satorera

詩人、創作活動家。東北出身大阪暮らしのノンバイナリー。 noteにはジェンダーフリーな詩作を投稿しています。 イラストはInstagram(satorera.jp)、twitter(@satorera)に。

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詩人、創作活動家。東北出身大阪暮らしのノンバイナリー。 noteにはジェンダーフリーな詩作を投稿しています。 イラストはInstagram(satorera.jp)、twitter(@satorera)に。

最近の記事

無垢のいろ

薬缶の音はひっきりなしに 耳を苛立たせる 出立が近づいているせいだ 黒い厚底の靴に紐を通し 足を通し踏み鳴らし 目を閉じる 風が叩く 窓向こう 音無く降り落ちる無垢のいろ 熱く生臭くせりあがる息に 白い景色の中で脈打つ鼓動に おれはけして 無垢な存在などには成りえないと 蝮の裔に産まれ落ちた 子どもなのだと 涙で贖えるものは何もない 涙に代わるものが 何もないように 後いくつの欲望を揃えれば 人間らしい幸福を願えるだろうか 後いくつの欲望を叶えれば 引き攣る傷

    • 【詩】統制と官能の殉教者たち

      官能と統制の殉教者たち 壁際に立って 撃ち殺されるのを待って 測り売りの友の輪に 暦通りに巡る恋人 抗鬱代わりの官能 換金された忠誠と新鮮な卵 精神を喪えば何もかもが容易い 深緑の瞬きに触れることを忘れた 亡霊の睦言は生き難く 安全な檻の中にこそ響く 惰弱さをそしられる日をおそれ ひたすらに歩を進めれば 毛羽立った感情が充満し皮膚を撫で 苛立ちを泡立ててゆく 得体なく、正体をもなくした 爛れた悲しみは肌を焼く 囚人用の覆面をして目を塞ごう 通り越した雨の中で息

      • 【詩】夜は斯くも燃えあがる

        歌えよ歌え 夜は斯くも燃えあがる 弾道画き燃えあがる 歌えよ歌え 人は囀り鳥は黙した 泥で顔を塗り込めよ 吾は瓦礫の裔なるぞ 歌えよ歌え 破片滲んだ唇で 踏み揃えし長靴の底で 歌えよ歌え 咎人蹴りて堕ろさせよ 喉を涸らして犬の名を 叫べよ叫べ 袖を濡らしたお前の顔を 歌えよ歌え 涙とともに燃えあがる 骨身とともに燃えあがる 尽きぬ焔の影につつまれ 歌えよ歌え 果てること無き哀しみを

        • 【詩】沈黙より生まれ出づる

          皮膜の中で声を聴いた めいめいの、さまざまな おびただしい音とともに 腹から流れ込む、あまやかな血流や毒 脈うち、循環し、排泄し、変容する地上の種子 痛みの果てにしか生まれ得ぬ わたしはあなたの独り子だ 早ければ流れ落ち、遅ければ破裂する あなたに孤独を与え、慈悲に与する 安寧をくくりつけ左右に揺れる椅子、 自負を纏った声は頭蓋に良く響く やり切れなさを煙に巻くための中傷は 食卓を、机上を、働く人の手をつたい 滑らかに思考を奪い覆ってゆく 沈黙を湛えたあなたの眼差し

          【詩】ぼくの名を呼んで

          ぼくは無力だった。 けども無力な存在以外に、 誰が告発に真の意味と 価値を与えられるだろう。 ぼくは非力だった。 でも生まれたときから、 ぼくは無限の可能性 そのものなんだ。 ぼくは奪われてしまった。 手や足を摘み取られるように。 不安や敵や貧しさも みんなぼくの友達だったんだ。 ぼくがいなくなって、 きみはもうぼくの名すら 呼べなくなってしまった。 だけど 密やかに隠れるように 口の中で唱えるように ぼくの名をつぶやく声がする。 ただ、心の中だけでもいい。

          【詩】ぼくの名を呼んで

          【詩】悪人の掌

          ぼくの胸に手を置いた あなたの手のひらから 悪人の匂い 堪え飽きた腹に 悪食の衝動 ぼくの皮膚を掻き混ぜた うつくしい夢想 奥歯に噛み砕かれ 切実さは夜を明かす あなたの口から零れた 苦悶や喘ぎが溶ける前に 舌の上に乗せるんだ 静かにあなたを掻き混ぜる 炭から噴き出す煙に炙られた あなたのうつくしい希みは 逃げ惑い 窓から落ちる人のようだ 鼓動を濡らし 敷布に染みを形取る あなたの指の爪の隙間に 深い色した飢餓が滲む 足の指の爪が白く色を失くし 分かち合った肉が口

          【詩】悪人の掌

          【詩】孵化

          殻の中で私は想う、 太陽はわたしの目を焼きはしないか 雨は私の羽をすっかり打ち流してしまわないかと。 見た事のない太陽も 濡れたことのない雨も 硬い膜の外から熱や音でもって その存在を知らせる。 痛みの中で産声をあげれば あらゆる事象がわたしを出迎える。 みずからの嘴で 私を呼ぶものの姿を確かめるために。 この薄ぼんやりとした部屋の中で、 死んでしまわぬために。 生え揃わず縮れた羽や 白くふやけた脚は空をきる。 耳の裏で鳴る鼓動の音に 意識がつぶれてゆきそうだ。

