【詩】統制と官能の殉教者たち

官能と統制の殉教者たち

壁際に立って
撃ち殺されるのを待って

測り売りの友の輪に
暦通りに巡る恋人
抗鬱代わりの官能

換金された忠誠と新鮮な卵
精神を喪えば何もかもが容易い

深緑の瞬きに触れることを忘れた
亡霊の睦言は生き難く
安全な檻の中にこそ響く


惰弱さをそしられる日をおそれ
ひたすらに歩を進めれば

毛羽立った感情が充満し皮膚を撫で
苛立ちを泡立ててゆく

得体なく、正体をもなくした
爛れた悲しみは肌を焼く

囚人用の覆面をして目を塞ごう
通り越した雨の中で息もつけぬよう

看守の顔をして通りに立とう
ゆくあても無いものを囲い収める体で
くだらない権力を手に入れよう


凡ては寄る辺なき遊びで
やがて終わりを迎えては
壊したものの代償に慄くのだ


通り過ぎることも避けることも叶わぬ慟哭に
ただ身を任せる心細さ

這い上がりくるむずがりに似た熱に
足元は波打って揺れ、蒸気を孕んで

滲む弱さを嘲笑うこともなく
殊更に人目に晒すこともなく
ただ静かに受け止めるなら

官能と統制の殉教者たち
壁際に立って
撃ち殺されるのを待って


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