も抄録をそのまま転載させていただきます。
非常にわかりやすいシンプルな内容かと思います。特に補足することもありません。
②研究全体に対する個人的な感想
第一に、膨大なデータ量にビックリしました。
152名に対する質問紙調査と16名を対象としたインタビュー調査て。
研究の規模の大きさ、プロジェクト自体の規模の大きさ、著者のみなさまのこれまでの蓄積に感服させられます。
本研究において質問紙の扱いはそこまで大きな比重のあるものではないかもしれませんが、
インタビューデータなんかは膨大なものになると思います。それを分析していこうという熱意が感じられました。
この研究からハウツー本の出版等、非常に今後に繋がりそうな感じがします。
あるいは、そこまで見据えて研究が進められているようにも思い、実用性をとても感じました。
③研究結果について
研究結果としては、ワークショップのファシリテーションにおける困難さは、
(1)動機付け・場の空気作り
(2)適切な説明・教示
(3)コミュニケーションの支援
(4)参加者の状態把握
(5)不測の事態への対応
(6)プログラムの調整
に類型化できる、ということでした。
上記の(1)〜(6)を見ていると、ワークショップの手順、ワークショップのファシリテーションそのもののように思います。
研究的には、これらに対する困難さがインタビューデータからボトムアップ式にまとめられた、ということのようです。
それを踏まえて考えると、言い換えれば、
ファシリテーションを実践する方々でも、それぞれのフェーズ((1)〜(6)の段階)において、実践者によって差異はあれどなんらかの困難さを抱えている
ということでしょうか。
非常にわかりやすい類型化であり、個人的には少しずつ記述されている類型化以前のカテゴリもとても参考になりました。
インタビューデータの生々しさも良いものです。
④領域固有の困難さについて
以前ファシリテーションの本の【読書のキロク】でも書いたことですが、
ワークショップの「領域」や「目的」等によって固有の困難さもあるようです。
自分としてはやはり「学校教育」という領域に目が行きますが、うんうんと頷きながら読んでしまいました。
逆に「まちづくり」の領域などに関しては、その困難さにいまいちピンとこないところもあります。
本研究はたくさんのデータを総括して考えている一方、実践者の立場として考えていくと、より領域を限定し、深掘りした記述というものが、今後より必要になってくるのかもしれないと思いながら読みました。
⑤ワークショップ熟達者の研究
本研究にも記されていますが、個人的には「熟達者の暗黙知」と呼ばれる部分が非常に気になります。
初学者と熟達者では困難さを抱くところが違う
ということですが、
熟達者が抱く困難さは、初学者が抱く困難さの先にあるものなのか
ということが気になります。
熟達者の困難さを深掘りしていくというよりは、熟達者の振る舞いを研究していく、ファシリテーションに至る認知過程を明らかにしていく、
そのことが疑問の解決にもつながるように思いました。
⑥おわりに
非常に興味深い研究だったので、思ったことをとりあえずつらつらと書いてしまいました。内容等に誤解がありましたら大変申し訳ありません。
自分もワークショップについて修士論文で扱ったこともあり、夢中になって読んでしまった論文でした。
研究からほぼほぼ10年間、情報もアップデートしないまま過ごしてしまったので、少し自戒もこめて論文を読んでみた次第です。
また別の論文にも目を通していきたいと思いました。
自己紹介はこちらから。