          【詩】孵化

          【詩】小さな祈り

          いまこの一歩を踏み出す勇気が 穏やかなほのおのごとく あかりとなって この胸に灯りますように 踏み出すことの喜びが こころを解放する熱となって  私のからだの中を 波紋のようにひろがってゆきますように 橙色や桃色の光の粒子のように ときにゆらめき、掠れ、くすぶるあかりであっても  わたしが何度も思い出せますように やわらかな想いは砂のように どこかへ散らばって行きそうで 両のてのひらで包んでいたけれど 気づけば雛鳥の羽は生え変わり つばさを不器用に羽ばたかせている

          【詩】小さな祈り

          【詩】空の台座に闇夜は眠る

          雨音は止み、 椅子を離れ窓を放つ 風満つ十六夜は紙の上に滴り、 細長く綴られ続けた寂寞は苦く熟れて その実を落とした あなたの頬骨のすぐ下を、指の背でくすぐれば 昏冥を抜ける光彩が眸の中に浮かんで跳ねる おおよそふたしかな語らいは 何を以っても覆し難く、 沈黙の底に生まれた魚のうろこは 白く奇怪に蠢きまわる あなたの肩に頭を埋めて目を閉じれば 綴じられた物語より深くわたしを慰め、 じりじりと親指の腹でなぞれば みだれちらばり、いりまじる 途切れた交感の狭間で思弁

          【詩】空の台座に闇夜は眠る

          【詩/散文】棺の沈黙

          土に納められる時を待つ棺の静寂、それを囲う人々に漂う動かぬ時間、腐りゆく体の放つ酸味がかった死の匂い、雨に濡れた雲間から刺す一筋の清冽な光、それらすべてがその人の瞳の中に鎮座し、音も無く暴かれるのを待っている。人の手で暴かれるのではない。鋭利で滑らかな言葉の刃で、自らの皮膚を、筋肉を、脂肪を割いて開腹し、膿を取り出し、それからまた言葉の糸を紡いで縫い留めるだろう。その様を人は物語と、もしくは幻視と呼ぶ。だが実のところ薄皮を剥がすだけのことなのだ。人の目に映る世界の皮膜に針を突

          【詩/散文】棺の沈黙

          【詩】ひとりうつむく

          幾千億もの頁がささやく 書庫の影で 煌々と照らされた壇上で 机上の掌の中で 正義の手本は此処に在りと あなたはひとりうつむく 言葉もなく トタン屋根から手を振ろう 立派な理論を着せられた 万能感の奴隷たちに 金脈の上に 奪う者と奪われる者の 腹の音が響き渡るから 破裂した胸を見つめながら 服を脱いで踊っていよう 煙幕に満ちた道端で わたしたちは頁を捲る 崩壊は音を立てるものと ほがらかな期待を乗せながら 航路に迷い 帆を下ろした神話は 太陽と月と呼ばれた星の 近く

          【詩】ひとりうつむく

          【歌詞】シュークリームは突然に(仮)

          【歌】 ああ僕のシュークリーム Why あんなに近くにいたのに Why さよならも言わずに消えた Oh 会えなくなって初めて分かった どれほど you're so sweet You're my sweet 【RAP】 You were the only one in コンビニ And you were the last one in コンビニ 俺が今夜、かっさらった 20円引きの眩しい君を 【歌】 ああ僕のシュークリーム Oh いたんだねバッグの中に Ah ごめんね疲

          【歌詞】シュークリームは突然に(仮)

          【詩】恒星

          わたしのからだの表象までも 光を湛えた命が燃えている 地殻の奥、紅く重く蠢く 言葉は生まれ 涙となって流れ 祈りと共に震える 苦しみは死よりおそろしく 闇よりいづる手は 深くわたしを抉った 言葉はかたちを忘れ 崩れて霧散し 塵と共に星雲を成した 揺らめいて放射する熱は 虹色の鉱石の欠片に宿り まばらな闇の密度を暴く 蒼い流星の群れを 引き留める術なく佇む わたしの命は瞬いている 白々と瞬いている

          【詩】恒星

          【詩】乱視

          右のくぼみに被害者の 左のくぼみに加害者の 目玉を嵌め込んで 辺りそこらを窺っている 両目を一度に開けられたなら この病いは癒えるだろうか あるいてもあるいても、 足は小さいままだ 足のうらを地面にこすりつける ちいさくちいさくあるいて いつまでも家につかないようにする やたら反射してあばれる ひざしになみだがでる 目をほそめるのにつかれて 下を向いてひかげをあるく うかれたみょうな声が うしろから足音といっしょに走ってく

          【詩】乱視

          【詩】美しい想い出

          君とのもっとも美しい想い出は 夕飯を共に食べていた あのひととき 君が僕に贈った いちばん素晴らしいもの 返事もできぬほど疲れ切った日 君が何も言わずに買ってきた あのひと切れのケーキ それ以上のなにも ありようがないから この想いと共に 静かに水底に沈んでいよう それ以上のなにも ありようがないから 手のひらにあふれる涙は 海に浮かべて溶かしてしまおう 言葉や慰めはいらないんだ 僕らが失ったものは 何処にもないって知ってるから いつか取り戻せるものなら

          【詩】美しい想い出

          プロフィール - 創作活動家という肩書きについて

          こんにちは、はじめましてsatoreraと申します。 姓名は、画像にある『佐藤麗良』という名で生まれて来ました。 創作で使っている『satorera』の「sato」は日本語の「里」、「rera」はアイヌ語で「風」という意味です。 子どもの頃からアイヌの系統を先祖に持っていると聞かされて育ったもので、創作の際にもそれを意識していたいと思い、このような名前にしています。早い話が混血なのです。 世の中の混血の皆さん、ルーツが複数あると多層的な自分を意識しますよね。そして自分

          プロフィール - 創作活動家という肩書きについて